見出し画像

各国紹介(ヨーロッパ) ギリシャ

地理に関心がある皆さんへ。各国地誌を見ると、地理の要素や要因、系統地理を理解する助けになります。
地理の学びは物事を見る解像度を引き上げてくれます。

本日の一国は「ギリシャ」
バルカン半島の南端に位置し、ヨーロッパとアジア、アフリカの結節点。エーゲ海にも3,000に及ぶ島々を領有。地理学発祥の地とも言われています。
では、参りましょう。

ギリシャの位置
ギリシャ国旗

ギリシャ共和国はバルカン半島の南端にあり、ヨーロッパとアジア、アフリカの結節点に位置しています。
エーゲ海やイオニア海など、地中海を構成する島々も領域としており、領有する島の数は3000に達します。
国土面積はおよそ13.2万㎢、人口は1000万人ほど。
海岸線が長大で、13000kmに達し、世界でも10指に迫ります。

国名については、まずは最も一般的な呼び名である「Greece」について。
この名は南イタリアに定住した古代ギリシャの部族、グラエキ族の名に由来すると考えられています。
彼らが定住した町は「グラキア(Graecia)」と呼ばれるようになり、彼らの出身地もまとめて同じ名でよばれるようになったようです。
Greeceは、このラテン語のGraciaが転訛したものと言われています。
さらに日本の「ギリシャ」は、ポルトガル語読み「Grécia」に由来。明治期以前は「ゲレシヤ」、明治期に「ギリシヤ」に変化したと言われています。

ちなみにギリシャの正式国名は「Hellenic Republic」で、「ヘレン(伝説のギリシャの英雄)の子孫たちの国」です。

ギリシャはバルカン半島の南端、及びペロポネソス半島と多くの島々で構成され、国土の8割が山地です。

地形図

ペロポネソス半島は一見島のようですが、コリント地峡により本土とつながっています。
半島部には、「ギリシャの背骨」と称されるピンドス山脈が南北に走り、北東部のブルガリア国境ではロドピ山脈が自然国境となっています。

ピンドス山脈
ロドピ山脈

また、最高峰はピンドス山脈ではなく、火山を起源とするオリンポス山(2,917m)。
ギリシャ神話における神々の本拠地ともされる神聖な山です。
オリンポス山は富士山のような単独の峰を持つ山ではなく、いくつもの峰と峡谷が組み合わさった地形をしています。

オリンポス山

この形状が、数多の"「オリンポスの神々」を生み出す素地になったと思われます。

オリンポスの神々

つまりギリシャの本土は、ピンドス、ロドピの両山脈と、独立したオリンポス山を中心とする山岳地帯、そしてそれらの間に点在する盆地でおよそ構成されていると言えます。
また、国土の2割ほどを占める島嶼部は、先述のピンドス山脈がエーゲ海に達して多島海を形成したものです。
その南端が、ヨーロッパでも最古の文明の一つ、ミノア文明発祥の地としても名高いクレタ島になります。

クレタ島(着色部)

ちなみにクレタ島は、現在のリビア付近から伝播したオリーブが栽培化された場所とも言われています。

ギリシャの気候は圧倒的に地中海性気候が優勢です。

ギリシャの気候区分

北大西洋海流などの影響により、北緯35~42度という緯度の割には温暖。
また、夏季にはサハラ砂漠と同じ亜熱帯高圧帯の影響下に入るため、高温で乾燥、冬は亜寒帯低圧帯の影響により降水が多くなります。

しかし一方で、南北に大山脈が走っていることなどから、地域で見るとやはり差異があります。
ピンドス山脈の西側は比較的湿潤、一方で東側は山地風下にあたるため、特に夏はより乾燥が強くなりがちです。
ピンドス山脈の東側にあるアテネの1月平均気温は10.3℃、7月は28.7℃""年降水量は380㎜ほどで、やや乾燥が強くなっています。
また、北部などに一部、温暖湿潤気候(Cfa)が見られるのは、気温の年較差の大きさが主因。一方、「冬季にやや降水が多い」という特性はそのままです。

経済は観光業、海運業などの第三次産業が主体。第三次産業に従事する人口は7割を超えています。
一方で農業も盛んでオリーブ、綿花生産が世界でもトップ10に入ります。
また意外な所では低品位の石炭(亜炭や褐炭)の産出では世界トップ10に入っており、人口が1,000万人と少ないことを考えると、国民一人当たりGNIは比較的良さそうな環境です。
実際、国民一人当たりGNIは18000ドルほど。バルカン諸国やトルコなどの周辺国に比べて豊かな方です。
輸出品目で面白いのが、5%ほどではありますが「アルミニウム」が入っている事。
これは、ギリシャにはボーキサイト鉱山があり、石炭(他にわずかに石油と天然ガス)を産すること、発電は火力(7割)主体であることから、電気代は比較的安く、精錬業が立地し得ると考えられます。
ちなみに日本の輸入品は半分がタバコ(葉タバコの生産もギリシャでは盛ん)です。

主な収入源は、観光業(温暖で風光明媚な土地柄と歴史的遺跡群)、

海運業(便宜置籍船国)、そして出稼ぎによる海外送金です。
また、ギリシャ移民は19世紀末から続々と海外へ渡航し、北米やオーストラリア、ドイツなどで暮らす人々が非常に多くなっています。

ギリシャ系移民

また、食品加工業なども盛んで、輸出の15%近くが食料品。
2010年から発生したギリシャ財政危機では、その農産物輸出が経済立て直しを下支えしています。また、財政危機により経済が失速したことにより失業率が増加、デモやストライキ、犯罪の増加が指摘されており、渡航の際には注意が必要です。

民族は9割がギリシャ人、また宗教も9割がギリシャ正教。公用語はギリシャ語です。

歴史的遺産も多く、観光で行くにも見所満載のギリシャ。
「白亜の街並み、太陽が降り注ぐ地中海の国」というイメージの強い人気の土地ですが、気候も、地域も多様性があることを予備知識として知っておけば、隅々まで回る際にまた色々な発見があるかもしれません。

今日はこれくらいで。

サポートは、資料収集や取材など、より良い記事を書くために大切に使わせていただきます。 また、スキやフォロー、コメントという形の応援もとても嬉しく、励みになります。ありがとうございます。