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南米、もう一つの大森林

本日は、南アメリカ大陸の環境問題に関するAP通信社の記事。

南アメリカ大陸といえば、アマゾン川流域に広がる巨大な熱帯雨林(セルバ)が有名です。
2019年現在で340万㎢の面積を誇りますが、実は1970年の400万㎢と比較しておよそ17%も減少しています。
セルバの森林破壊に関するニュースは度々目にしますね。

しかし今回は、セルバではなくもう一つの熱帯雨林、「グランチャコ」についてです。

グランチャコとは

南アメリカ大陸の熱帯雨林や熱帯草原、温帯草原の分布はこんな感じ。

リャノ
オリノコ川流域の熱帯草原。
サバナ気候(Aw)

Wikipediaより

セルバ
アマゾン川流域の熱帯雨林。
熱帯雨林気候(Af)

Wikipediaより

カンポ
ブラジル高原に広がるサバナ。
サバナ気候(Aw)

Wikipediaより

パンパ
主にラプラタ川流域に広がる温帯草原。
沿岸部は温暖湿潤気候(Cfa)、内陸はステップ気候(BS)

Wikipediaより

そして今回の本題、グランチャコ
パラグアイ川とアンデス山脈に挟まれたサバナ。
気候は温帯冬季少雨気候(Cw)からステップ気候(BS)。
国としては主にアルゼンチンに位置します。

パラグアイ川はこのような流域なので、

Wikipediaより

グランチャコはだいぶ内陸に位置します。
総面積は65万㎢。セルバに比べると小さいですが、それでも日本の総面積の2倍近い面積を誇ります。

記事によれば、平均で年に400~600㎢ほど伐採が進んでいるのですが、つまり1年に1%近いペースで減少していることになります。

この地域の樹木で有名なのが、ケブラチョ

Wikipediaより

スペイン語で「斧を壊す者」を意味する「quiebrahacha」に由来するとされ、非常に硬い木を意味する一般呼称でもあります。

革のなめしに不可欠なタンニンが採れ、水に沈むほど重い木であることから、用材(鉄道の枕木)としてイギリスに輸出されていた歴史も。

また、記事中にあるイナゴマメの木

Wikipediaより

は、地中海原産の常緑樹で、果肉を食用や甘味料に、種子などを家畜の飼料にするなど、古代の地中海において重要な植物でした。
また、種子は0.2gほどで均一であるため、重さの単位(カラット)のの語源になったとも言われています。

森林破壊の要因

記事によれば、この場所で伐採が進んでいるのは、この土地で大豆栽培の農場が拡大しているからとのこと。
元々、この地は綿花栽培が盛んな地域があるくらいで目立った農業は行われておらず、粗放的な牧畜が行われていました。

しかし近年、アルゼンチンでは海外での需要が旺盛な大豆生産に力を入れており、2019年現在ではアルゼンチンの大豆生産はブラジル、アメリカに次ぐ世界3位。
シェアとしては16%ほどです。

大豆は採油、食糧、家畜の飼料など用途が広く、主要な作物の中では三大古穀物を除けば、馬鈴薯(じゃがいも)に匹敵する生産量(およそ3.3億トン)を誇ります。

アルゼンチンではこの生産を増大させることを目指しており、それがグランチャコの森林破壊につながっている、ということですね。

グランチャコの森林が失われるペースの年1%は、セルバの破壊を上回ります。
この大森林地帯が今後どうなるのか、森林破壊の一例として、今後とも要注目です。

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