【読書感想】一兆ドルコーチ シリコンバレーのレジェンド ビル・キャンベルの成功の教え

1兆ドルコーチ シリコンバレーのレジェンド ビル・キャンベルの成功の教え


アメフトのコーチ出身でありながら、優秀なプロ経営者。ジョブズの師であると同時に、グーグル創業者たちをゼロから育て上げたコーチ。アマゾンのベゾスを救い、ツイッター、ユーチューブCEOらを鍛え、たった1人で、シリコンバレー中の企業に空前の成功をもたらした伝説のリーダー、ビル・キャンベル。これまで謎に包まれてきたその驚くべき教えのすべてがいま、初めて明らかに―。
「BOOK」データベースより

この本の概要

Google、Apple、Amazonなど、今、世界を牽引している企業の経営者たちを支えた伝説のコーチ、ビル・キャンベルの教えを書いた本です。
著者は、元GoogleのCEO・エリックシュミットら経営陣3人。
ビルは2016年に癌で亡くなっているんですが、表舞台に立つことを嫌ったビルのコーチングマインドを後世に残すために作ったコーチングバイブルであり、伝記です。


私も今コーチの勉強を少しずつしているので、参考になるかな?と思って読んでみましたが、正直、格が違いすぎましたな…。
具体的なコーチスキルみたいなことは、特に書いてないし、ビルだからこそのやり方だな、っていうところが多すぎた。
口汚く罵ってもみんな愛を感じてるとか、出会い頭で悪態ついてもヤな感じしないとか、みんなにすぐハグするとか、もうこの人固有のキャラじゃないか(笑)
途中からは「これは伝記だね」と思って読んでました。

ただ、じゃあ役に立たなかったかというとそんなことはもちろんなく。

コーチングってノウハウはもちろんあるけれども、コーチ自身の人柄や強みも全部込みで、自分なりのやり方を作っていくものなので(と、教わった)、これがビルって人のやり方だったんだな、というのは参考になりました。
コーチとしてももちろんものすごくたくさん対話してたんだろうけど、割と自分の主張を言ってるようなエピソードもあるので、ベーシックなコーチングの型を超えた世界ではこういうやり方もありなんだろうなぁって感じ。

ベースとなるところは、私が学んだものと共通なので、根底で必要となるのがなにかってのは、より深く刻み込むことはできた感じはします。

根底で必要となるところってなにかって?

究極のところ、大切なのは、
「関わる人への深い愛」
ってことなんだと思います。

カイシャや組織など、無機質っぽいところに「愛」を持ち込んでもいいんだよ、「愛」こそ大事よっていうところを私はビルからのメッセージとして受け取りました。

世の中には、Google関連の本が溢れているので、「またGoogleかよ。なんでもかんでもGoogleってだけでありがたがりやがって…」
みたいに、穿った見方をする人もいるのかもしれません。

でもさ、Googleが「効率化」とか語ってたら当たり前すぎて「ケッ」てなるけど、これ、「愛」だもんね。それ以外にも「心理的安全性」とか「HRT」(謙虚・尊敬・信頼)とか。
Google本で言ってるのって割と人間味のほうの部分もあるんですよね。

テックでロジックだらけな大企業が色々やったり調べたりした結果、
「あ、結局大事なのってこういうのだね」
って出てきたのが、めちゃくちゃ人間的な要素ってのがおもしろいじゃない?
そりゃ注目されるし、話題になると思うのですよ。
で、それが話題になるのは、そこに共感や気付きや学びがあるからだし、我々は本質的にそういう価値観を求めてるってことでもあるんじゃないかな、と思います。


具体的にどんな教えか

とはいえ、「愛」だけだと私も読んだことをだいぶ忘れちゃうので、一応、ポイントだけは書いておきます。
(Amazonの概要を部分的にコピーしただけですが…)

マネジャーは肩書きがつくる。リーダーは人がつくる――「人がすべて」という原則
・「第一原理」で人を導く
・プロダクトがすべてに優先する
・異端を受け入れよ
■「信頼」の非凡な影響力――「心理的安全性」が潜在能力を引き出す
・信頼は「きれいごと」ではない
・「完全な率直さ」を身につける
・「勇気」の伝道師になる
■チーム・ファースト――チームを最適化すれば問題は解決する
・「正しいプレーヤー」を見つけよ
・「最大の問題」に切り込む
・正しく勝利する
■パワー・オブ・ラブ――ビジネスに愛を持ち込め
・「やさしい組織」になる
・つねにコミュニティに取り組む
・創業者を愛せ
■ものさし――成功を測る尺度は何か?
・ビジネスを成功させるカギ
・リーダーは「行動」でその座を勝ち取る
・「人間的な価値」が成功につながる

要点だけだと「なんのこっちゃ」なところもあると思いますが、ひとつひとつのポイントについて、エピソードをもとに説明があります。
より詳しく知りたい方はぜひ読んでみてください。

いっぱいポイント書いてるんですけど、やっぱ、コーチとしての心のあり方のベースに「愛」があることが全てなんじゃないかな?と私は思います。

「関係の質」を考える

ビルと、この本の著者でもあるエリックは、ミーティングを旅の報告から始める、ということをしていたそうです。

だがエリックはふつうとはちがうことを一つやった。スタッフが部屋に入って腰を落ち着けると、まず一人ひとりに週末何をしたかを尋ね、旅行帰りの人がいれば簡単に旅の報告をしてもらったのだ。
(中略)
目的は二つ。一つは、チームメンバーが、家庭や仕事外の興味深い生活を持つ人間同士として、お互いを知り合えるようにすること。二つめは、全員が特定の職務の専門家や責任者としてだけでなく、一人のグーグラーや人間として、最初から楽しんでミーティングに参加できるようにすることだ。

会議や打ち合わせの場では、ムダなことは言わず効率よく論点だけ、という考え方が多いのかな、と思います。
でも、回り道かもしれないけど、仕事と関係ないムダ話のような話題から入ること、実はとても重要なんじゃないかな、と私は思います。

チームの話をするとき、よく語られるのが、ダニエルキムの「成功循環モデル」です。

なにそれ?って方はコチラとかご覧ください。

ざっくり説明すると、組織で結果を出そうとするとき、成果を急いで目先の数字(「結果の質」)をなんとかしようとしてしまいがちですが、それだとうまくいかないので、遠回りだけど「関係の質」から改善していきましょうね、ってことです。

で、ビルとエリックはこれを大事にしてたんですね。

ホントにさ、大事だと思いますよ、こういう取り組み。

多様な働き方をする人が増えると、一緒にいられる時間も、同じ場所に集えることも、飲みにいったりすることもなかなかできません。
そうすると、同じチームの人たちとでも、業務以外の話をする時間ってホントにないんですよね。
一年一緒に働いても、名前と業務内容しかわからないなんてこともたぶんたくさんあると思います。

それだと、チームとして見たとき、足し算にはなるものの、掛け算にはならないと思うんです。
で、足し算だけだと、チームとしてケミストリーを作っていくことはなかなか難しいんじゃないかな、と私は思います。(バスケの世界の人はよくこの表現使うよねwww)
他の人は知らんけど、足し算だけの関係性で、心踊るような絶妙なチームワークを感じたこと、すくなくとも私はないです。

じゃあ「関係の質」を良くするってどうしたらいいのか?

これは、私の個人的な考えですが、単純に、まずはたくさん会話することなんじゃないかな、と思います。
あと、もうひとつ。お互いに弱みや苦手なことを話す。

この本でも書いてましたが、「信頼」ってお互いに弱みも見せられるような関係なんだそうです。
だから「弱み」「苦手」の開示はひとつのポイントなのかなぁ。

旅行の話とか週末なにしたか何か苦手かとか、そういうのって「ムダ話」「仕事してない」として排除されがちだし、実際、忙しいとそういう時間にイライラしたりしてしまうこともあるんだと思うんです。

でもさ、実はそこで見直すのは「ムダ話」とか「ざつだん」のほうじゃじゃなくて、イライラするほどきゅうきゅうになってるタスクの方なのかもしれないな、と読んでて思いました。
「ざつだん」とか「ムダ話」は実はデフォルトで業務に組み込むもので、はみ出たときに考えるべきは、「タスク」のほうかもしれない…。
それで削ったり見直したりできること、今の日本の働き方にはものすごくたくさんあると思います。


ミヒャエルエンデの「モモ」のお話のなかでも、時間泥棒に時間を盗まれた大人がキリキリになって、生きる楽しさを忘れちゃった感じになってましたけど、今の我らってまさにそうなってるよな、と思うんです。

世の中の常識にとらわれた脳で考えると、職場で歌ったり、騒いだりなんてキチガイなのかもしれない。(度がすぎるとホントに迷惑だし。)
でも、なんでもいいんだけど、みんなの少しのクレイジーを許容しあって楽しみながら仕事するほうが、関係の質は上がるし、パフォーマンスもあがるかもしれない…。

想像してみてください。
隣の席の真面目なあの人が15時に突然立ち上がって歌いだして、そしたら課長がそれに合わせてハモリだして、どんどん歌う人が増えだして、サビに入る頃には職場が「ミージックマン」のステージみたいになってる状態を!

で、終わったらまた仕事に戻る。

なんかノリでそういうことができるくらいの寛容さが職場にあれば、楽しく仕事できる人も笑う人も増えそうだなって私は思います。
(「ヤダ、そんな歌う職場…」って人もめっちゃいるだろうけど、例えです、例え。)


ビルがコーチする上で相手に求めたこと

ビルは誰にでも深い愛を注いでコーチしたか、というとそうではなくて、人はちゃんと選んでいました。

それはどういう人かというとコーチングを受けるマインドを持っている人です。
具体的には以下。

ビルが求めたコーチャブルな資質とは、「正直さ」と「謙虚さ」、「あきらめず努力を厭わない姿勢」、「つねに学ぼうとする意欲」である。

コーチングをしていくとき、たぶん受け身100%な人にコーチができることってあまり無いのかな、と思うので、コーチ側でも、気持ちの上でこういう線引きをしておくのは必要なのかもな、思いました。
もちろん、全面的に表には出さないにしても、コーチャブルじゃない人にコーチし続けて、うまくできなくて悩んだり自信を無くしたりしてしまうっていう自分が想像できたので、こういう点を知っておけたのも良かった。

なんだかんだ、そこそこ長くなっちゃった!!

別にコーチじゃなくても、リーダーとかマネージャーは読んでみるといんじゃないかな、と思いました。



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