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【読書感想】「自閉症の僕が跳びはねる理由」 東田直樹

読了日:2017/5/26

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僕は跳びはねている時、気持ちは空に向かっています。空に吸い込まれてしまいたい思いが、僕の心を揺さぶるのです—。人との会話が困難で、気持ちを伝えることができない自閉症者の心の声を、著者が13歳の時に記した本書。障害を個性に変えて生きる純粋でひたむきな言葉は、当事者や家族だけでなく、海をも越えて人々に希望と感動をもたらした。世界的ベストセラーとなった話題作、待望の文庫化!
「BOOK」データベースより

この本の概要

本屋で見つけて衝動買い。
友達がずっと小学校の特別支援教室の講師をしてるので、自閉症についてもある程度の知識はあるのですが、そんな知識を越えて、この本は驚きの連続でした。

作者の東田直樹さんは、重度の自閉症。
人と会話でコミュニケーションとることができません。
ですが、親御さんや精神科の先生の根気強い指導により、文字によるコミュニケーションができるようになりました。

この本は、その彼が13歳の時に書いたもの。
自閉症の人たちに対するさまざまな疑問に、彼自らが答えています。
時々ちょっとしたコラムのようなものもあります。
短編小説あります。
いずれも、高いクオリティ。大人の健常者でも書けないと思います。

自閉症の人が、自分たちの行動や思いについて発信することは本当にまれで、加えて13歳という発展途上な年齢でこういう手記が書けるということは、世界的にみてもホントにないことなんだそうです。
その希少性もあり、この本は世界中の言語に翻訳され、大ヒットしています。翻訳言語も30言語を越え、村上春樹に次ぐ勢いだとか。 

あるがままを受け止めることの重要性

この本は、本当におすすめです。
自閉症の子が近くにいる人はもちろん、自閉症児が近くにいなくても読んでほしい。
育児中の人にも読んでほしい。
学校の教材にも向いていると思う。

いわゆる健常者の我々からは、
自閉症の人たちが何を考えているか、何にも考えていないのか、それすらわかりません。
何故、ときどき叫んでいるのかもわかりません。
私たちには本当にわからないことばかり。

もし自分の子供が自閉症だったら、やっぱりどんなにポジティブでいようと思っても深く悩むでしょう。
どうしたらいいのかわからず落ち込むこともたくさんあると思うんです。

でも、この本は、そういう自閉症児のそばにいる人たちにも、救いになる本だと思いました。
自閉症の人にもいろんな人がいるので、彼の手記に書かれている彼の気持ちがすべての自閉症の人に当てはまるわけではありません。
それでも、心のなかが全く見えない彼らのなかに、こんなにも深い世界がちゃんとあって、こんなにも私たちとおんなじだったのか!と知ることができるのは、とても嬉しいものだと思うのです。

英訳した方があとがきにも書いてました。
「自閉症児の親にとってこの本は希望だ」と。
(英訳した方も、息子が自閉症児だそうです)

私自身、自閉症など精神的な部分でハンディを持つ人に偏見はないつもりです。
それでも、一緒に生活する機会は少ないので、正直なところ、実際にどうやって接するのがいいのかはわかりません。どういう対応が正解なのかわからないので、戸惑ってしまうこともあります。
これを読んだからといって、じゃあ明日からナチュラルに彼らと接することができるかと、それもできないと思います。

でも、それでも。

リアルに接するかどうかに関わらず、これは多くの人に読んでほしいと思いました。
これを読んで、
「いかに自分の見えてない世界が広いのか」
「いかに自分が自分の物差しで人のことをみてしまっているか」
を思い知った感じがします。

自閉症の彼が望むのは「あるがままを受け止めてほしい」ということ。
自閉症に限らず、大人の当たり前が通用しない子供たちを相手にしていても、「あるがままを受け止める」ってことがすごく大事だと感じます。
そして、自閉症児や子供だけじゃない。
大人同士だって、あるがままをまずは受け止める、というのがこれからの時代、求められてきます。

自分の中の常識や物差しを全部とっぱらって、コミュニケーションをするのは私たちにとってはすごく難しい。
どうしても型にはめて考えたくなるし、型から外れた行動をとられると困ってしまう。
でも、すごく難しいことだけど、自分の中の「あるがままを受け止める」スタンス、ちゃんと育てていきたいな。

本だけ読むと、全然自閉症っぽくないので、本だけ読んだ人のなかには
「こいつ、実は自閉症じゃないんじゃないか」 と思う人もいるみたいです。
そんな疑いを持ちそうな方は最初に映像を見てみるとよいかもしれません。
どうやらNHKで特集されたこともあるそうです。YouTubeにも動画がありました。

人間の奥深さや、健常者の傲慢さなど、考えさせられました。
本当にみんなに読んでほしい本です。

ワタクシ的名文

ひとりで文字盤を指せるようになるまで、何度も挫折を繰り返しました。それでも続けてこられたのは、人として生きていくためには、自分の意思を人に伝えることが何より大切だと思ったからです。
筆談とは書いて伝えることではなく、自分の本当の言葉を分かってもらうための手段なのです。
「筆談とは何ですか」より抜粋
僕が言いたいのは、難しい言葉をつかって話して欲しい、と言ってるわけではありません。年齢相応の態度で接してほしいのです。
赤ちゃん扱いされるたびに、みじめな気持ちになり、僕たちには永遠に未来は訪れないような気がします。
本当の優しさというのは、相手の自尊心を傷つけないことだと思うのです。
「小さい子に言うような言葉使いの方がわかりやすいですか?」より抜粋
自分の気持ちを相手に伝えられるということは、自分が人としてこの世界に存在していると自覚できることなのです。話せないということはどういうことなのかということを、自分に置き換えて考えてほしいのです。
「どうして上手く会話できないのですか?」より抜粋

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