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【読書感想】未だ行ならず 下 空也十番勝負(五) 佐伯泰英

この本の概要

眉月との再会、そして酒匂一派との最後の決戦へ! 

長崎の地で福岡藩黒田屋敷の剣道場に加わり、 稽古を繰り返す坂崎空也。 
そこに薩摩の眉月から、 江戸へ戻る途中に長崎に立ち寄るとの文が届く。 
心待ちにする空也だが、 一方で、酒匂兵衛入道の嫡男・太郎兵衛が 鹿児島の屋敷から姿を消し、
長崎に向かった可能性が浮上する。 
どこに逃げようと、酒匂一派から逃れることはできない。 
覚悟を決めた空也がひとり、向かうのは……。 
Amazon説明より

感想

物語が動いたねぇ。

武者修行の地、薩摩での出来事をきっかけに東郷示現流一派に狙われることになった空也くん。
今回は久しぶりに東郷示現流との尋常の勝負が繰り広げられます。

東郷示現流の後継者である太郎兵衛との勝負では、偉大な父親を持つが故の苦悩も互いに理解し合ったりもして、立場が違っていたらよい理解者になれただろうにな、とちょっと悲しくなりました。

空也くん以外にも、江戸の磐音家、薬丸新蔵にも動きがあるし、江戸の様子も開国は避けられない雰囲気になってきていて、時代の変わり目が近いな、と感じさせられる展開でした。

ワタクシ的名言

異国の帆船は、和国の千石戦の何倍も大きく、外海での航海もできた。だが、和国の千石戦は夜になれば風待湊に入り、帆を下さねばならなかった。その間に異国の帆船は、50里や100里先を帆走しているだろう。一時が万事、徳川幕府は、異国の列強国に大きな後れをとっていた。そんな最中、剣術修行を続ける意味があるのか。空也はそんな迷いを長崎に来て初めて覚えた。
p28 エリザ号入津

磐音も空也も、ひたすらに剣の道に進む人たちでしたが、この武者修行の旅で、異国の文化水準の高さも目の当たりにした空也は「剣に意味があるのか…」と迷い始めます。
これまでも、異国の文化をみてもやもやと気になっていた様子でしたが、長崎の地でより深く異国を知り、迷いも大きくなってきたようです。

これからどんどん時代は開国にむけて動いていくわけで、徳川家との関係も強い坂崎家はどうなっていくんでしょうね。気になります。
あとがきでは著者が、老いによる執筆のしんどさを書いてたりもするんですが、老いやコロナなんかに負けず、長くこのシリーズを続けてほしいな、と切に願います。

続きが気になるのでこのまま次の作品を読もう。

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