【読書感想】いじめを生む教室 荻上チキ

「いじめ問題」を解決するために必要な知識とは何か。連日のように悲惨なニュースが報じられ、そのたびに多くの議論が交わされるが、その中には具体的な根拠に欠ける当てずっぽうな「俗流いじめ論」も少なくないと著者はいう。一方で、メディアには取り上げられずとも、いじめが社会問題化して以来30年以上にわたり、日本でも世界でも数々の研究が行なわれ、多くの社会理論が磨かれてきた。本書では、そうした数多くの研究データを一挙に紹介しつつ、本当に有効ないじめ対策とは何かを議論する。いじめ議論を一歩先に進めるために、必読の一冊。
「BOOK」データベースより

この本の概要

kindleの積ん読をゼロクリアしたい衝動にかられているので、たまってる本を読んでいこうかと思っております。
その第一弾。

学校のいじめ問題について取り扱った本です。著者は、NPO法人ストップいじめ!ナビ代表理事の荻上チキさん。なんか名前だけは聞いたことある方だったけど、こういう活動をされてる方だとはしりませんでした。

この本ではいじめに関するさまざまなデータとともに、いじめ問題についてどうすればいいのか、著者の考えを示したものになります。

浸透しきってない法律

いじめのデータ、興味深いものが多かった。
でもこのデータ、現況の学校では活かしきれていないんだな、というのも多かったし、法律ができてもそれが現場に浸透していなくて、いじめの定義を自治体ごとにちょっとゆがんだ解釈にしてしまっていたりで、ざんねんになってるところもすごく多いということを知りました。(数年前の本なので今はどうなのかわかんない。もうちょっと浸透してると信じてる)
残念だ。本当に残念だ…。

国やお役所に限らず、制度や法律が生まれる当初はそこに「こうしたい!」「こうあるべきだ!」という魂があったはずなのに、上から下に情報が流れてくるにつれて、当初の制度設定の魂みたいなもんは抜けてってしまうのだろうな。(いじめ事件の過熱報道に対する場当たり的な制度作りをしてるんなら、最初から魂なんかないのかもしれないけど。)

法律文がもう…魂とかない感じだもん…。この本のなかにもいじめ法案の条文がいくつか書いてあったけど、興味持って読んでる私ですら「つまんねーな、条文は…」って思っちゃった。余計な解釈含まないようにこういう文章にしてるのはわかるけど、もちょっと魂込めようよ!!子どもの命なんだしさ~。本気で子どものいじめをどうにかしたいっていう気概を感じない。条文ももうちょっと臨機応変にエモみを出してほしいもんだ。

現場で思うように対策打てないのは、まあいろんな要因が絡んでるんでしょうけど、学校の先生の長時間労働ってのもあるのだそうです。なので単純に「学校や先生が悪い!」という問題でもないんだよ、と著者は言ってました。
ホントそうだよ。教員の知り合いたくさんいますけど、忙しそうだし、人手不足だし。こないだ私にも講師やらないかって友達から話が来たくらいだものw

学校も先生も、たぶん、先生たちは子どもの成長を促進したくて先生になったんだし、子どものことは真剣に考えてる人が大多数だと思うんですよ。それなのに、本来向かうべき相手に100%向かいきれない教員の多忙さが根本の問題なのだと思う。減らすべきは教員の余計なタスク。

これ、教員以外もだけどね。普通の会社員もいらないタスクが多いし。人間味をそこなったり、自分が機嫌よくいられなくなるタスク量ってのはもうキャパシティオーバーなんだと私は思うよ。

不機嫌な教室とごきげんな教室

学校ってのは、本当に不自由なところなんだなーとこの本を読んで改めて思いました。極端に色々な行動が制限されていて、トイレすら好きなときにいけないし、遊び道具も持っていけないし、友達を仲良くすることを強要される。制限が多い環境は大人も子どももストレスがたまるわけで、そこに担任が作る独自のルールなんかも加わる。家庭がのんびりリラックスできる場なら家でくつろいで英気を養うこともできるだろうけど、家の雰囲気も厳しかったら、もう逃げ場なんて本当にない。
そんなん、大人でもハードな環境だなーと思います。

そんなベースがハードな学校環境ですが、そんななかでも、いじめがおきやすい教室とおきにくい教室っていうのがあるそうです。いじめがおきやすい教室には、以下のような特徴があるとのこと。
・教師の指導が管理的・威圧的
・特定の子どものみが承認されている
・授業がわかりづらい
・授業に興味が持てない
・中傷や陰口が多い
・ルールや規範が確立されていない
・学級集団に親しみや帰属意識を感じられない
・毎日が単調で刺激が少ない

ま、だろうな、って感じ。

不機嫌な教室をごきげんな教室に変えるには、以下のような対策が重要だとのこと。
・わかりやすい授業をする
・多様性に配慮する
・自由度を尊重する
・自尊心を与えていく
・ルールを適切に共有していく
・教師がストレッサーにならず取り除く側になる
・信頼を得られるようにコミュニケーションをしっかりとる

これも、「ですよね」て感じ。
学校も、会社組織も一緒だなぁ…。でも学校も会社組織もこれをつくるのが難しいんでしょうね…。担任や組織のリーダーが忙しいと、イライラして不機嫌になって、その不機嫌がクラスや組織に伝播していく。
だからこそ、一人ひとりのごきげんが大事になってくるってわけです。

私なりのいじめ対策を考える

ここからは私なりのいじめ対策を思いつくままに書いてみます。今の状態からどう変えるかとかは考えてませんので、現実的ではないと思うけどひとまず。

・クラス単位の活動は減らす
クラスを残してもいいと思うけど、クラスで1日中一緒という状態はしんどいので、朝の会と帰りの会くらいでいい。

・授業は理解度別
学校の授業がいけてないのは色々な理解度の人を同じ教室にしているから。理解度の高い子には退屈だし、低い子にはつらい。基本的に教科単位で理解度別にしたらいい。そのほうが個人の満足度は上がるし教師も教えやすい。

・クラス担任も授業も複数教師で
教師が一人だと独裁的な指導が生まれやすいけど、複数いるとそれが起きにくい。(教師の関係性もあるのでゼロにはできないけど)。サポートできる大人を増やす(これは著者の方も言っていた)

・道徳はもう少し身のあることを
これはホント思うわ。自粛期間中に次男の道徳の課題を一緒にやったけど、正直、道徳の教科書の文章が好きじゃなくて気分悪いな、ってものが結構あった。
LGBTのことを扱うとか、それこそ人の強みのことを扱うとか、いじめが起きたときにどこに相談するかとか、そういうのを教えたほうがいんでないのかしらね?あと、道徳より心理学とかコミュニケーションを教えたほうが面白いし、役に立つと思うんだけど。

・教員の仕事を減らす
これは、自分が教員じゃないからどこを減らせばいいのかわからないけど、ひとまず部活動は減らした方がいいだろうな。(やりたい人はやればいいけど、やりたくないのに顧問にするのは論外)

あと授業も当たり前に「国語」「算数」「理科」「社会」とかだけど、内容はもうちょっと変えたり、教科も考え直したりしてほしいな、とは思う。「社会」とか「給与明細のみかた」とかをみっちり扱う方が超大事だと思う。(小学校ではないだろうけど)

学校関連の本は面白い。

積ん読解消月間は、感想を完結にしてインプット重視でいこうとおもっていたのに、結構つらつらと書いてしまった…。スマホだと文章作るのがおっくうで時間がかかるけど、PCだとサクサク打ててすごくいい。(今日はPCで作っている)

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