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フェイトゼロ(2011年:原作小説:虚淵玄)【アニメ感想は足りないまま生まれてくるのね。痛みが満たすものもあるのね】

「マルドゥックヴェロシティ」を紹介したときに、同じような続編にして前作の前日譚となっている類型として紹介しました。
なのでこちらも紹介してみます。
「フェイトゼロ」です。原作小説を書いたのは虚淵玄。それのアニメ化。

虚淵玄先生と言えば、まどか☆マギカの脚本を書いて、一世を風靡した人です。
それ以前から、すさまじいシナリオを描かれていたのですが、エロゲ業界だったので、光が当たる存在では(なんというか)ありませんでした。
それが一気にメジャーストリームに出てきたのが、まどまぎ。
その勢いのままで、次なる大作を作ったのがこれ。
もちろん全年齢版ですよ。

しかし物語としてはエグイ。CERO規制とかはあるのかも。
そこら辺のエグさも虚淵クオリティです。

今やガンダム以来の大ヒットシリーズになっている「フェイトステイナイト」シリーズ。
基本的なあらすじは、あらゆる願いを叶える聖杯というものを手に入れるために、公式ルールにのっとって、最後の一組になるまでバトルロワイヤルを行うというもの。その際にプレイヤーは英霊と呼ばれる戦士をひとりだけ召喚できる。
シリーズはこの基本コンセプトを繰り返すというスタイル。

その第1作の前日譚を扱った作品です。
最初の主人公、衛宮士郎の、ほとんどワンカットくらいしか出てこなかった義理の父。

衛宮切嗣の物語。

もちろん。父も戦っていたのです。
第1作「ステイナイト」では、何の説明もなく、なんとなくスゴイ父なんだな。くらいの扱いだったのですが。
そのすごさを実際に書いてみましたという。

何がすごいって、こいつ、狂ってやがる。
正義のヒーローなのに、情け容赦がなさすぎる。
甘さがまったくねえ。
現実で勝利することがいかに悲しく、ムゴいものかということを、百も承知でその役割を眉ひとつゆがめることなく、ためらいなくやってのける。
正義のヒーローというより、ヒットマンの姿だ。
ダークヒーローだ。
この男の行く先はいつも死体の山だ。
それでも平和と理想のためと信じて、手を汚し続ける。

そして「ステイナイト」でも出てきた謎の敵っぽいやつ。
言峰綺礼。
この男が本領を発揮するのも「ステイナイト」ではなく、むしろこちらの方だ。
彼はむしろ切嗣の宿敵だったのだ。
本質が邪悪でありながら、あえて光の道を生きようとはした。
したが、本質に逆らうがゆえに、そこには生きる喜びはなかった。
ついに天啓を得て、闇に堕した。
だがしかし、この生きる喜びを観よ。
しかもただ弱者を踏みにじるのとはわけが違う。
衛宮切嗣という最も恐ろしいダークヒーローと存在のすべてを賭して死闘するのだ。
これが生の喜びか。私だけが知らなかったレーゾンデートルか。

他にも個性が強すぎる登場人物が、次から次へと出てくる。

まだぽっと出の登場キャラのひとりだったころのギルガメッシュ。すでに圧倒的な強さを持ってはいますが。

アインツベルン勢からはアイリスフィールことアイリが切嗣の奥様として登場。切嗣陣営です。イリヤはふたりの娘です。士郎とイリヤはある意味ほんとうに兄妹だったのね。

水銀をあやつる高慢な魔術師ケイネス(ロードエルメロイ1世)
その妻はサーヴァントであるランサーと浮気しているというね。

そして後に高名にはなるものの、
まだ無名の心弱き青年ウェイバーと彼の成長譚。
そして偶然に彼が従えることになるサーバントの真名は「イスカンダル」アレクサンダーである。

「ステイナイト」ヒロインのひとり遠坂リンの父親、遠坂時臣。
娘とはまったく違う腹黒いキャラであり、そして・・・

間桐陣営からは、姪っ子の桜ちゃんを救うため、命を削って戦う雁夜おじちゃん。

変な連続殺人鬼。(おい)

姉妹作「月姫」に出てくる死徒(ヴァンパイア)もさりげなく登場。

これらが絡まりあう物語の結末。
しかも第1作のオープニングにつなげなければならない、という制約のもとで、それらの話に結末をつけて、かつ良好な読後感も提供しなくてはいけない。
創作技法の百鬼夜行じゃないのか?

***

そしてもうひとつ、忘れてはいけないのは、
第1作の前日譚であり、事実上シリーズで最も時系列で最初に来る作品であること。

今や膨大なシリーズと化した「フェイト」を順番に観ていくなど不可能に近い中で、予備知識として見ておかなければならない作品がひとつもない。
つまり「フェイトって結局どういう話よ?」という状態から観ても、何の違和感もなく作中に入り込める作品なのです。
これはいい。

マーベルとかガンダムとかでは、なんだかんだ不可能に近いからね。
(孤立した世界観のやつはともかく)
スタートレックとか絶対ムリ。
スターウォーズならカノン6作目までを観とけば、なんとかなるけど。
いずれも予備知識として観ておいた方がいい前作が多いこと。
(まあ、商業作品として前作を観なくても大丈夫なように作ってあるとは思うけど)

それに対して「フェイトゼロ」はすべての始まり。
予備知識なしで観れる。
もちろんシリーズ他の作品を観た後でも楽しめる。
そしてストーリーは感動確実の虚淵ブランド。
そういう美味しい作品だと思うのです。


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