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路上出身の甘ったれ黒猫ケイちゃん。保護から9ヶ月、元の飼い主判明す。

黒猫ケイちゃん。元の飼い主が、わかった。

2022年3月8日お昼頃。携帯が鳴った。出ると、横浜市動物愛護センターからだった。同じ町内、同じ番地の人から、黒猫を探していると届け出があったという。ケイちゃんへの照会だった。

同じ猫である可能性は相当高い。なにしろ同じ町内で番地まで一緒なのである。ケイちゃんを保護したのもそこだ。

最初、元の飼い主さんと直にやり取りしてほしいと言われたが、トラブルを未然に防ぐために断った。動物愛護センターに間に入ってもらい、まずは写真を送ることになった。

ケイちゃんの最も特徴的な身体の箇所は、しっぽだ。根本から右側に曲がり、短く、固まっている。まずそこがわかる写真。あとは全体的な体格や、目の色がわかる写真。3枚セレクトしてメールで送る。写真のサイズが大きすぎて先方が受信できないトラブルが起きたが、リサイズして再度送付し、愛護センターさんのほうから元の飼い主さんにさらに連絡を取る手はずとなった。

メールには、警察署・区役所に届け出て3ヶ月がすでに過ぎていること、それを受けてマイクロチップをこちらで入れたこと、またケイちゃんはこちらによく懐いていて同じ布団で寝ること、よって手放すのは厳しいとも書いた。完全に情が移っている。もうケイちゃんを手放すことは考えられない。

もとより、何らかのミスがあったのだろうが、ケイちゃんを外に出してしまうような飼い主に戻していいのかという葛藤もあった。時間が過ぎる。落ち着かない。ケイちゃんは果たしてどうなってしまうのか。数時間後。再び携帯が鳴る。愛護センターだ。心をまっさらにして、出た。

「家猫として暮らしているなら」元の飼い主は、そのまま飼っていてくださいと言ったという。その瞬間の心の有り様は正直言って覚えていない。頭が真っ白になったというのが正直なところだった。

愛護センターの担当者は、届け出から9ヶ月経っての判明はレアケースですとおっしゃっていた。それはそうだろう。9ヶ月もの間、元の飼い主さんもどんな思いでいたのか。

もしかしてずっと、愛猫がいなくなったことに混乱し続けていたのかも知れない。今になってやっと、届け出という手段を思い付いたのかも知れない。そのあたりは知ることはできまいが、とにかく、9ヶ月…いや、ケイちゃんが行方不明になったのは4月だそうなので(保護は6月)、ほぼ1年の空白を経て、ケイちゃんは無事であると知らせることはできた。

このままケイちゃんは我が家で暮らす。

保護時、獣医さんに診ていただいた時は、歯の状態などから推定1歳と聞いていたが、実際には3歳だった。今だから書けることだが、実はマイクロチップを入れるのと同時にケイちゃんは避妊手術の予定だった。

しかし、動物病院から「お腹の毛を剃ったら、手術の跡がありました。避妊手術の跡かどうかはわかりませんが、どうしますか、お腹開けますか」と連絡が来たのである。今思えば、元の飼い主さんが避妊手術を受けさせていた可能性が高いのだろう。

ケイちゃんは結局、マイクロチップを入れただけでお腹は開けず、すぐ麻酔から覚めさせて、お腹に毛刈りの窓を作って帰ってきた。

ケイちゃんとの出会いは路上だった。顔を合わせるなり、なーなー鳴いて近寄って来た。そのまま捕獲し、キャリーに入れ、動物病院に直行したのを鮮やかに思い出す。

あの人懐こさは、野良猫でも地域猫でもありえないほどだった。やはり、飼い猫だったのだ。だから人を恐れない。どうもなんだか…という気はしていた。ただ…元の飼い主さんには申し訳ないが、これも出会いの形のひとつとして大切にしたいと思う。

ちなみに高齢の家人は、幼い頃に大切にしていた黒猫が行方不明になった経験を持つ。何十年もの月日を経て、その黒猫が家人の元へ戻ってきた。そう思うと、鳴いてまとわりつくケイちゃんを、うるさがりながらも相好崩して可愛がる家人を見るにつけ、その意味でも手放すことは考えられなかった。

今日もこれから布団に入る時、ケイちゃんが足元に来るだろう。ケイちゃんが私たちといることで幸せを感じてくれているなら、それでいい。責任を持って幸せに過ごしてもらえるようにしていく。それしか、残された道はないのだから。

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