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【読書感想文】月曜日の抹茶カフェ② 出会いとパートナーシップ

読書感想文、その2。

相変わらずネタバレ、ごめんなさい🙏 読みたい方は気をつけて💦💦


葉月、長月の章もとてもよかった。

葉月は、お互いを思いながらも、その思いを伝える機会を逸している、子供のない夫婦の話。

旦那さんは脱サラから古本屋。奥様もお仕事をされていて、会社辞めていいよ、と言われ独立はしたものの、ずっと心の奥に申し訳なさを抱えている。

そんな中、暑い夏の日の古本市のイベントで出会った、初々しい大学生カップルの男の子に、ある本を売る。

『あの本は、彼が迎えに来るって知ってたんだね』
『あなたはいいしごとをしてるね』

……という趣旨の奥様のセリフ(本編は京都弁です)に、筆者の本への愛が溢れていて、それに感動しちゃった。

「縁」がこの本全体のテーマだけど、縁って人と人、だけではないんだ。

ものとの出会い、物語との出会い。男の子にとっても、待望の邂逅だし、ご夫婦の2人にとっても、その本が、2人の思いを引き合わせてくれた。


長月の章は、そのカップルの男の子が主人公になる。

高校時代にガリ勉の陰キャだったと思われる彼は、晴れてハイレベルの大学に入り、イベントサークルで大学デビューを目論み、可愛い彼女にアタックしてなんとか付き合えることになり、先月のデートと相なったのだけど…。

その精一杯の背伸びが、どこか虚しい努力だったと知り、葉月の章で出会った古本と、購入の際に古本屋ご夫婦と交わした言葉が、本当の彼自身の探究の入り口になる。

陰キャで大学デビューを目論むイタさ、みたいのは、自分も物凄く身に覚えがあるし(汗)、元々おしゃれな陽キャには頑張っても肩を並べられない苦しみ、みたいのは、ほんとにわかる〜 わかる〜 痛すぎる〜〜😂 と激しく共感しながら読んだ。性別違ってもこの辺の苦しみは同じだな。

この間、この本には関係ない、とある「最近の若者」評で、「カテゴリーにテンプレートを貼り付けて、言外に出ようとしない感情的劣化が進んできた」という辛辣かつ的確だなと感じる文章を目にしたのだけど、

この難解な言葉は、たとえば、「こういうのが男としてイケてる」「かっこいい」という、誰かが決めた型(テンプレート)でしか、人や物事を見られないタイプのことを指し、「枠の外の世界を受け取り、感じる力が、最近の若者は劣化している」ということを言ってるのだと、私は理解している。(ちなみにここでいう『若者』は、ここ35年くらいの若者だというから、50歳〜くらいまではこの範疇)

話は本作に戻るけれども、長月の主人公の相方(イベントサークルの可愛い彼女)は、こういう感じがまさに出てて、彼はその相方のテンプレからのジャッジにビクビクしながら付き合っている、という構図だった。

それは恋愛のあるあるなのかもしれないけれど、こういう彼と彼女は、「出会ってもいない」のだなと思う。テンプレの鎧を被り、形式的なダンスを踊っているだけだ。

正直、夫婦でもこのレベルの繋がりの人たちは現実にいる。

葉月の章のご夫婦も、そこまで冷たくはないけれど、お互いの思いが伝えられていないあたりは、まだ「出会っていなかった」のだろう。※壮年の彼らの場合は、カッコつけではなく、申し訳なさ、罪悪感が鎧となっていた。

長月の章の大学生の彼は、これから「本当の自分」と再会して、そして、そんな彼と本当の意味で「出会って」くれる素敵な人と、いつか縁があるのだろうな。(ああ、ここで盛大にネタバレしている……)


「あなたはどういう人なの?」

せっかく、恋をしたり、繋がっていく人であるのなら、そういう問いをずっと続けていきたいものだ。

その先に見える顔が、どんな顔であっても、自分の幻想ではない、本当のその人に、出会い続けたい。

パートナーシップについて、よくよく考えさせられた、エピソードたちでした。(ちなみに、卯月の章も多少この片鱗がある)

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