もかこ

物心ついた時には本好きでメモ魔。若い頃は、甘えるタイミングを計れずに落ち込み、本とピア…

もかこ

物心ついた時には本好きでメモ魔。若い頃は、甘えるタイミングを計れずに落ち込み、本とピアノとダンスに逃避する。今や「とうの立った」秘書。おこわと和菓子が大好き。厚切りトーストを偏愛。

最近の記事

本物の記憶が人を寛容にする・・こともある

あまり好きではなかった食べ物が、あるお店のものがきっかけで大好物になることがある。その理由がわかったような気がした。そしておそらくこれは食べ物だけのことではない。相手の良さ、本質のようなものに好意を抱いていれば、機嫌の悪い時に邪険にされたりしても許せる。寛容というのはありがたいものだ。 しかし例えば、DVから逃げ出さない女性が、「暴力をふるった後はやさしい」「普段はとてもいい人なのに」などと言うのはどうであろう。穏やかな時、暴力をふるうようになる前の「本物」の彼の記憶が、暴

    • 連絡しない要因はいっぱいある

      彼にプレゼントとカードを渡したのに何も言ってこない、という話(連絡をくれない男)を友人にした時の返事である。たしかにそうだと思って考えてみると、いろんな可能性が頭に浮かんだ。なんで、「カードを入れたのがよくなかった」という選択肢に固執していたのだろう。「送らない要因なんていっぱいある」は効いた。 相手が連絡をくれない理由なんていくらでもあるし、そのうちのいくつかが重なることもある。それなのに、自分に非があった、というものを選んで心を痛める女は少なくない。しかもいったんそう思

      • 連絡をくれない男

        初めてこの話を読んだ高校生の時、こんな小賢しい女は嫌いだと思った。男も、恨んでいるだろうというなら何で早く謝らないのか。違和感とともに印象に残った。 それから結構な年月を経たある日。付き合っている人にちょっとしたプレゼントを渡す機会があり、思い立って初めてカードを添えてみた。ところが、お土産を渡した時でも「ごちそうさま」のような簡単なメールがくるのに、何も連絡がない。普段しないことをしたばかりに、あのカードがまずかったのではないか、という考えがふつふつとわいてきた。それを振

        • 未来をオーダーする

          ぎっくり腰ならぬ「ぎっくり首」持ちの私は、年に何度か右ないし左が向けなくなり、着替えもろくにできなくなる。以前仕事で頸椎を痛めたのが原因で、きっかけとしては「前日に重い荷物を持った」というパターンが圧倒的に多い。カバンの重さは死活問題である。 軽いのがよければ革でない方がいいのだが、そうすると遠距離通勤に耐えられずすぐに破れる。去年、長年愛用したカバンの内側の布がぼろぼろになってきて次のを探し始めた時も、重さがネックとなって難航した。ところが半年後、駅前で何か変わったものを

        本物の記憶が人を寛容にする・・こともある

          悪かったと思うからあやまれない

          卵をパックごと落として割ってしまった「先生」(年配の男性)が、初めて卵を落とした時のことを思い出している。祖父の家でおつかいを頼まれた時、玄関でつまづいて卵の入ったかごを落としてしまった。言葉が出ず震えていると、祖父は割れた卵を見て、「おや」「生まれたか」と言ってくれた、というのである。 悪かったという気持ちが強いためにあやまれないなんて変なの、と思ったが、そのうち、たしかにそういうことがあるのに気づいた。もちろんそれまでもあったはずだが、認識していなかったからカウントされ

          悪かったと思うからあやまれない

          心は心の奥を知らない

          「波止場」は、湯治先で一人の男と懇意になった「私」が、その男と妻が仲良くなりすぎたため帰ろうとするところから始まる。波止場につくと、なぜか船にその男が乗っており、妻だけが乗ったところで船が出てしまった。船の客が汽車に乗り換える駅まで駆けつけたが間に合わず、次の汽車に乗った「私」は怪しげな相客を見ているうち悲しくなる。 出て来た涙を見た後で、始めて心の奥の事を知る・・なるほど自分の発した言葉や体調の変化に、自分の「心の奥」に気づくことがある。何かをやってみて初めて、ああ、自分

          心は心の奥を知らない

          理解してくれた人たちを思い出す

          17歳でイタリアに渡り、日本という枠に収まらず活躍しておられるヤマザキマリさん。イタリア留学のきっかけは、14歳の時母が一人でヨーロッパに行かせたことだと知り、お母様とはいったいどんな方なのだろう、と思っていた。本書で描かれるのは、娘から見た母親の姿、それも全体のごく一部なのであろうが、それだけでも「この母にして」ではなく、母の方が一枚上手なのでは、という印象を受ける。 しかしその母リョウコは、娘の小学校一・二年の担任であったI先生が連絡帳に書いてくれた、「この社会で活き活

          理解してくれた人たちを思い出す

          まだ決心する時期ではない

          これは、内舘氏が「退職すべきかどうか悩んでいる人たち」に必ず言う台詞だという。退職云々ほど大きな問題でなくても、始めたいことがあるが決心がつかないとか、どちらにすればよいか決められないとかいう程度のことなら、誰しも思い当たる節があるだろう。そういう時は、決められないことよりも、決められないままの状態が辛かったりする。かといって、迷っている状態に耐えられず自分で締切を作って決断したところで、正しい(自分の気持ちに沿う)選択ができるとは限らない。ちょっとした品物でさえ、時間に追わ

          まだ決心する時期ではない

          心配という魔物

          70年近く精神科医を続けてこられた中村先生。「知らん」ができずに疲弊してしまった人をたくさん診て来られたに違いない。 起きるとわかっているわけでもないことを心配する。現実に起きているかどうかわからないことを妄想して気に病む。しかし実際には、「起きるとわかって」いたはずのことが起きないこともあれば、起きるはずがないことも起きるのだ。そもそも、心配しても現実を変えることはできない。心配するのと手を打つのとは違う。 ところが実際には、頭を使おうとせず、あるいは動転して頭を使うこ

          心配という魔物

          余力を残す

          この本、89歳にして現役の精神科の先生の話ということであちこちで紹介されていたが、タイトルの「うまいことやる」に抵抗があって手に取ることはなかった。ある時、帯の「幸せかどうかなんて気にしなくてええんです」が目に飛び込んできて手に取ってみると、前書きに とある。俄然読む気になった。 頑張らなくてはいけない時だけ頑張ればいい。最初「やる時はやる」ということかと思ったが、そうではないようだ。それは、やる気になる、腹くくってやる、など本人が意図して頑張る場合の話である。頑張らなくて

          余力を残す

          恋愛至上主義、といいながら

          何がきっかけだったか、去年の秋ふと、恋愛至上主義だといいながらそのために自分は何もしてこなかった、という恐ろしいことに気づいた。もちろん、外見に気を使うとか、彼を楽しませることを考えるとか、間接的な努力は惜しまなかったが、二人の関係を動かす、という意味では、女の側が動かしてはいけないという決まりがあるかのように何もしなかった。相手が動かしてくれるのを、ただ待っていた。いや、じれじれと待っていた。その上、ひどいことを言われても言い返せずに落ち込み、何か失敗したと思えば萎縮してい

          恋愛至上主義、といいながら

          努力よりも工夫

          不思議なタイトルのこの本、帯には「最初の会社をパワハラで退社した芥川賞作家と、150社以上就職活動と転職活動をした経験をもつコラムニストが、世間知らず・不器用・KYなままでも、なんとか社会で生き延びていくための技術を語り尽くす。世の中をすいすい渡っていけないことに悩む、すべての女性に捧ぐ。」とある。目次を見ると、 「わかりやすい恩人」「わかりにくい恩人」 他人を使ってガス抜きするやつから逃げろ 「メンタルから変えていく!」じゃなく、ペンを変える 等々、ちょっとした名言集である

          努力よりも工夫

          工夫できることなら続けられる

          料理と人生相談とは不思議な取り合わせだが、『ビッグイシュー日本版』に寄せられた悩みに販売者たちが回答し、そこに枝元さんがメッセージと「悩みに効きそうな?」料理のレシピを添えるという、内容そのままのタイトルである。中には、こんなことを相談するのか、というものもある(枝元さんもそう書いておられる)。 どんな仕事でも、続けていると往々にして悩みや迷いが生じる。その最たるものが、この仕事に自分は合っているのだろうか、の類である。その一方で、何年やっても自分の仕事がおもしろくてしょう

          工夫できることなら続けられる

          長い月日が経ちました

          ミセス・チャン。前作『蒼穹の昴』の冒頭から、ニューヨークタイムズ記者トーマス・バートンの秘書として登場する。数カ国語を操り変装も巧みに密偵として活躍、とてもただ者とは思えない。その一方で、北京社交界の花と称され、皇族沢殿下を虜にし・・やがて西太后の孫であることが判明する。なるほどただ者ではない。 当然、西太后のためにも体を張る。上にあげたのは、西太后の意を汲んだ大がかりな作戦の仲間に加えようと、バックハウス教授を晩餐に招待した際の会話である。リズミカルな掛け合いの中の「愛し

          長い月日が経ちました

          絶好調という無自覚

          父の本棚に『易入門』(黄小蛾)という本を見つけたのは六年生の時である。カバーでタイトルが見えなかったので開いてみたら、挿絵が可愛く、読んでみたらとても面白かった。それぞれの卦のキャッチフレーズをあらかた覚えてしまうほど読んだ。大人になってその本を探してみたが絶版で、いろいろ易の本を読んだ中で通じるものを感じたのが、『立体易占術』である。 この本もわかりやすいのだが、理解しきれないところもあった。たとえばこの「火天大有」、「こわいものなし」で「願いがことごとく叶」って、それで

          絶好調という無自覚

          知らずにいる幸せ

          その頃、私はあること(仮にその事象をAとする)を聞いて動揺していた。そして、昔どこかの名画座で「哀愁」を見た時、前半の、ヴィヴィアン・リーが幸せそうに踊っている場面で、あちこちからすすり泣きが聞こえてきたことを思い出していた。結末を知らない自分はうっとりと眺めていたが、知っている人は幸せな場面など見ていられなかったのである。こんなこと(A)になると知らずのんきに幸せな気持ちでいたなんて、「哀愁」と同じではないか。それでも一応いつも通りに仕事に行って、時々ぼんやりしながらもボス

          知らずにいる幸せ