余力を残す
この本、89歳にして現役の精神科の先生の話ということであちこちで紹介されていたが、タイトルの「うまいことやる」に抵抗があって手に取ることはなかった。ある時、帯の「幸せかどうかなんて気にしなくてええんです」が目に飛び込んできて手に取ってみると、前書きに
とある。俄然読む気になった。
頑張らなくてはいけない時だけ頑張ればいい。最初「やる時はやる」ということかと思ったが、そうではないようだ。それは、やる気になる、腹くくってやる、など本人が意図して頑張る場合の話である。頑張らなくてはいけない、というのだから、「本当なら頑張りたくないところを」頑張らざるを得ないという状況であろう。のみならず、このぐらいにしとこう、の「このぐらい」を自分で決めることが許されない時なのだ。消耗することこの上ない。そんな時に「よく頑張ってるね」などと言われても、仕方ないからやってるのに・・と当惑するかもしれない。
しかしほとんどの人生には、不本意ながら頑張らざるを得ない時期というのが必ず組み込まれている。その時期がくる前に頑張りすぎて余力を使い果たしてしまったら・・・大変な時期を乗り越えられなかった人、というのはそういう人なのかもしれない。
人はいざという時のために貯金をするが、お金は借りられることも降ってくる(突然手に入る)こともある。力は決して借りられないし、一気に増えることなどない。余力こそ、残さなければ。(2019.9)
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