見出し画像

心配という魔物

夜の仕事は、「よく眠る」こと。
確実に起きることがわかっていることだけ、手を打てばいい。
「それ以外は知らん」でいい。

中村恒子『心に折り合いをつけてうまいことやる習慣』

70年近く精神科医を続けてこられた中村先生。「知らん」ができずに疲弊してしまった人をたくさん診て来られたに違いない。

起きるとわかっているわけでもないことを心配する。現実に起きているかどうかわからないことを妄想して気に病む。しかし実際には、「起きるとわかって」いたはずのことが起きないこともあれば、起きるはずがないことも起きるのだ。そもそも、心配しても現実を変えることはできない。心配するのと手を打つのとは違う。

確実に起きることがわかっているんであれば、事前に対策をすればええ。それはたくさん頭を使って、人に聞いたり、自分で工夫したりしながら手を打っていきましょう。でも、それ以外の「起きるかどうかわからないこと」は知らんと決め込んで、しれっとしてればええんです。

(同書)

ところが実際には、頭を使おうとせず、あるいは動転して頭を使うことを忘れ、何もせずに心配だけしていることがある。「たくさん頭を使って」も打つ手がない、ということもある。いずれにしろ心配しかすることがないという状態で、そこにとどまっていると、心配という魔物につかまってしまう。

心配事があって落ち込んでいると、考えるな、忘れろ、などとよく言われるが、それが簡単にできないからそうなったのだ。ここで「知らんと決め込んで」と言われるのも、そのあたりをよくご存じだからであろう。そのくらい強い態度で臨まないと、心配を追い払うことはできない。

おとぎ話などで、怖いものに追いかけられた時に唱えると相手が戦意喪失する、という呪文が登場することがある。「知らん知らん!!」でも何でもいい。心配や不安が追いかけてきた時に投げつける、自分なりの呪文を探しておくのもよさそうだ。(2019.10→2024改)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?