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大工、大工以外になる

 工務店をクビになって、路頭に迷ってしまった僕はこの頃、頭ん中もかなり血迷っていました。


 僕が鬱になったきっかけは、バンド活動が終わって生きがいを失ってしまったこと。これには自分でも気が付いていたので、バンドの代わりになる生きがいを探し続けたんです。


 小説を書いてみたり、ゲームをやってみたり、眉毛を細くしてみたりと・・・え?


 で、仕事の方は美容系の専門学校に行って、美容師になろうって決めました。


 理由は、幼い頃から大工にな~れ、大工にな~れと父に呪いのようなプレッシャーをかけられて育ったから、作業着がもう嫌だったんです。


 大工以外っていうか、作業着以外の仕事がいい!


 できることならスーツも嫌だ!


 音楽制作で培ったイマジネーションとかセンスを無駄にしない仕事がいい!(いやまあ、本当に培えたのかどうかは置いといて)


 そしたら、なんとなく浮上したのが美容師だったのよね。この適当お気楽ロジックでサクッと通信制の美容専門学校に入学。更に何件かの美容室に直電&訪問して面接、からの就職。なんてスピーディ!

 

 我ながら、これだって決めた後の行動力はすごいと思う。多分、美容師になるって決めてから二か月後には美容室で働いていたんじゃないかなあ。


 あっという間に始まった美容室での仕事。当時はまだ結婚していなかったけど、同居の妻は心配だったと思います。


 30歳を前に仕事をクビになって、直近まで音楽音楽言ってたのに、小説書いて新人賞ねらいながら、唐突に美容師になるって息巻いてるわけですから。しかも抗不安薬を常飲。


 焦りと迷いが渋滞してて、悲惨な時期。狭いアパート暮らしで、家の中も暗かったし、日曜昼間のドキュメンタリーみたいだよ。



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