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大工、いとしさとせつなさと

 懐かしいドリフのコントには大工ネタや職人ネタがそこそこありました。長い角材を肩に担いだ志村けんが「おーい」と呼ばれ、そのまま振り返って呼んだ相手に長い角材を当てちゃうコント。めっちゃ笑ってたよ。


 そんなコントやバラエティで定番の大工ネタが、釘を打つ際に玄能(金槌)で手をぶっ叩いちゃうやつですよね。「あ~!」って叫んだ次のカットで10倍くらいに腫れ上がった指を見せて落とすまでのワンセット。


 これ、指が10倍に腫れることはないですが、大工なら誰でも経験する通過儀礼のようなもので、大工あるあるランキング一位必至です。


 でね、これが一回叩くとむちゃくちゃ痛いのでしばらくは気を付けるようになるから叩かなくなるんです。んで、時間が経って忘れた頃にまたぶっ叩いちゃうのよね。


 ちなみに手の甲や親指の付け根辺りもよくぶっ叩きます。実は指よりこの辺を叩くことの方が確実に多い。だけど指ほどは痛くないので、すぐ忘れちゃうというか、そもそも意識すらしていない感じ。たくましいこってす。


 これに関しては腕とか年齢とかあまり関係ない気がする。疲れてくれば人間手元が狂うのは当たり前だし、薄暗くなれば目もかすむ、仕方ないことさ(ってめちゃくちゃ歳関係ありそう)。へっへ~んだ!


 いやいや、話したかったのはそこじゃないっす。自分の腕の無さや年齢の現実から逃避したかったのではなくて、本題は指をぶっ叩いた直後の感情の変化の話。


 さながら感情のジェットコースターや~~!!


 と、かのグルメリポーターもびっくりです。指をぶっ叩いてしまうと・・・


 ドカッ! と、インパクトの瞬間からむくむくむくっと急激に痛みが込み上げ~の、


 「いってええぇぇ~~~っ!!」と、痛みの限界の頂点の極みまで一気に達し~の、


 「ぐっぞおおぉぉ~~~っ!!」と、その痛みが染みて広がるように真っ黒な怒りにシフト~の、


 「ぐぬぬぬぬっ」と、鼻息荒くわなわなしているうちに痛みが少し引いて冷静になり~の、の直後~に、


 ずず~んと、のしかかるように身を襲う虚しさと切なさ。もう足に力が入らなくなるほどの重たい感情が精神を蝕んできて、不意に口からこぼれ落ちる最後の言葉・・・


 「帰りてぇ」


 心強さがほしいよ。

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