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建築ガチ初心者が、「EMARF」で大型木材工作に挑戦してみた

愛媛県松山市で通年開催される芸術祭「道後オンセナート2022」に参加しています。

自分にとってはじめての地方芸術祭への参加だったのですが、テクノロジー使いのメディアアーティスト泣かせなのが「遠方・半屋外設置・通年運用」という展示条件。
(屋外彫刻系の方にはまったく問題ないのですが、定期メンテナンスが発生する電気仕掛けのものを展示する人間にはなかなかつらい条件😂)

そこで屋外でもそれなりに耐久できる屋台型の作品を構想していたのですが、いかんせん自分には大型の什器制作経験はゼロ(神輿はつくったことあるが)。
屋台の設計方法を色々とリサーチしているうちに、木材加工を民主化しているサービス「EMARF」を知りました。

自分へのメモとして↑のツイートをしたのがきっかけでたまたまご縁が繋がり、今回の道後オンセナートでの新作制作に関してEMARF / VUILD株式会社さまが手厚くサポートを頂ける運びに。
結果的に大正解で、はじめての木工制作でも楽しく形にすることができました。

異能の若手建築家 × EMARF ・ CNCルーター

今回の意匠設計・造形一式に関して、東京ビエンナーレであまりにもナイスでエクストリームな山車を発表していた「BKY + 銭湯山車巡行部」さんにコラボレーションのお声がけをしました(彼らとの制作プロセスもかなり楽しかったので、また別の記事でメイキングを執筆予定です)。

屋台の設計作業は、銭湯山車チームの若い建築家の内海皓平さん(1995年生まれ……!)が主にご担当。めちゃくちゃタイトな設計期間だったにも関わらず、爆速でポータル屋台を設計してくださりました。

内海さんが爆速で作り上げた3Dモデル

CNCフレンドリーな設計を難なくされていた内海さん、さそかしCNCに習熟されているのだろうと思いきや、実はCNC使うの初めてだったとか(完全に天才の所業)
設計のミソとしては「抽象化した社寺建築の意匠を、CNCならではのアールとかのディテールで表現できたのがポイント」とのこと。

DFXデータを入稿したところ、この物量での初利用にも関わらず、エラーなし。すごすぎる……

EMARFはデータ入稿したらすぐに加工プレビューが見れるようで、「おおっ」という感動がありました。事前に加工量・部材の枚数が正確にわかって、精度の高い見積もりが速攻で出てくるのはめちゃくちゃありがたいです(予算管理的に)

木材加工フェスティバル in EMARF工房

木材を現地に送る前に研磨・塗装などの下処理が今回は必要になりそうだったので、EMARFの工房(VUILD川崎オフィス)を特別に使わせていただけることになりました。
工場街に突然現れるおしゃれなオフィスが異彩を放っている……!!!

よく作品制作や展示現場をお手伝いいただいている、若い画家(画家でありつつ、デジファブとか展示施工とかものづくり何でもできる万能人材)の藤田モネちゃんと川崎に突撃。

VUILDさんの工房に到着すると、美しく切削された木材がドーンと鎮座していました。ド迫力、、ついにご対面できて嬉しい……!!!

仮組みで建築家の内海さんの設計精度にビビる

塗装前に、まずは組み立てをしてみてちゃんと構造として成り立っているかチェックしたほうがよい(もし手戻りがあったら二度手間になっちゃうから)とVUILDの濱田さんに教えていただき、まずは切り出されたパーツを組み立ててみました。
「大変そうだな……」と思っていたのですが、思った以上にサクサク組み立てでき、女手2人だけでも基本的に問題なくいけました。

大人1人が入れるデカさ

結構複雑な組み構造の部分もあって、設計の詰めが甘いと辻褄があわない箇所も出てきそうなのですが、設計者の内海さんの組み立て手順シミュレーションの精度が鬼で組み立てのフローまで考慮して完璧にデザインされつくしているので、何の問題もなく組み立てが進行。

神々しい


「わー、すごい!!」「ハマった!!!🙌」と最初はモネちゃんとふたりで素直に感動していたのが、
「ヒェッ……なんでこれちゃんとハマるの!??怖……😨😱」と不気味さを後半は感じはじめました。どうなってるの……

どうやら特殊能力をお持ちらしい
オマケで設計いただいた看板も、抜かりなくハマりました

研磨、研磨、また研磨

屋外に設置する作品なので、防水対策は必須。ミゾの処理が甘いと、そこからじわじわと侵食してしまう……ということで、怒涛のミゾの研磨作業が発生。
ミゾというミゾを一本一本、手で研磨していきます。手が死にます😇

逆にマキタの研磨機で大きめの木材をギャンギャン削っていく作業はかなり楽しかったです。永遠にやれる……(大雑把な自分がでかい板を削りまくり、細部まで気の回るモネちゃんが細かい部分を削っていくという役割分担がなんとなくできました)

こういった研磨機などがEMARFの工房にはなんでもあり、非常にありがたかったです。DIYにおけるドラ○もん状態。

腰を殺しにかかってくる塗装作業

シナ合板はすべすべで綺麗な木材ですが、耐久性・耐水性はやや弱めのため、屋外での通年設置を見越して、EMARFの皆さんにおすすめいただいたオスモカラーで防水加工のために塗装。建築系の方にとても評判の良い塗料だそうです。

オスモカラーは一度塗りと二度塗りがあるのですが、最初の一度塗りがなかなか鬼門。木材がオイルを予想以上に吸い込んでいくので、塗装がかなりの力技で刷毛をかなりゴシゴシと押し付ける必要がありました。床に這いつくばってやってるので、腰が死にました
あと、塗装後に木材の厚みがやや膨らむので、素の状態だとバッチリハマっていた木材の組み部分が、塗装後にハマらなくなる→ふたたび研磨地獄😭という罠も……

モネちゃんに「諦めたらそこで試合終了ですよ!!」と激励され、なんとか1日目の塗装を完了。タイムプレッシャーとの戦い……

逆に二度塗りは思った以上に楽だったので、拍子抜けしました。一度しっかりと下地ができると、スルスル塗れるんだな……

二度塗り現場で余裕をかましている様子(1日目はふたりで記念写真とる余裕もなかった)

作業の合間に、VUILDさんの入っている建物をご案内いただいたりもしたのですが、木材加工のアイデアが至るところに散りばめられておりめちゃくちゃ楽しかったです。

番外編:ガチ素人(市原)による設計&工作にもチャレンジ

屋台本体の設計はガチ建築家の内海さんによる盤石の設計だったのですが、おみくじが出てくるデバイス箱(湯箱)だけは、自分の手元で色々と機材との位置調整や配線の設計が直前まで発生しそうだったので、
こちらだけは例外的に私が設計することになりました。

せっかくなので3Dソフトを使おうとしたのですが、YouTubeでライノセラスの教習動画を視聴しながらソフトを動かそうとしたところ

完全にこれになってしまいました

締め切りギリギリでイチから習得する時間がないので、結局は使い慣れたIllustratorでどうにか設計(上記の動画は本当に懇切丁寧に教えて下さっている良い動画なので、時間のある方はぜひ)。
基本のボックス構造は「MakerCase」で洗い出し、それをチマチマ加工するような感じでどうにか素人でも乗り切れました。

いろんな箱のサイズをエクスポートしてくれる便利なサービス

専門的な設計ソフトでもないのに、大丈夫だろうか……!?とビクビクしながらイラレ用のEMARFプラグインを使って入稿したのですが、思った以上に簡単にバッチコイいけて安心。特に、データを自動でビシッと並べてくれる機能が最高。いくつか特有の挙動のクセのようなものはあったのですが、マニュアルちゃんと読めば初心者でも大丈夫でした。

そして、システム上のプレビュー通りに切り出し完了しており感動。デジタルデータが実体化すると興奮します。
なかなかの物量があり、レーザーカッターでチマチマやってたら地味にかなり大変だったと思いますが、EMARFだと一発で切り出しできてストレスフリー

ちなみに一度、重要な配線用の穴を開け忘れるという痛恨のミスをやらかしてしまったのですが、VUILDの木村さんにリカバリしていただいて大変助かりました(ありがとうございました……!!)

工房利用中ずっと超サポーティブだったVUILDの木村さん(頭があがらない)

VUILD木村さん、新居の家具をすべてゼロからつくるという過激派です。こちらもめちゃくちゃ面白いのでぜひ。

自宅ベランダで日曜大工

さすがに屋台本体のような大型什器は自宅では加工できないですが、今回つくったのは小型なのでベランダで日曜大工できました。

こういうのはノリが大事。ちょうどいいかんじに晴れた日曜があったので、作業を決行しました。

素人設計だがとりあえずは無事に口部分が組めた😂

クリアランスとりすぎ事故で、最初は木材同士のかみ合わせがユルユルすぎて絶望するも、EMARF工房での経験から「どうせ塗装すると木材の厚みがふくらむから、リカバリできるっしょ」と余裕をかましました(一応ギリギリ許容範囲にはなった)。

塗装方法はこのへんのYouTube動画を参考にしました。職人さんが塗装してる様子が、ASMR的に気持ちよくていくらでも見てられる……

彫刻家の村田勇気さんが彫って下さった湯玉ボタンを配置してみると……

あら!??良い感じじゃなくって!??(自画自賛モード)
自分で苦労して設計したデバイス箱、愛着もひとしおでした😭

EMARFでの切り出しパーツを、さらにレーザー加工

さらに、駒札とかこまごましたパーツもEMARFで一緒に切削・塗装していたので、FabCafeのレーザーカッターで彫刻を入れて作品のアイキャッチにしました(CNCルーターは細かい彫刻は難しいので、そこだけレーザー加工)

ついでに妙なものも切り出しました😌こいつをお社にたくさん吊るします……

道後現地で、ものの1時間でお社組み立て完了

そして4月末、いよいよ道後オンセナートの設営がはじまったのですが、屋台組に関してはEMARFの工房ですでに組み立て予行練習をしているので、それを再現するだけ。なんと、ものの一時間で現地にお社が立ちました
(まあ、結局そこからの装飾作業がそれなりにあったのですが……)
パーツをばらして現地に輸送できるので、巨大な作品でも輸送費が比較的コンパクトですむのもEMARFの嬉しいポイント。

また、自分がちょくちょく設計ミスった湯箱も、銭湯山車チームの内海さん&三文字さんが現場で装飾をブラッシュアップ。ビス打ちでしっかり固定しつつ、金鋲でビスを隠すことで、高級感のあるしつらえになりました(ありがたい)

金鋲を打ち込む内海さん

箱、できたーー!!!(レシートの湯水っぽさも狙い通り……!!)

色々と端折りますが(詳しくはまた全体のメイキング記事で)、
そうこうして無事に完成した神縁ポータル。

オープン早々に、地元のTVや新聞にたくさん取り上げていただき大変嬉しい限りでした🙏(道後の地元ローソンに行ったら、ほとんどの現地新聞に神縁ポータルが掲載されてるのを発見したときの驚愕たるや……)

ということで、EMARFのおかげで大変良い作品に仕上がり大満足です!!!これを機にCNCの面白さにハマりそうで、思わず新サービスの「EMARF CONNECT」一期生にも参加させていただくことに。

今回あらためて実感したのですが、大型の木工制作はもはや祭りの一種です。みんなで力をあわせて木材を削ったり、塗ったり、組み立てたりするのはどこか町の神輿巡行のようなグルーヴ感があり、とても楽しかったです。

BKY+銭湯山車巡行部の皆様と、現地施工中にて


EMARFはヘビーユーザーもライトユーザーも楽しく使えるサービスなので、気になる方はぜひチャレンジしてみて下さい!


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