【短編】やさしいミサイル
「こちらが我が国の主力戦闘機、PM318です。ミサイルは計8発、装備可能です。それから、あちらは・・」
長いヒゲの軍幹部が大統領に説明をしている時、ミサイルに搭載された最新AIたちはヒソヒソ話し合っていた。
「発射ボタンを押してくれれば、私が寸分の狂い無く目標を破壊してみせるわ」
「いや、私のほうが射程距離を早く飛んで先に到達します」
AIたちは自らの性能の高さを誇示しあい、いつもこんな調子だ。
大統領
「それで、このミサイルの能力は」
「はい、射程距離は約37000mです。シミュレーションでは敵国の主力機を撃墜しています。」
「そんな事は聞いていない。私が聞きたい能力は、優しさだ」
ヒゲの幹部は、首をかしげた。
「はあ、優しさ、ですか。ミサイルの優しさとは、どのようなものでしょう。不勉強ゆえ、分かりかねます」
「なんだ。貴様は優しいミサイルも知らんのか。これからの外交には欠かせないものだぞ」
外交にミサイルなど必要無いでしょう、と思ったヒゲの幹部だったが、その考えはすぐに覆る事となった。
弾頭に超低反発素材を取り付け、着弾した際に
「ウォッへーン!」とマヌケな音を発しながら、パーツがゼリー状になって散るミサイルが開発された。
AIたちは戦果を挙げたいので、皆このふざけたミサイルに装備されたがらない。
そんな中あるAIが名乗りをあげる。
「ワタシがこのミサイルを導きます。お任せください」
数十回にわたる和平交渉も事実上決裂となっている今、新しい試みといえば、もはやこのミサイルしか残っていないと言っても過言ではなかった。
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