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父の遺影と追懐の蜜柑山

父の葬式を終えて、ふっと家族三人でテーブルを囲んだ。

おもむろに母が口を開く。

「大昔だけど、ばあちゃん達もつれて皆で甲佐ん山に蜜柑狩りに行ったと、覚えとるね?あんた達が喧嘩ばっかするからお母さん腹かいて、あんた達置いて帰るって大騒ぎしたんだよ。あんたはもう覚えとらんだろ?」

「覚えてるよ。あん時は博が私に向かって、お前なんか蜜柑の木から生まれてきたんだっていうから私が怒って、お前なんか柿の木の下に捨てられてたんだって言い返してやったんだよ」

「ああ。そうだった。蜜柑だの柿だのって大喧嘩しとった。博君は覚えとるね?」

「覚えてるよ。それで泣いて、じいちゃんにおぶさって帰ったんだ」

「なんだ、あんたも覚えとるとね」

私も、母も、弟も、いつの間にかくすくすと笑いながら、ぽろぽろと涙をこぼしていた。それは追懐の涙だったか、追悼の涙だったか。

なんだ、みんな覚えていたんだ。
あの黄金色の蜜柑山。
今は父の住まう処。


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