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できないことを数えるよりも、できることをやってみる。

73.PUBLIC HACK

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できないことよりも、できることを考える。いまはたぶん、そういう時なのだと思います。

さまざまなイベントが中止となり、旅行はおろかちょっとした外出さえもままならない昨今、あれもできないこれもできないとできないことを数え上げていったらきりがありません。

このように、できないことばかり数え上げてしまうひとの多くは、出来合いのサービスをひたすら受け身で消費することに慣らされてしまったひとかもしれません。それを、『PUBLIC HACK 私的に自由にまちを使う』(学芸出版社)の著者である笹尾和宏さんは「システム化されたライフスタイル」という視点から次のように述べています。

失敗することが許されず、ひたすら成功を追求する価値観が支配する社会で生きていると、「ものになるかわからないけれどゼロからつくりあげる『満足』より、すでに完成されて結果が保証された『満足』を知らず知らずのうちに選んで」しまう。しかし、こうした「手近な快楽」は一方でわたしたちから「『自分で探し求める力』を奪い、『そう行動すべき』と仕組まれている状況に違和感を持たなくさせ」てしまう、と。

ライブに行けない、ジムに行けない、カラオケボックスも不安…… そんなときは、行けるところに行ったり、やれることをやってみるというのも一興だと思います。なんといっても、それは人生を豊かにする選択肢を増やすことにつながります。

先ほどあげた『PUBLIC HACK』という本には、軽量の折りたたみイスと缶ビールを好きな場所に置いてくつろいでしまおうという「チェアリング」や会社帰りにあえて帰宅せずに屋外で過ごしてみる「夜明かし」(笑)など、公園や街路、水辺といった公共空間を私的に自由に使うアイデアの数々が、奇抜なものも含めさまざま提案されていてなかなか参考になります。そのほとんどはいますぐ実践できて、しかもあまりお金がかからないものばかりです。オープンエアのレクリエーションが多いのもいまこのタイミングに敵っているのではないでしょうか。

こうした「PUBLIC  HACK」という発想は、しかしべつに目新しいものではぜんぜんなく、戦前の日本などでもふつうに見られたものだったように思います。

たとえば、東京の下町に暮らす人たちにとって「夕涼み」はまさにパブリック・ハックのアイデアとして定着していました。道端に床几を持ち出して将棋をさしたり、また夕食後に近所の川べりや池の辺りを散歩したり、銀座で夜店を冷やかして歩いたりといった光景が当時の小説やエッセイにはしばしば登場します。

ほかにも、ぼくの好きなフィンランドの人たちなどはまさにパブリック・ハックの天才と呼んでいいと思います。夏の平日の夕方など、市内の水べりはたくさんの人たちの姿で溢れます。

芝生に腰掛けてひとり本を読むひと、おしゃべりに興じる女の子ふたり、6本入りの缶ビールを持ち込んでくつろぐ会社帰りとおぼしき男たちがいるかと思えば、輪になってヨガをする老若男女がいたりと、同じ場所にもかかわらずそこいる人たちの時間の過ごしかたは本当に千差万別。仕事のあとにこうした時間がオマケとしてくっついているというよりは、それはまるで1日が仕事のためと余暇のためと2回あるかのように見えたものです。つまり、極論するなら、フィンランドの人たちの一年はぼくらの2倍、730日あるようなものといっていいかもしれません。

テレビやインターネットを見るかぎりいまは大変シビアな時期ではありますが、見方を変えれば、システムに知らず知らずガチガチに縛られていたライフスタイルを解き放つ最高のタイミングとも言えるでしょう。まずは、できないことよりも、いまできることはなにか思い巡らすところから始めてみませんか?

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