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【読書感想文】 最果てアーケード / 小川洋子

解説

使用済みの絵葉書、義眼、徽章、発条、玩具の楽器、人形専用の帽子、ドアノブ、化石……。「一体こんなもの、誰が買うの?」という品を扱う店ばかりが集まっている、世界で一番小さなアーケード。それを必要としているのが、たとえたった一人だとしても、その一人がたどり着くまで辛抱強く待ち続ける――。

愛するものを失った人々が、想い出を買いにくる。小川洋子が贈る、切なくも美しい記憶のかけらの物語。

最果てアーケード

目次

衣装係さん
百科事典少女
兎夫人
輪っか屋
紙店シスター
ノブさん
勲章店の未亡人
遺髪レース
人さらいの時計
フォークダンス発表会

講談社BOOK倶楽部

感想らしき文

小川洋子作の小説を読むのは初めて。
著者略歴にある『91年「妊娠カレンダー」芥川賞、2004年『博士の愛した数式』読売文学賞』を見て「聞いたことあるな」という程度の認識。

前に投稿した『星の子』

原作が気になり 星の子 (朝日文庫) Kindle版 を読むと《巻末対談・小川洋子》があり、対談の中で著者が彼女を尊敬していて、気になり『最果てアーケード』を読んでみた。 ちなみに『星の子』は映画が原作にわりと忠実だったため、レビューは書いていない。

上に挙げた目次が、アーケードにある商店それぞれの逸話となっており、お店ごとに話が完結する。 アーケードが舞台ゆえ、登場人物やエピソードが少しずつ重なり合っている。

こんな読後感想は誰も書かないと思うが『なろう』的には『ローファンタジー』。

物語の中の描写は細かいところまで現実的だが、物語の前提があり得ない、というか幻想的(話に出てくる商店の生業では、商売が成り立たない)。

街の風景や人々が行き交う様子が、地方の小都市にありそうに感じられ、景色が目に浮かぶ記述は巧み。

主人公の一人称で、幼い少女時代から高校生までの時間を短編の中で表しており、商店街の人々との関わり合いが続く様子は観察的な描写。
(身体は成長していくのだが、物事を見る様子は作者目線で幼い頃から大人並み)

ファンタジーが好きな方は、好みの物語があると思う。
『百科事典少女』『遺髪レース』が個人的には心に残る。

『フォークダンス発表会』まで読むと、この小説の構成・設定が理解できることとなる(直接的には書かれていない)。

物悲しさが漂う読後感であるが、こんなアーケードがあれば行ってみたいなと思わせる小説。


MOH

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