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【実話】降り続ける人【怪談】

前回↓と関連があるかもしれない話。

高校当時、ちょっと家庭内が荒れていたストレスが原因だと思いますが、金縛りのようなものが頻繁に起きていました。

大抵胸の上に手を置いている時に、その手がめちゃくちゃ痺れて重くなり、胸部を圧迫するような感じだったので、現在もそういった姿勢は避けて寝ています。
とはいえそれさえ避ければ大丈夫みたいな感じだったので、夏休みが始まってすぐの頃、この時の小上がりの和室で両手を大の字のように広げて仰向けで昼寝をしていました。

寝ているのか意識があるのか曖昧になっていましたが、どんな姿勢で寝ているのかは自覚がある状態でそれは起きました。例の金縛りもどきです。
広げた両手はとんでもないGがかかったかのように畳に押しつけられているにもかかわらず、何も置かれていない胸部も上から強く圧迫されているような状態で目が覚めました。
これになるたびに睡魔に負けてそのまま寝直そうとするのですが、徐々に圧が強くなるのに負けて毎回完全に体を起こすまで戦い続けなければならないので地味に面倒なのです。

その日も仕方なしに抵抗していたのですが、いつもなら胸の上から手をどかそうとすればなんとかなるはずが、その手がいつもと違う場所にあるので普段より苦戦を強いられていました。

いっそ誰か起こしてくれんやろか。一番近くにいそうな祖母は、外で水撒きをしている音が聞こえます。望み薄。
そう思っていると、2階から誰かが降りてくる音が聞こえてきました。

オカンか妹だ。うちは和室の壁の一部がガラス張りで、階段から自分のことが見えているだろうから声くらいかけてくるだろうと思い、その誰かの救援を待つことにしました。
しかし、足音の主はいつまでも部屋まで辿り着きません。
足を止めているわけではなく、階段を降りる音が遠のくでも近づくでもなく、ずっと同じ距離感を保ったまま聞こえてくるのです。

我が家はちょっと長めかもしれませんが、一般家庭の範疇に収まる長さの階段です。もちろんエスカレーター機能も実装されていないので、その時は何が起きているのか理解できませんでした。今も理解できてませんけど。

祖母は相変わらず庭仕事。抵抗もしんどくなってきて、本格的に困ったわと思った頃、玄関のドアがガチャリと開きました。

「ただいまー」

母と妹でした。
その直後、水から引き上げられたかのように圧が消え、手の痺れは若干残るものの体が動くようになったのを感じました。
そこで思い出したのです。2人は三者面談で外出しており、家にはいなかったことを。

と書くと怖さが増すんですが、今思うと「なんでそんなことも忘れていたんだ馬鹿か? この鼻くそがよ」って感じですね。本当に忘れていました。

2人はついでにスーパーに寄ってきたのでしょう、買い物袋をガサガサいわせながら「寝てんじゃん」「暑くない?」など声をかけながら部屋に入ってきました。最強の寝姿勢を破られた自分は「オウ………」しか返すことができず、ガン萎え状態でした。
いつのまにか足音は聞こえなくなっており、窓の向こうには電動農薬散布機を抱えた祖母が見えました。携帯嫌いの祖母の全持ち物で一番ハイテクなやつです。

寝ているところからスタートしたため、これこそ夢と言われれば夢なのですが、しんどさが残るものなのと、なんとなく前回の出来事と全く別物とも考えることができなかったので納得がいかず、どちらかの話をするともう片方も思い出します。
だって階段を降りる足音は、女性のように軽い音で裸足でしたから。

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