見出し画像

ラーメン価格に見る日本の食文化の変化



日本の物価上昇とラーメン価格

 日本の物価上昇について、特に外国人観光客の多い地域で物の値段が大きく上昇しているという話をよく聞きます。特に、外国人観光客が多く訪れるラーメン屋では、日本人向けのメニューに加えて、外国人向けの高級メニューを設けて提供するといった話も聞きます。
 このような動きについて、今後どうなっていくのか、将来の予想について考えたいと思います。
 現在、外国人の多いニセコなどで一杯3,000円のラーメンを提供する店が出てきたことが話題になっています。これは、おそらく日本の多くの地域で見られるようになっていくと思いますし、値段は更に上がっていくと私は予想しています。すでに東京でも2,000円以上の値段でラーメンを提供する店が出てきています。

ラーメンの高級路線化と海外展開

 日本人からすると高いと感じてしまいますが、ミシュランで星を獲得していたり、外国人に宣伝できる店では、海外と同じ価格設定が可能です。ラーメン一杯が何千円もするという現象は、私のような普通の日本人からすると違和感がありますが、ラーメンというものが大衆的なものであり、決して高級料理ではないという概念から生じているのではないかと思います。
 しかし、海外展開をしている日本のラーメン店は、高級路線とは言わないまでも、ラーメンをそこそこの値段で提供するレストランとして海外でビジネスをしているところが多いです。外国人にとってはラーメンが3,000円としても決して高くはないと思います。円安の影響もありますが、ラーメンが高級化していくことで、外国人からお金が取れるという可能性があります。ラーメンだけではないかもしれませんが、こうした動きが進んでいると思います。

二極化の進行

 こうした動きが長く続いて、高級路線のラーメンがどんどん高くなり、増えていくと、どうなっていくでしょうか。
 新しく参入する店は高級路線ばかりになる一方、安価なラーメンは安さがより重要になり、チェーン店にはどこも対抗できないような状況になっていくのではないかと思っています。

二極化の進行と寿司屋の例

 寿司屋が似た歴史を歩んできたように思います。寿司というものは元々大衆的な食べ物でした。江戸時代は比較的身分の低い人たちも食べていた食べ物です。しかし、いつの間にか高級路線の寿司屋がたくさん出てきて、徐々に安価な寿司屋とに二極化され、最終的に安い寿司屋は回転寿司チェーンばかりになりました。今では安価な寿司屋といえば回転寿司チェーンがほとんどになっています。

二極化の進行と食文化の未来

 これは食文化として良くない方向ではないかと私は思っています。お寿司の場合で言うと、私は高級寿司店というのはほとんど行った記憶がありません。子供の頃、バブルの崩壊で父親が勤めていた会社が傾いて散々な目にあったことがあります。そうしたこともあり、高級な寿司店に行った記憶がありません。
 ご存知の通り、回転寿司と回っていないお寿司屋さんとでは、ネタが全然違います。私は回転寿司のようなところにしか行った記憶がないので、大人になってから回っていないお寿司屋さんに行って、魚の種類が色々あっても、それが美味しいのか全く想像もつかないわけです。そのため、未だに魚の種類はたくさん知りませんし、回っていないお寿司屋さんに行くと、全然知らないネタがたくさんあり困ります。
 二極化してしまうと、私のような人が増えて、日本の食文化なのに、多くの人が知らないという状況になってしまうのではないかという気がしています。

二極化の進行と食文化の保護

 日本の食文化というのは、日本の社会が一億総中流と言われる中間層の多い社会の中で育まれてきたものが多いと思います。そういう意味で、二極化していくこと、その中で高級路線の店が次々とでき、低価格の店はチェーン化していく動きが強まると、多くの日本人がこれまでのように美味しい食事を安価な値段で食べることができなくなっていくことになるかもしれません。
 これは良くない食文化を守るために、高級路線で売るべきではないとか、そういうことが言いたいわけではありません。店としては儲けなければいけませんし、こうした高級路線で儲けるチャンスがあるわけですから、やらない手はないでしょう。ビジネスですから、これは当然のことです。
 回転寿司チェーンがどんどん展開され、私のように回転寿司しか知らない大人が出来上がるのには数十年かかります。回転寿司が本格的に増え始めたのは1970年代の後半あたりと言われています。つまり、40年以上かかり今の状況になっています。今の時代はもう少し変化が早いかもしれませんが、そこまで先を見据えて何かをするというのはなかなか難しいでしょう。

食文化の未来

 ラーメンを始めとした高級路線に出る店が増えている分野においては、過去に寿司業界で起こったような変化がじわじわと進んでいくのではないかと私は思っています。お金持ちの人たちにとっては、ラーメンと言えばフカヒレやアワビなどの高級食材が入っているのが当たり前、一方で、庶民が食べるラーメンは煮卵とチャーシューしか入っていないという状況になってしまうかもしれません。そんな時代がやってきたら嫌だと思うのは私だけではないでしょう。

思い出

 昔、社会人になったばかりの頃、営業していた頃のお客さんで、回転寿司が嫌いなおじいさんがいました。回転寿司のことを常にボロクソに言っていて、「そんなに言わなくても」「回転寿司も美味しいのに」と思っていました。しかし、将来、ラーメン屋が高級店と安価なチェーン店だけになったら、私もこのおじいさんと同じようなことを言っているかもしれません。
 最後に、余談ですが、社会人になって少し高級なレストランに行った時のことを記載します。金融機関で働いていると、昔は接待などもよくありましたし、高級なお店に行くこともありました。ただ、私はそうした高級なところに行くのが苦手でした。食べ慣れていないため、全然味が分からないのです。子供の時からそういう高級なものを普通に食べてきた人たちは、食材や味、様々なことにとても詳しいのです。別にその人たちが悪いわけではないですが、少し寂しかったのを覚えています。

希望

 皆が一緒に同じものを、楽しく食べられる社会が続いてほしいと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?