見出し画像

ブラックロックのAladdinと資産運用会社のシステムの話

 モハPチャンネルのチャンネル登録様が20万人を達成し、noteでは特別企画として記事のリクエストをお受けしました。ご質問・ご提案いただきありがとうございました。

 noteは「おもわず誰かに話したくなる。サクッと読める」をテーマにTeamモハPが作成しています。が、この記事はモハPが作成しました。今後も協力し、noteを通じてより皆様のお役に立ちたいと思っています。これからもよろしくお願いいたします(TeamモハP)。

 ブラックロックのAladdin(Asset, Liability, Debt, and Derivative Investment Network)について、ご質問をいただきました。

出所)https://www.blackrock.com/aladdin

 8月に大きな株価下落が起こった際に、機関投資家がこのAladdinを使って適切にアセットアロケーションを行って収益を上げたという記事があり、こうした資産運用会社などが提供するツールの優位性や使用経験について知りたいというリクエストにお応えしたいと思います。

ブラックロックのAladdin

 最近、ブラックロックのAladdinというシステムのことを、業界で聞く機会が増えてきています。このAladdinを導入したという機関投資家の話やこれを活用して適切に資産運用ができたという記事もあります。また、メガバンクでも、このAladdinを活用した資産運用サービスを、国内投資家に提供するというサービスを開始しています。
 こんな話を聞くと、Aladdinを使えば、高度な運用ができるようになるのではないか?Aladdinを使わないと、他の投資家に出し抜かれるのではないか?そんな風に感じてしまうかもしれません。
 しかし、そう思ってしまうと、ブラックロックの思う壺。こうしたシステムは、決して万能なものではありませんし、使えば誰でも適切な資産運用が可能というものではありません。

機関投資家とシステム

 ちなみに、私はAladdinというシステムは、実際に使ったことはありません。こうしたシステムを提供している会社はブラックロックだけではなくて、機関投資家の仕事をするうえで、私はそれ以外のシステムを使っていました。
 実際、いろんなシステムがあって、会社によってその特徴が異なっています。用途に合わせて、場合によっては複数社、契約している機関投資家もあります。そして、最近は、資産運用もデジタル化がすすむなかで、こうしたシステムを社内で開発することもあって、ファンドマネージャーなどの資産運用の仕事につく場合に、デジタルリテラシーが求められるようになってきています。ですので、Aladdinついて解説するというよりは、資産運用関係のシステムについての一般論についてお話しします。

人間とシステム

 先程も申し上げましたが、Aladdinなどのシステムは、万能ではありません。Aladdinさえ導入すれば、誰でも上手く運用できるということは決してありません。自律型学習AIのようなものでも、全てAIにまかせて、AIが勝手に導いた方法を、わけもわからず実行して、責任だけ人間が追うなんて言うことは、現実的ではありません。ですので、システムは補助的なツールであって、最終的な意思決定は人間がするしかありません。
 そのなかで、システムが導いた選択肢というのが、どういう意味をもつのか、システムがなにを考えて、どのような計算を行うのか、人間はある程度理解していなければ、それを信じて使うことは難しいと言えます。ですので、高度なシステムを使うには、それを使う人間も、高度にならなければあまり意味がありません。

スマートフォンの例とシステム

 よくスマートフォンがどんどん高性能になっていくなかで、その機能の10%も使っていないという人もいると思います。いくら最新の高性能のスマートフォンに買い替えても、それを使いこなせなかったら、使い方がわからなかったら、持っていてもあまり意味はありません。最新機種の10%の機能しか使っていない人がいたら、わざわざ新しい機種を高いお金を払って買う必要はなく、型落ちした安い機種でも良かったということになるでしょう。
 金融システムも、これと似たようなもので、システムが高度化すると、それを使う人間も高度化する必要があります。

資産運用のシステム

 そんな資産運用のシステムというのは、ブラックロックのAladdinだけではなくて、多くの会社がいろいろなものを提供していて、どこが一番優れているかということは、簡単には決められないでしょう。それぞれの会社が、特色のあるシステムを提供していて、利用する方は、ニーズにあったものを選択していく必要があります。

システムの特徴

 どのような会社が、どのようなシステムを提供しているかというと、今、機関投資家が一番よく使っているのは、ブルームバーグが提供するシステムでしょう。ブルームバーグは、金融商品の時価を提供したり、記者もいて記事を書いていたりもしますが、独自システムでポートフォリオを管理するツールなども提供しています。
 
日本の会社が提供するシステムだと、昔からあるのは野村総合研究所NRIが提供するシステム。それから、機関投資家でもそれぞれ微妙にニーズが違う中で、例えば保険会社などは、保険経理に対応した資産、負債の管理システムを、大手生保子会社が提供していたりもします。金融システム専門のベンチャーで、将来のシミュレーションなどに優位性のあるシステムを提供している会社もあります。
 そうしたなかで、Aladdinは、ブラックロックが世界一の資産運用会社、ETFの会社ということで、ファンドの過去のトラックレコード、ETFに関するデータなどが豊富なことから、アセットアロケーションのシミュレーションなどに強みを有しているのかもしれません。

ツールの進歩と求められる能力の変化

 結局のところ、それぞれのシステムが特徴を有しているなか、どれを使うかは、その投資家次第です。こうしたシステムなどのツールがどんどん進歩するなかで、それを使う能力も高めていく必要な時代になってきています。
 資産運用の業界では、いずれアナリストもファンドマネジャーも、AIに置き換わるのではないかと言われたりしますが、実際、変化はすでに起こっていて、それらがAIに置き換わるのではなくて、運用担当者がそうしたシステムを使える能力がどんどん必要になってきています。
 以上、ブラックロックのAladdinというシステムについてのご質問にお答えしました。


ご案内(YouTube、ニコニコch)

サイトマップ(時系列)はこちら

いいなと思ったら応援しよう!