分類別古単no.29:その他の敬語
29■その他の敬語
受験生のための単語リストです。
敬語に関しては、別に【必記憶敬語】【参るに関連する語】を設けた。敬語は挙げればきりがない。例えば、のたまふ・おぼす・ごらんず・おほとのごもるなどの語は、さほど意識しなくても定着する。ここでは、少し微妙なものをピックアップしておきたい。
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■次の語の意味をA→Bで確認!
A 単語リスト
1・そうす・けいす
2・あそばす
3・います・いますがり(いまそがり)
4・めす
5・きこしめす
B 語義と語感
1・そうす・けいす
=「言ふ」の謙譲語・申し上げる
■→ともに「言ふ」の謙譲語だが、奏すは天皇・上皇に申し上げることを表し、啓すは皇后・中宮・皇太子に申し上げることを意味している。絶対敬語と言われる。言う対象が明確なので人物の判定に役立つ。ただ、天皇や中宮は「言う」主体ではなく「言われる」客体であることを誤解しない。訳は「申し上げる」でよいが、「奏上する・啓上する」とすれば丁寧であろう。
2・あそばす
①和歌・演奏などをなさる
②「す」の尊敬語
■メモ→➀の意味があることに注意したい。「遊ぶ:詩歌管弦の遊び」+尊敬「す」の一語化。また■つかうまつるなどにも「笛を吹く」「和歌を詠む」などの意味に限定的に使われるケースも多い。文脈に注意。
3・います・いますがり(いまそがり)
①「あり・行く・来」の尊敬語
②尊敬の補助動詞
■メモ→基本的に「おはす」と同じ用法
4・めす
①「呼ぶ」の尊敬語
②「食ふ・飲む・着る」の尊敬語
③尊敬の補助動詞
■→②は現在でも「召し上がる・着物をお召しになる」などと使う。③は「思し召す・聞し召す・しろしめす」など尊敬の動詞の下につき敬意を強める。
5・聞こしめす
①「聞く」の尊敬語
②「飲む・食ふ」の尊敬語
③「治む」の尊敬語
■→「きこゆ・きこえさす」の謙譲と謝りやすく、その点、注意が必要。
■例文で演習!
C 例文
あはれなりつること、忍びやかにそうす。
よきにそうしたまへ、けいしたまへ。
和歌などこそ、いとをかしくあそばししか。
御琵琶あそばされけるところに、
行く春丹波にいまさば、
かの大将は、才もかしこくいますかり。
宇治の里人をめして、
杯とりたまひて、あまたたび召し、
笑ひののしるを、上にもきこしめして、わたり おはしましたり。
きたなき所の物きこしめしたれば、御心地悪しからむものぞ。
わご大君のきこしめす天の下に国はしも多にあれども
D 例文の解釈
しみじみと感じたことを、そっと天皇に申し上げる。
よろしく天皇に申し上げてください、中宮に申し上げてください。
和歌などをたいそうおもしろくお詠みになった。
琵琶をお弾きになっていらっしゃったところに、
晩春に丹波にいらっしゃったなら、
その大将は、学識もすぐれていらっしゃる。
宇治の住人をお呼びになって、
杯をお取りになって何杯も召し上がり、
大声で笑い騒ぐのを帝もお聞きになっておいでになった。
けがれた所の物を召し上がったので、ご気分が悪いのでしょう。
我が大君がお治めになる天下に国はたくさんあるが→文法:し=強意副助詞
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