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分類別古単no.27:必記憶敬語

27■必記憶敬語

受験生のための単語リストです。
ここでは「必ず覚えたい敬語」を集めました。
敬語の覚えにくさは一つの語に違う品詞(動詞・補助動詞)、異なる敬語の種類(尊敬・謙譲・丁寧)が混在しているところにあります。大変ですが、ここに挙げた7語(11語)を覚えてしまうと、敬語に関する抵抗感はぐっと低くなります。
こうして並べてみたときに「言う・言われる」「与える・与えられる」という主従の関係に主だった敬語が多いことを意識してみるのも記憶の一助となるかもしれません。
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■次の語の意味をA→Bで確認!

A 単語リスト

1・給ふ
2・おはす・おはします
3・申す・聞こゆ・聞こえさす
4・奉る
5・まゐる
6・参らす
7・侍り・候ふ

B 語義と語感

1・給ふ
①「与ふ」の尊敬語
②尊敬の補助動詞
③謙譲の補助動詞
■→③「たまふ」は、A:下二段活用・B:手紙文・会話文に用いられる・C:見る、聞く、知る、思ふなどの知覚動詞などにつく・D:聞き手への敬意を表すなどの特徴がある。■→カテゴリ【与える・いただく】参照

2・おはす・おはします
①「あり・行く・来」の尊敬語
②尊敬の補助動詞
■→尊敬表現で訳せばいいが、おはすは(動詞・補助動詞とも)「いらっしゃる」と訳せばいいケースが多い。動詞の三つも「先生が(ここに・こちらへ・あちらへ)いらっしゃる」と考えればよい。おはしますの「ます」は尊敬の補助動詞。さらに高い敬意を示す。

3・申す・聞こゆ・聞こえさす
①「言ふ」の謙譲語
②謙譲の補助動詞
■→聞こゆには別に聞こえる、名詞化したきこえには評判であるの意味がある。聞こゆ(耳に入る)が、主客転化し、貴人の「お耳に入れる=申し上げる」という謙譲のニュアンスを持つようになり、さらに「さす=使役」がつき「直接ではなく誰かを通して申し上げる」というより敬意の高い形をとるようになり、それが聞こえさすと一語化。ただし当然、「聞こえ・させ(尊敬)たまふ」の場合もあるので文脈をよく読む必要がある。また、聞こゆは主に女性が用い、申すは男性が公的な場で用いた。

4・奉る
①「与ふ」の謙譲語
②謙譲の補助動詞
③「着る・飲む・食う・乗る」の尊敬語
■→基本的には謙譲だが、貴人に「差し上げる」行為が、貴人が「する」主体に転化し、尊敬の意味に転用されていく。参るも同じ。尊敬語として用いられる動詞を「衣食住」とひっかけて「衣食乗」と覚えるといいとよく言われるが。

5・まゐる
①「行く・(来)」の謙譲語(参上する)
②「与ふ」の謙譲語(差し上げる)
③「す」の謙譲語(~して差し上げる)
④「飲む・食ふ」などの尊敬語
■→まゐるは多義語。時代によって変化する。覚えやすさを優先して四つに整理してみたが、文脈でよく考える。■基本的には謙譲だが、奉るの説明にも書いたように、謙譲が主体転化によって尊敬に転用される。あるいは、まゐるまかるも、あるいは申す給ふ(下二)も謙譲語から丁寧語のニュアンス(話者へのへりくだり)に傾いていったりする。■まゐるについては、まゐる・まうづ:まかる・まかづの四語をセットで覚えることが効率的。まうづまゐるに「づ」がついて、まかづまかるに「出づ」がついてできたとされる。まゐる・まうづは卑しい場所→貴い場所へ、まかる・まかづは貴い場所→卑しい場所への移動を示す。ただし、この四語は上のようなきちんとした対応ではなく、例えば、平安時代での対応関係はまゐるに対してまかづであったようだ。→【カテゴリ:参るを中心とした四語】参照

6・参らす
①「与ふ」の謙譲語
②謙譲の補助動詞
■→「参らす」は「参る」から派生した語だが、「参る」の語義をイメージしてしまうと、謙譲の補助動詞の用法が分からず文意を損ねるので、別の語として覚えたい。

7・侍り・候ふ
①「仕ふ」の謙譲語
②「あり」の丁寧語
③丁寧の補助動詞
■動詞であれば、貴人・貴所の存在が確認できれば①、なければ②である。①の意味は「美女をはべらせる」のような言い方、武士のことを「侍」と言う表現の中に残っている。■時代の変遷的には中古では「はべり」が優勢であったが、やがて「さぶらふ」が優勢に。平家物語では「はべり」女性語・「さぶらふ」男性語として使い分けられる。「さぶらふ」はやがて「さふらふ」に変化し、「~で御座候」といった候文そうろうぶんにつながっていく。■丁寧表現は基本的にはこのはべり・さぶらふのみである。


■例文で演習!

C 例文と解釈

例文が多くなるので、各語ごとに例文と解釈を示す。番号は語義の用法の番号と一致している。

1・たまふ
例文
①そこらの黄金たまひて、
②人目も今はつつみたまはず、泣きたまふ
③これをなん、身にとりてはおもて歌と思ひたまふる
③惜しげなき身なれど、すてがたく思ひたまへつることは、
解釈
①たくさんの黄金をお与えになっ(与ふ:尊敬)って
②(かぐや姫は)人目も今は遠慮なさらず、泣きなさる(尊敬補動)。
③これを、私としては代表歌だと思っております(謙譲補動)。
③惜しげのない身だが俗世を捨てて出家しがたく思っておりました(謙譲補動)わけは、

2・おはす・おはします
例文
➀くらもちの皇子おはしたり。
②世に知らず聡うかしこくおはすれば、
解釈
➀くらもちの皇子がいらっしゃった(来:尊敬)。
②この世に並ぶ者がないほど聡明で賢くていらっしゃる(尊敬補動)ので

3・申す・聞こゆ・聞こえさす
例文
➀さらば、かく申しはべらむ。
②あはれにうれしくも会ひまうしたるかな。
②光る君といふ名は、高麗人のめで聞こえて、付けたてまつりけるとぞ。
①「夜更けはべりぬ」ときこゆれど、なほ入りたまはず。
①昔物語も、参り来てきこえさせむと思うたまふれど、
ありつることのさま、語りきこえさすれば
解釈
➀それならばこのように申し上げ(言ふ:謙譲)ましょう(丁寧補動)。
②ああうれしくも会い申し上げた(謙譲補動)ことだ。
②光る君という名は高麗人が褒め申し上げ(謙譲補動)てつけもうしあげた(謙譲補動)という事だ。
①「夜が更けました(丁寧補動)」と申し上げる(言ふ:謙譲)が、やはり入りになら(尊敬補動)ない。
①昔話でも、参上し(来:謙譲)て申し上げ(言ふ:謙譲)ようと思っています(謙譲補動)が、
先ほどの様子を話し申し上げる(謙譲補動)と


4・奉る
例文
ゆかしくたまふなる物をたてまつらむ。
②かぐや姫をやしなひたてまつること二十余年になりぬ。
③御装束をもやつれたる狩の御衣をたてまつり
③壺なる御薬たてまつれ
ことごとしからぬ御車にたてまつりて、
解釈
ほしいと思いなさる(尊敬補動)と聞いている物を差し上げ(与ふ:謙譲)よう。→文法:なる=伝聞
②かぐや姫を育て申し上げる(謙譲補動)ことが二十年余りになった。
③ご衣装も粗末な狩用のお着物をお召しになり(着る:尊敬)
③壺にあるお薬をお飲みなさい(飲む:尊敬)→文法:なる=存在
仰々しくないお車にお乗りになって(乗る:尊敬)

5・参る
例文
①中納言まゐりたまひて、御扇奉らせたまふに、
②親王に馬頭、大御酒まゐる
③雪のいと高う降りたるを、例ならず御格子まゐりて、
④粥など少しまゐりて、臥したまひぬ。
解釈
①中納言が参上(来:謙譲)なさって(尊敬補動)、御扇を差し上げ(与ふ:謙譲)なさる(尊敬助動+尊敬補動)ときに、
②親王に馬頭が、大御酒を差し上げる(与ふ:謙譲)。
③雪がたいそう高く降り積もっているのに、いつになく御格子をお下ろし申し上げて(す:謙譲)
④お粥などを少し召し上がって(食ふ:尊敬)、横になりなさった(尊敬補動)。

6・参らす
例文
①紫式部を召して、「何をかまゐらすべき」とおほせられければ、
②かくだに思ひまゐらするかしこし
解釈
➀(中宮が)紫式部をお呼びになって(呼ぶ:尊敬)「何を差し上げる(与ふ:謙譲)のがよいか」とおっしゃった(言ふ:尊敬+尊敬助動)ところ、
②このようにさえ思い申し上げる(謙譲補動)のも畏れ多いことだ。→文法:だに=類推

7・侍り・候ふ
例文
➀女御・更衣あまたさぶらひたまひける中に、
➀「誰誰かはべる」と問ふこそをかしけれ
②「物語の多くさぶらふなる、あるかぎり見せたまへ
②いかなる所にかこの木はさぶらひけむ。
③さらば、かく申しはべらむ。
③かの白く咲けるをなん、夕顔と申しはべる

解釈
➀女御や更衣がたくさんお仕え申し上げ(仕ふ:謙譲)なさっていた(尊敬補動)中に、
➀「(天皇のおそばに)誰と誰がお仕え申し上げる(仕ふ:謙譲)のか」と尋ねるのもおもしろい
②物語がたくさんあるときいています(あり:丁寧)のを、あるだけ全部見せください(尊敬補動)。→文法:なる=伝聞
②どのような所にこの木はありました(あり:丁寧)のでしょうか。
③それならばこのように申し上げ(言ふ:謙譲)ましょう(丁寧補動)。
③あの白く咲いているのを夕顔と申し(言ふ:謙譲)ます(丁寧補動)。


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