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分類別古単no.30:与える・いただく

30■与える・いただく

受験生のための単語リストです。
ここでは「与える・いただく」に関係する語を採り上げてみました。
全体の50音索引はこちらへ

■次の語の意味をA→Bで確認!

A 単語リスト

1・たまふ
2・たぶ・たうぶ
3・たまはす
4・たまはる
5・かづく

B 語義と語感

敬語が例えば、自然に対する畏怖と、自然への贈与と返礼の感覚が人間に転化されていったのだと考えれば、畏怖を抱く者との「授受」関係が敬語の基本にあり、「奉る」などの謙譲語も含めて「与える・いただく・差し上げる」(与ふの尊敬語・受く、与ふの謙譲語)といった言葉が多く登場するのは自然なことかもしれない(これは僕の勝手な想像に過ぎない)という理解も敬語の煩雑さを整理してくれる考え方になるかもしれないと思う。

1・たまふ
①「与ふ」の尊敬語
②尊敬の補助動詞
③謙譲の補助動詞
■→たまふは、「魂(タマ)合(アヒ)の約か。目下の者の求める心と、目上の者の与えようという心とが合って、目上の者が目下の者へものを与える意が原義。転じて、目上の者の好意に対する目下の者の感謝・敬意を表す」と岩波国語辞典にある。前者が➀「与ふ」の尊敬語、後者が②尊敬の補助動詞に相当する。そこから丁寧的な表現(謙遜)のニュアンスが加えられてくる。これが③下二(謙譲)の「たまふ」であろう。
■下二(謙譲)の「たまふ」の特徴は、A:下二段活用・B:手紙文・会話文に用いられる・C:知覚動詞(見る・聞く・知る・思ふ)につく・D:聞き手への敬意を表すの四点。話し手が自分のことばの中の自分の行為を下げることによって聞き手への敬意を表す。へりくだりを意識すれば「存ずる・拝○する」などの意味を取り、話し手への敬意を意識すれば「~です・ます」という丁寧表現の訳をする。後者でよいと思う。

2・たぶ・たうぶ
①「与ふ」の尊敬語
②尊敬の補助動詞
■→たぶ・たうぶは、基本的にたまふと同じ。たまふの音便形がたうぶ、その縮まった形がたぶである。

3・たまはす
=「与ふ」の尊敬語
■→尊敬「給ふ」+尊敬「す」の一語化したもの。「給ふ」より敬意が高い。たまはるとの混同を避けたい。

4・たまはる
① 「受く」の謙譲語
②「与ふ」の尊敬語
■→基本は、たまふ・たまはすは上位者が与える、たまはるは下位者がいただくである。鎌倉以降、たまふとの混同が起こり、上位者が与える意も表すようになった。混同しやすい。

5・かづく
➀頭にかぶる(被く)
②褒美として与える(四段)
③褒美としていただく(下二段)
④水に潜る(潜く)
■→かづくは、上位者が与える・下位者がいただくの両方の用法を持っている。④水に潜るから、➀頭にかぶるの意味が派生し、そのように③褒美をいただく、そして②与えることをも意味するようになったようだ。水に潜るの意を答える入試問題を最近見かけることが多くなった気がする。

■例文で演習!

C 例文

そこらの黄金たまひて、
②これをなん、身にとりてはおもて歌と思ひたまふる
③家に少し残りたりける物ども、たびつ。
④なほ、うれしと思ひたぶべきもの奉りたべ
➄かの奉る不死の薬壺に、文具して、御使ひにたまはす
➅大将も物かづき、忠岑も禄たまはりなどしけり。
⑦かたはらなる足鼎を取りて頭にかづきたれば、
⑧御衣脱ぎてかづけたまひつ。
かづけども、浪の中にはさぐられで

D 例文の解釈

たくさんの黄金をお与えになって
②これを、私としては代表歌だと思っています
③家に少し残った物などをお与えになった。
④やはり、(相手が)うれしいと思いなさるはずの物を差し上げなされ
➄あの献上した不死の薬の壺に手紙を添えて、帝はお使いにお与えになる
➅大将も物をいただき、忠岑もほうびをいただくなどした。
⑦そばにある足鼎を取って頭にかぶったところ
⑧お召し物を脱いで褒美として与えなさった。
潜ったけれど、浪の中に探ることはできないで

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