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名もなきものの、正体は。

「新種発見」というと、それまで見つかっていなかった動物や植物などの話で、基本的にワクワクするものだ。現在UMAとして扱われているものも、そのうち存在が解明されたりするかもしれない。
しかしその一方であんまりワクワクするわけではないのだが、いつの間にか「名前がついた」ものがある。病気だ。

いろんなことに過剰反応してしまう敏感な人は「HSP」
家では普通だが会社に行くと元気がなくなる「新型うつ病」
その他いろいろと「昔だったら病気と扱われていなかった」ものに名前がついた。
名前がつくということは、「認識できた」ということでもある。たとえばHSPなどは昔はビビりやすいとか気にしすぎとか性格上のものとして済まされていただろう。場数を踏んでないからだとか、度胸を付ければいいんだとかではなくて、先天的なものですよ、という認識ができることでようやく対応が見えてくる。ただまぁ残念ながら、ちゃんとした対応ができるのはそれなりの余裕が必要だ。例えば人数が多い職場であれば、一人「HSPという診断がされています」という人がいたとしても「お客様対応の部署だとダメージを受けやすいから内部事務に回ってもらう」といった対応がとれたりする。これが人の少ない零細企業だと「そんなこと言われてもよそに回す余裕がない」となってしまうだろう。
もちろん職場の人の理解度などにもよるので一概には言えないが、現実として余裕がない場所で「他の人とは違う扱いをするけど待遇は同じ」みたいなことはなかなかできない。

1年ほど前に、会社に新人が入ったことがあった。非常に若く、意外と骨のある受け答えをする、と面接担当者が評していたのだが、「面接に遅刻」「初日に遅刻」「研修に遅刻」というトリプルコンボをかましてきたことで社内が騒然とした。というか「面接に遅刻」の時点では「まあ若いしあまり馴染みのない場所だとそういうこともあるよね」という程度に捉えられていたが、「初日に遅刻」の段階で「え?前に来た時に確認しなかったの?」と怪しまれた。ちなみにその日に自分が社内のことなどを軽く教えたのだが、その際に「スマホでルート検索とかしたら何時のバスで間に合うとか出るよね?」と説明しつつ会社のPCでグーグルマップを開いたら「えっ、こんな機能がこの世にあるの?」みたいな反応だったので「マジか」となった。もちろんスマホはバリバリに持っている、というか初日でも就業時間中にいじりまくっていたし。面接担当者は「なかなか大物」と言っていたがさすがに研修はマズイと思ったのか「研修には遅れないように」と釘を刺していた。
で、研修当日は釘があっさり抜けたのか普通に「寝坊しました」と遅刻。

「慣れればさすがに変わるのではないか」と一部に楽観視されていたが、自分を含むほかの一部では「コイツはヤバい」と早々に危険視していた。その後やっぱりというかなんというか伝説的なエピソードを量産。というか体調がとか怪我が痛むとかでやたらと休みがちでもあった。その怪我もプライベートでケンカに巻き込まれたとかで、何と言っていいやらわからない感じ。

これに関連した話で印象に残っているエピソードがある。手を負傷していたので作業手伝いができず、一緒に連れて出ていた別の社員が「まあ手が痛むだろうから見学しておけばいいよ」と言ったら、急にやる気を見せて「いや、できます!手伝わせてください!」と手伝いを始め、翌日に「手が痛む」と休んだ時にはあまりにフリとオチがしっかりしすぎていてネタを疑ったほどだ。

と、こういう状況でふと思ったのが「これは何らかの疾病ではないか」ということだ。ADHDなのか何なのか自分も知見がないので詳しくわからないが、朝起きられないとか忘れ物が異様に多いとかのあたりでちょっと疑いを持った。もしそれならそれで、そういう証明を出してもらえばそれなりの対応ができるのでは?と考えたのである。上司に進言すると同じ認識を持っていたようで、本人と面談をしていた。

まあ結果としては「病気だと疑うなんて失礼な、と親が怒ってました」という回答であり、じゃあ単純に何回も遅刻したり休んだりするだけの新人になるやんという話になってしまった。最終的には2日連続で無断欠勤したうえ3日目に欠勤に一切触れず「今日は遅れます」と連絡してきたことで上司ブチギレ、退職勧告になった。面白かったのはそこから急に1週間くらい遅刻ナシで来たことで、じゃあ最初からできたんじゃないかと逆にツッコミを呼んだことである。まあやっぱり途中で戻って辞職していったが…。

結局これが疾病だったのかどうかわからないのだが、もし疾病だと最初から認識できていれば周囲の反応も違ったであろう。まあ零細企業にいろいろケアするような余裕はなかっただろうが…。

特殊な例の話ではあったが何かを認識できているかどうかでかなり対応は変わってしまうので、「正しい認識」は必要だなあと思ったのであった。

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