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都落ちディレクターの「地方でデカい顔」問題

突然だが、コンプラ全盛の世の中で、ひっそりと闇に紛れて生きている存在がいる。それが「地方バラエティ」だ。
先日、ABEMAのしくじり先生で鬼越トマホークによる授業が行われていた。番組の軸としては「大卒芸人により高卒芸人のポジションが脅かされる」という内容であり、それはそれで大変面白かった。鬼越トマホークの得意分野である「偏見イジリ」が遺憾なく発揮された内容であった。
その後半に出てきた話で、「地方の鬼トガリディレクターは高卒芸人が大好き」というのがあった。派手に痛がったり、苦しんだりするのを見てガハガハ笑っているとか、水曜日のダウンタウンやゴッドタンを意識した企画をやろうとするが形だけ真似ていてクオリティが低いとか、罰ゲームなどでも経験が少ないから加減を知らないとか。鬼越トマホークだけでなく経験がある芸人たちが口々にエピソードを重ねていき、もちろん笑いにはなっていたのだがネタ的には笑えないものもあった。飛び降りた先のマットがちゃんとしたものではなく薄いマットを寄せ集めて作った粗末な出来で、落ちた瞬間マットが四散した、とか結構シャレにならない。大事になっていないから笑いのネタにできているが、それで重傷や死亡もあり得る話だと思ったのだ。
鬼越トマホーク曰く、そういった番組を仕切っているディレクターは「東京で大きい番組に関わっていたと言っているが、実際は端の端のほうでやってただけ」だったという。それに対しても現場にいた他の芸人からの共感が止まらなかった。「なぜかみんな汚い茶髪」とか「態度がデカい」とか、みんな経験があるんだなぁという感じ。さすがに今後の仕事的にマズイと思ったのか「お笑いに熱い人が多い」みたいなフォローも入っていたが、だいぶ苦しい感じだった。

いわゆる「東京でやってたけどうまくいかず地方に流れた」人たちは一定数いるのだろう。ただ問題なのは地方に流れただけでなく、「東京ではすごかったんだぞという雰囲気を出して無茶をやればいいと思っている」人の存在。そう思ってみると他の番組でも似たような話があった。

アメトーーク!で「中堅ガムシャラ芸人」をやっていた時、基本的にはどれだけ体当たりの現場をこなしてきたか、というのをパンサー尾形、ジャングルポケット斉藤、太田などが披露していたのだが、一つ結構引いてしまう話があった。地方バラエティで、「蛇に咬まれたらポイント獲得」みたいな設定がしてあり、ホントに噛まれて鼻に穴が開いた、みたいな話である。本気で痛がっているさまをみてディレクターが大笑いしていた、というのもなんだかしくじり先生の話に通じるものがある。もちろん事故のないように確認として事前に自分が咬まれている、なんてこともないだろう。

以前見たゴッドタンでは、芸人のみなみかわに女性タレントがいろいろ相談する回があったのだが、ここでも似たような話が出てきた。粗いドッキリを仕掛けた後で「水曜日のダウンタウンと比べて、どうでしたか?」と満面の笑みで聞いてくる地方スタッフがいたという。もちろんそこで「水曜日のダウンタウンだったらこんな雑な仕掛けやんねーよ!」みたいなことは言わずにうまくやり過ごすようだが、これもまた地方バラエティの闇の一つかもしれない。そもそも女性タレントからの悩みも「商品紹介などで何パターンやってもOKが出ない時どうしたらいいか」みたいな内容だったのだが、これにみなみかわが「2秒無視する」と答えていて非常に的確だった。そういうどうでもいいところにこだわるような人は実は自信もないので強く出られると不安になる、ということだろう。地方の話ではないが、「有能なディレクターというのは3割しかいない」とも言っておりこれも実感のあるコメントだな~と感じた。そりゃ佐久間宣行にばっかり仕事がいくわけだよ。

かなり昔の話だが、自分も広告の打ち合わせで「昔は東京でやっていたベテランプロデューサー」みたいな人と話したことがある。ま~これが態度がデカいのなんの、ターゲットやら内容やらも決めつけだらけで、お客さんのことを「あいつらはこういう風にしとけば飛びつくから」みたいに完全に下に見ている感じで、めちゃくちゃイヤな空気が漂ったことを未だに覚えている。

しかしテレビもコンプラの嵐だというのに、なんで地方ではこういうタイプの人間がまだ生き残っていられるのか。なんで「こんなことやらせていいのか」みたいなクレームが出ないのか。
まあこれを言ってしまうと身も蓋もないが、「見てる人が少ないから」に他ならない。キー局のものは注目されてるから余計なクレームも湧いてくるのである。あと、結局地方って「東京」の圧力に弱い。「東京じゃあこうだ、地方は遅れている」と言われれば「そういうもんなのか」と思ってしまう。もちろん地方に有能な人がいないわけではなく、「水曜どうでしょう」のような成功例もある。余談だが、あの後で「疑似水曜どうでしょう」みたいなノリのテロップが流行ったなあ。とりあえずヒットしたものをパクってどうにかする流れがある。まあこれはキー局でもそうだが。

しかし今後は若い世代に交代して、「昭和の老害」みたいに淘汰されていくのだろうか。それならそれでいいのだが。

てな原稿を書いていたら、ちょうど佐久間宣行のチャンネルが更新されていたのだが、「ラランド・サーヤがいろんな意味で引いちゃった芸能人ランキング」の中で、業界スタッフに対して舌鋒鋭く語っていた。部下にキレないと公言している温厚な佐久間宣行も思うところがあるらしく、珍しく徹底的にこき下ろしていた。まあこれは地方ディレクターのことではないが、考えの浅いスタッフというのはどこにでもいるのだろう。

ただ、よくよく考えたら業界スタッフの話なので「芸能人」ではないな。

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