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いかにして私はコピーライターを挫折したか。 第15話 受賞編

突然だが、広告制作者は、「面白い広告」が作れるチャンスを常に待ちわびている。特に、お客と直接話すわけではないプロダクション側からすると、「いかに面白い仕事をやらせてくれるクライアントに当たるか」が非常に重要である。正直、面白いことを求めていない会社に対して「何か話題になることをやりましょうよ」と持ち掛けて成功した、という例はあまり聞かない。

代理店の人が説得して作りたいものを作れる方向に持っていく、ということもあるがそんな豪腕を持った人ばかりではない、というかほとんどいない。
何せ結局金を出すのはクライアントなのだから、よほどうまく話ができないと「何でお前らのやりたいことをうちの金でやるんだ」となってしまう。

以上のような点から、「面白い広告を打つことに理解があるクライアント」、ひいてはそういうクライアントを担当している代理店スタッフとのパイプが重要となるのである。某大手代理店でそういう人がいて、いくつか自由にできるタイプの仕事を振ってもらっていた。
ここまでが前振りである。長いな。

ある時「京都の大学の広告を地方でも打ちたいので提案してくれないか」との話があった。大学、ということでターゲットは当然高校生。
「尖った表現は高齢者層にはわかりにくい」とか「文字を大きく入れないと読めない」といった心配がない。しかも、媒体は新聞突き出し広告とラジオが予定されているという。
新聞突き出し広告とは、テレビ欄にある小さい欄(縦8cm、横6cmほど)に掲出するものであり、小さい割に目立つ場所である。ここを「コピーメインで行こう」となったので気合が入った。ユニークな学科がいっぱいあるので、それに対して興味を引かせるようなコピーを掲載するというスタイルである。

さらに、高校生と言えばラジオを聴いている率も高いだろう、ということでラジオCMの実施も決定。こちらは京都ということを意識させつつ最終的に大学名に落とし込んでいくという流れで決まった。こちらも実際の仕事としてはほとんど初めてだったが、何とか10案ほど考えて提出。そのうち4案ほどが気に入られ実際に制作されることになった。

上記のラジオCMのうち一つに、「京都弁講座と見せかけて最後に大学の紹介をする」というタイプのものがあったのだが、これをディレクターの人が気に入り、「京都の風景映像だけでいけるからテレビCMも作りたい」という話になった。

広告自体はありがたいことに好評で、大学志望者もかなり増えたようだった。しかも、地方の広告賞をテレビCMが受賞したのだ。代理店の人からは「スタッフリストにかわさき君の名前も入れるようにするから」と言われ思わず「ありがとうございます!」と答えたものの、よく考えたらベースはラジオCMと全く同じなのに何でオマケっぽい扱いなのか…?この場合プランナーは自分になるんじゃないのか?。とちょっと思ってしまったのも事実だ。まあ言わなかったけど。

余談だが、新聞広告のほうも地方新聞上で取り上げられる(新聞広告特集のようなページ)など好評で、「これは初めてTCCに応募できる作品ができたかもしれない!」と思って送ったのだがかすりもしなかった。

あとこのへんで結婚した。

次回、焦燥編に続く。


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