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ハードルを上げるか下げるか無視するか

公募への応募作に限ったことではないのだが、さらっと考えたもので「これだ!」といきなりド正解が出てくることはかなり難しい。

いろんなクリエイターの発想法、みたいな本を見ても「こうすればすぐいいアイデアが浮かぶ」みたいなものはなく、普段からいかに悩んでやってるか、ということを書いている人も多かった。
近道なんか、なかったぜ(by 秋山晶)というやつだ。

よく「一回寝かせる」なんてのを聞く。昼寝をさせておかないと夜ぐずって大変だから…ではなくてアイデアを。だいたい考えついた時というのは疲れてたり興奮していたりして正常な判断が下せないことも多い。少し落ち着いてから見たとしても良いと思えるアイデアかどうか、というのは結構重要だ。

自分が昔広告の仕事をやっていた時というのは、だいたいこの部分が欠けていた。何故かというとギリギリまで考えているから寝かせるような時間がないのである。ギリギリまで考えないと出てこないのがそもそも問題だが、まあとにかく「考えて、寝かせて、判断する」というステップを踏まずに「考えて、考えて、タイムアップがくる」という状態だった。これは消耗する。

それはともかく。
コピーにしろアイデアにしろ、考えついたあとで、「これは本当にいいのか?」「どういう目で見られるのか?」と、優れた人はちゃんとジャッジしている。慣れてくると考えながら同時にジャッジしているので、アイデアが磨かれる速度も上がるのだ。言ってしまえば、このジャッジのハードルをどこに設けるか、というのが質に直結する。たまに「考えすぎて余計なところまで手を加えたがためにアイデア自体がしぼむ」ということもあるが、圧倒的多数なのはやはり「考えが足りなかったために質が上がらなかった」というパターンである。

「Aの面から見てもBの面から見ても大丈夫だから行ける!」と思ったものがCの面を考えてなくてボツになる、みたいな話はよくある。コピーは書くよりも選ぶ方が難しい、とも言われる理由はこのあたりだ。例えばとにかく思いつく限り100本書いたとして、そのまま相手に見せて何かが選ばれるならよいが、「おすすめのもの3本くらいに絞ってくれ」と言われると、97本を捨てる作業をしなければいけない。そうなると何か基準を持って選ぶ必要が出てくるのだ。

「Aという目的に適っているか?」「Bというユーザーの立場に立っているか?」「Cという社会情勢を考えてもふさわしいか?」と、さまざまな条件を当てはめてジャッジする。まあぶっちゃけこれがめんどくさい。公募だとこのあたりを考えなくていいのがラクだ。選ぶのは主催者側なわけだから、とりあえず思いつく限り投げっぱなしてみる、ということができる。
ただ、たまたま良いのを思いついていて受賞、というパターンもあるだろうが、やはりコンスタントに受賞する人のようなレベルだと、こういうジャッジもしっかりしているのだと思う。

「なるほど~、Aかと思わせてBという流れをこのワードに凝縮したのだな」とか、「お堅い企業姿勢をロボットに例えて親しみやすくしたのか!(こんな例はない)」とかよく見ていくとロジックをどう積み上げたのかが見えてくる。
そのへん参考にしたいんだけど、ついついネアンデルタール的な、狩猟してそのまま食卓に乗っける感じでやってしまう。ネアンデルタールがほんとにそうしてたかのかも知らないまま。

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