バンコクマダム連載コラム『タイ生活』より  第14話・・・「夫の同窓会」


もう何年も前のことになるが、夫の同窓会に家族で参加することになった。
夫が生まれ育った南タイ・ナコンシータマラート県の中学時代の同級生五人と連絡が取れ、バンコクで28年ぶりの再会らしい。
みんなが家族で参加するのかと思っていたら、我が家だけ。
夫が日本人と結婚したと知った昔の友人たちに、「それは面白いから是非家族そろって参加するように」とリクエストされたらしい。
どうやら見世物役か。
張り切っていこうッ!

会場は、バンコク郊外の洒落たガーデンレストランのカラオケルーム。
ワタシ的には、28年ぶりで積もる話も山ほどあるだろうに、なんでカラオケルームなんや?と思いながらお邪魔した。
参加した同級生は、小学校の先生、公務員をしている女性の二名と
男性は政治家、家具屋の主任、そして夫の三名の計五名。
私たちが行くと皆さんもうお揃いの様子。
・・・もう一人、同級生たちより随分若い女性がマイクを持ち一人でカラオケで歌っている。
みんなが久々の再会で懐かしい話に花を咲かせていても一人でひたすら歌い続けている。
一体この女性は何者なのだ?
・・・・と思っていたら小学校の先生をしている同級生のお隣さんでカラオケが好きだから付いてきただけ・・・の人だった。

28年前の田舎での夫の中学時代の思い出話は私には痛烈に面白かった。
その中でも特に特に心に残った話・・・

政治家になっている同級生は中学時代になんと馬で通学していたそうだ。
「ええーっ!いつの時代の話や~」と私は大笑い。
朝、学校に乗り付けた馬を木陰に繋いでおき、休み時間に世話をし、帰りにはまた馬に乗って颯爽と下校。
かっちょいい!
日本ではあり得ないなぁ・・・・。

そして、もう一つ心に残ったのが夫の話。
夫は、とても貧しい家の子供だった。
学校の制服や靴を買う出費は両親にはとても大変なことだった。
親の負担を少しでも少なくするために制服も靴も入学時にかなり大きいものを買っておいて成長とともに買い替えなくてよいようにするのだ。
特に靴に関しては、学校の行き帰りの道中は靴が傷まないように大切に手で持って裸足で歩き、着用を義務付けられている校内でのみ靴を履いていたらしい。
貧しい中で過ごした中学時代は決して楽しいことばかりではなくツラいことや悔しい思いをすることも多かったはず。
それなのに思い出話は全てが懐かしく楽しいものになっているようで私は笑いながらとても温かい気持ちになっていた。

思い出話が盛り上がり切ると、なんと!全員合唱カラオケタイム!
同級生五人がみんな立ち上がって中学生時代に大ヒットした曲を踊りながらそれぞれが当時の人気歌手になりきり絶叫状態の熱唱。
それが一曲ごとにパワーアップしていくのだ。
これはすごいっ!と、そのノリに圧倒された。

ふと隅っこを見ると、出番のなくなったカラオケ好きの女性が一人ゆっくりとお料理に舌鼓を打っていた。



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これは、タイのフリーペーパー『バンコクマダム』に2013年から連載させてもらっているコラムをちょこっと編集し、まとめておきたくて書き留めています。

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