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生成AIへの期待値

◉博報堂の調査だそうですが、AIに「期待を感じる」との回答は全体で73.7%と高い数値を示したようです。ここらへん、人工知能は人類を滅ぼす方向の存在と危険視する欧米との意識の違いとか、興味深いですね。たぶんに日本人は『鉄腕アトム』から『ドラえもん』まで、対話型の人工知能ロボットが、子供の頃から身近でしたからね。HONDAのASIMOも、ある意味でこれらのロボットを実際に作ってみたいという、童心を持った研究者の熱量が有ったわけで。

【生活者の7割が「AIに期待を感じる」と回答 将来は「自分の一部」「家族」など心理的に近しい存在への期待感が高まる】AMP

博報堂DYホールディングスは、全国の15~69歳の生活者を対象に「AIと暮らす未来の生活調査」を実施し、その結果を公表した。
(中略)
AI技術全般への期待について聞いたところ、AIに「期待を感じる」との回答は全体で73.7%、利用層では93.1%と、9割を超える結果となった。

https://ampmedia.jp/2023/12/12/ai-hakuhodody/

ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、Chat GPTのDALL・Eにテキストを投げて作ってもらった自動車の未来図だそうです。

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■奴隷を欲し、恐れる■

欧米だと、アンドロイドが登場する、初期のSF映画の傑作『メトロポリス』で、ブリギッテ・ヘルムが演じるロボット(アンドロイド)のマリアからして、人間を扇動して、反乱を企てます。暴徒となって地上の工場へ押し寄せた労働者達は、暴走して地下の居住地区を水没させてしまい、取り残された子どもたちは溺死。労働者たちはマリアを火炙りにするのですが、中から現れたのは機械の身体。ある意味で、奴隷の反乱に対する、欧米の恐怖があるのですが。これは逆説的に、奴隷を渇望する文化があるからこそ。

利用層に実際の利用用途を聞いたところ、月1回以上の利用で「翻訳作業」が1位となり、次いで「情報収集・処理・まとめ」、「エンターテイメント・暇つぶし」が続いた。
また、5位に「対話での情報検索」、11位に「アイデア出し/ブレインストーミング」、12位に「話し相手・相談」がランクインするなど、生成AIならではの利用用途も多く並んだ。

この文化が、後の『ターミネーター』でのスカイネットによる人類への反逆とか、モチーフになっています。その意味では、先行する『ブレードランナー』のレプリカントもそうですね。そもそも、マリア自体がイエス・キリストのメタファーでもあります。神と悪魔の、両面を持っているのですね。ここらへんが、アイザック・アシモフ博士のロボット三原則という形での、ロボットの行動の制限という発送にも繋がります。制限すなわち、支配です。労働への忌避と奴隷の渇望が、奴隷の反乱を恐れるという逆説パラドックスが、そこにはあります。

■AIの活用方法とは?■

これはもうひとつ、勤勉を尊ぶプロテスタントの、禁欲主義も背景にあるでしょうね。勤労は一歩間違うと、楽することを罪悪と考えてしまいます。「ゼークトの組織論」としての流布してしまった、クルト・フォン・ハンマーシュタイン=エクヴォルトの将校の4分類ですが。「利口で怠け者というのが、トップのリーダーとして仕事をする資格がある。」という指摘は重要で。利口で怠け者は、ある意味でAIを道具として使いこなす人間でしょうね。

今後AIを使って何ができると面白いと思うかを聞いたところ、全体での1位は「AIにわからないことを質問・相談する」で19.7%だった。

また、2位の「AIが自分の趣味範囲を広げてくれる」、3位の「AIの助けによって自分が苦手なことにもチャレンジできる」、7位の「AIが自分の得意な領域をさらに伸ばしてくれる」など、AIが自分の興味や能力を広げてくれることに期待する声も上位に並んだ。

AIは便利な道具です。ただし、現時点では得手不得手もあります。それをどう使うか。そういえば、昔のアンケートで、パソコンに何をやってほしいかをアメリカ人に聞いたら、風呂掃除や庭の芝刈りが上位に来たとか。やはり、欧米の文化は、どうしても奴隷のかわりが欲しいわけで。スティーブ・ジョブズがパソコンに見たクリエイティブな仕事──絵を描いたり音楽を作ったりデザインしたり──をサポートする存在ではなく、肉体労働の代わり。けっきょく、移民問題も体のいい奴隷がほしいのでしょうね。

でも、そうではない部分を考えてこそのクリエイティブ。受け身で消費するだけの人間ではなく、何かを生み出すタイプの人間には、とても役立つと思うのです。

■AIで総ルビが復活?■

自分個人としては、出版業界はあんがい、AIを活用することで、無駄な労力をかなり減らせるような。芦辺拓先生の、出版物につく漢字のルビ(振り仮名)に関する、こちらの指摘。確かに、ルビをふるのってものすごく大変なんですよね。出版社の編集者として関わった写植はもちろん、DTPでも、かなり苦労しています。でもここら辺の単純作業こそ、AIの活用で総ルビのデータ製作を自動化できれば、だいぶ楽になりそうです。そこで空いた時間を、クリエイティブに使えれば。

ルビ廃止問題でどうしようもないのは、その後まもなく「昔は漢字に全て振り仮名がふってあったので子供でも難しい本が読めた」とかみんなグチグチ言い始めて、当時風当たりのきつかった漫画も「吹き出しの文字はルビつきだから勉強になる」と弁護されたぐらい。でも一度消されたものは戻ってこない。

https://x.com/ashibetaku/status/1739270903786315892?s=20

じゃ何でそんなことをしたかというと、「ルビなんかあるのは日本語だけ。だから国際語になれない」という頭でっかちの文化人と、漢字制限で国語教育を短縮したい強欲な資本家・政治家と、ルビを廃止して手間を省きたい出版・新聞人の思惑が一致したから。漢字を廃止した諸国を笑えませんよ。

https://x.com/ashibetaku/status/1739272278079340673?s=20

AIへの「漢字に全部、ふりがなを振ってください」の命令ひとつで、10万文字からある単行本一殺のルビ……おそらくは5000文字から10000文字はある漢字のルビを、自動化できるでしょう。特にリフロー型の電子書籍と、プリント・オン・デマンド(POD)版の書籍では、デジタル化が前提ですから、割と早く対応できそうです。ただ、フィックス型の電子書籍は、inDesignにAdobeがその機能を搭載するか。Adobe自体は、AI活用に積極的ですから、期待したいです。

■奴隷ではなく相棒?■

そもそも、コンピュータ自体が、元は砲弾の軌道計算とか、暗号の解読とか、膨大な単純作業の繰り返しを、効率化するために研究・開発された部分があります。欧米の文化が欲してやまない、奴隷代わりのサポート用ロボットも、あんがい簡単にできて。自動運転や高性能ルンバみたいなもので、代替できそうです。そうやって、空いた時間を酒のんでパリピな時間として過ごすのも、自由ですが。そうではなく、クリエイティブに使いたい人はいるわけで。その点で、AIに関する捉え方として、この視点はいいですね。

次に、将来的にAIがどんな存在になってほしいか期待について聞いたところ、1位と2位は現在と同じ結果となったが、現在と将来の差分に着目すると、増加の大きさ順に「自分を強めてくれる自分の一部分」、「一緒に目標を達成する仲間・バディー・相棒」、「安心できる家族」となった。

「一緒に目標を達成する仲間・バディー・相棒」というのは、パソコンに名前を付けて愛用するようなもので。いたずらに敵対感情を持つのは、違うと思うのです。自分の仕事を手伝ってくれる、良き相棒。ただ、イニシアチブは常に自分が持っていられるという点で、有能で謙虚な仲間です。使わない手はないでしょうね。自分も数年前に鍋島雅治先生とディスカッションしてからこっち、可能性は感じていますので。ぼちぼち使っています。

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