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ラノベと読者育成と

◉X(旧Twitter)で、約7年半でライトノベル(ラノベ)の市場が半減という、ショッキングな見出しが話題に。少子高齢化で子供の数が減っていますし、読者人口は中高年に偏り、ラノベに限らず小説市場全体の縮小を憂う声は、前々からあります。業界の片隅で生きる人間としては、頭が痛い問題です。ただ、このデータ自体は、ちょっと誇張された面もあるようですが。

【若者のライトノベル離れ 約7年で市場半減のショック】カクヨム

シャレになって無いよね。実は2016年がピークでライトノベル市場が半減したそうです。

※2023年6月28日に市場額を精査した結果タイトルが若干変更になりました。ただし内容に差異はほぼありません。「6年」というタイトルが「約7年」になったことと、2020年のラノベ市場規模と2003年のラノベ市場規模額がほぼ同じということも判明しました。また半減見込み年が2024年や2025年となる場合もある事も付加で記述しましたがどのみち半減することに変わりませんし1~3年差は誤差の範囲と筆者は判断しました。さらに出版点数の推移も追加したことで推測の域は出ませんが「1人当たりのラノベ作家売上額」は確実に悲惨になったことも追記しました。

※約7年で半減せずとも違った形でバッドエンドが訪れる可能性大です。本文に追記しました。

https://kakuyomu.jp/works/16817330659071865553

ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、図書館のイラストですが、すごく雰囲気があっていいですね。

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■読者を育てる必要性■

まず、芦辺拓先生のコチラの意見に、自分は共感します。 うちはただの講座ですが、それでも、もうちょっと長いスパンで、出版文化を考えています。(期待したほどの成果は出てませんが)。異世界転生者は、初老の自分にとっても楽しめるジャンルですが。主たる読者は、中年以降だろうなと、漠然と感じます。井上陽水さんが『人生が二度あれば』を歌ったのは24歳の時ですが。内容はもっと老成しているので、驚きですが。サラリーマンの人生が、今だと30代も半ばになって、自分の40代→50代→定年の人生が見えてしまった人達に、異世界転生で無双やスローライフが受けたのか……。

実はずっと不思議だったのです。「異世界転生して人生の不遇取り返し」「または働かず冒険もせずスローライフ」「人生巻き戻して勝ち組女の人生」「寝取り」「追放」――これらに少年少女は興味を持つのかと。

https://x.com/ashibetaku/status/1710242968064733644?s=20

また、編集者が担当になって、出版業界で蓄積された知識とか経験値・編集部の編集方針が伝わる作家が限定的で、受けたモノに投稿者がイナゴのように集まる小説家になろうやカクヨムのシステムだと、長期的な育成のビジョンは生まれづらいでしょう。ブームに乗れば受けるでしょうけれど、次世代の読者向けの作家や作品作りのビジョンは、個々の作家には生まれづらいですよね。目先の利益や受けを狙ってしまうので。

編集者と編集部の機能とは色々ありますが、目先の売上とは別に、そういう長いスパンでのジャンルの持続可能性に、未来の読者育成に、尽力することもそのひとつなんですが。売り抜け刹那主義が主になれば、そんなビジョンやこころざしは、生まれません。ある出版社が利益率の悪い、幼児向けの雑誌を廃刊したら、その雑誌を入り口として 少年誌やヤングや青年誌に流入する読者が減ってしまったとか。

■今こそ短編の復権を■

ラノベ 業界の中の人の意見としては、オタクペンギン社長のポストも、興味深かったです。自分も〝創作の種〟としての小説 の可能性は、高く評価しています。しかし『小説家になろう』や『カクヨム』や『アルファポリス』をちょっと見た感想にすぎませんが、短編小説の数が足りないこと、また短編で地力を高めていく場が少ないこと、もっと言えば 投稿者の手本となるような短編小説が少ないこと、これが問題に思えます。

ラノベは界隈の中で見ていると悲観論多くなるんだけど、他のメディアをつくっているところとお話すると『原作足んねぇよ!もっと作れよ!なにしてんの!』みたいなこと言われるので、可能性はすごくある

ラノベとして売りつつメディアへの展開力を上げて、そこの利益をクリエイターに還元すればよし

https://twitter.com/NovelPengin/status/1710516022279868808?t=r-DmJNbU5E0tuxwAbTnoVw&s=19

短編を書く訓練が十分でないため、短編を連結させて長編を紡いでいく訓練が足りていないような。この問題は新井素子先生でさえも、初の雑誌連載は書き下ろし単行本を重ねた後で、先に1冊分書き、それを連載の回数分に分割すれば良いと思ってやったら、雑誌連載は毎回山場が必要で、作り方の違いに気づいたと書かれていたぐらいでしたから。もう40年近く前から、長編主義や書き下ろし主義で、雑誌という作家修業の場が減っているわけです。

漫画化やアニメ化に適した、25分の中に起承転結ある作りが、投稿者には難しいというか、経験値を積む機会が少ないのか。アニメの25分って、漫画だとだいたい40〜50ページぐらい。400字詰めの原稿用紙で漫画原作を書くと、脚本形式で40〜60枚ぐらいですかね。これが小説だと、8000文字から12000文字ぐらいでしょうか? 小説1冊が10万文字ぐらいですから、短編には筆力が必要です。

■長編主義の弊害とは■

漫画も、週刊少年誌のデビュー即連載の長編主義で、昔のような短編を10本20本と習作する機会が減っています。だから 80年代以降の漫画家は、一発屋が多いんですよね。もちろん一発当てるだけでもすごい才能なのですが、それ以前の作家が代表作を何本も持っているのに比較して、超長編の代表作が1本だけという傾向が顕著に。

ただ、少女誌や短編重視は昔からですし、雑誌には読み切り作品も多く掲載されています。エロ系は逆に、長編や長期連載がむしろ珍しく、短編主義です。なので、エロ系からメジャー誌に転向する漫画家さんには、構成力がしっかりした人が多い印象です。はっきり言いますが、週刊少年誌などの編集者は担当できる作家の数が月刊誌の編集よりはるかに少なく、作家の才能に背乗りした、短編の経験値や作品の受け幅が狭いタイプが多いです。

あとは、ちゃんと『小説として面白い』の追求が大事で、メディアミックスにするからメディア化しやすいものを!とかいうと、小説である意味がなくなって、買ってまで見ようとは思われなくなるので、ちゃんと『原作こそ至高』って言われるように創るのが大事。

https://twitter.com/NovelPengin/status/1710516960033997142?t=_vD1vWtV6NLvmULjzye6UA&s=19

本の売れ行きは長編のほうが良いのですが、いきなり10万文字の長編を構成できるのは、才能の部分がが大きいので。短編から技術を積み上げる、本好き以外が入りやすい短編を増やし、裾野を広げる努力が、不可欠かと。自分は、推理小説の神祖エドガー・アラン・ポーの短編に、小学校3年生で出会い。その短編至上主義に魅せられた人間なので。日本文学科で、近代文学専攻ですから。小説の可能性を信じています。

ここらへん、漫画のノウハウで短編小説の習作のステップを、講座で定型化できないか、思案中です。

■ライトノベルは健闘■

一方で、こんな指摘もあります。別noteでも書きましたが、小説市場自体が大幅に落ち込んでいるわけです。ライトノベルは、その中ではかなり頑張っている部類です。はっきり言えば、紙の本が好きすぎる編集者や編集部や出版社が、電子書籍化に真剣に取り組んでこなかったため、漫画が電子書籍のおかげで大幅に市場を広げているのに対し、電子小説市場は完全に出遅れているというのが現状です。これは電子雑誌市場も同じですが。

「ラノベ市場が半減した! もうラノベは終わりだ!」ってなエッセイが話題なようで。
ええと、半減した(も言い過ぎだけど)のは「文庫」だけで、なろう系流行り出してからの大判サイズ含めた市場規模は普通に250億円弱あってピーク時の300億円と50億差程度なんだけど。

https://x.com/V7NnRqa0uZbvFqZ/status/1710418094227902600?s=20

画像も転載しておきますね。

文庫ラノベは、250億から142億円へ。半減とは言いませんが、全盛期の56.8%ですから、確かに減っています。でも、撤退戦の中で健闘しているのは、間違いないです。

んで、ネタ元として挙げられてる文春さんの記事内では「ウェブ小説以外の文芸市場の規模は10年で4分の1になった」って書いてあんだけどさ。

↓当該記事
https://bunshun.jp/articles/-/63516?page=1…

記事の見解が正しいなら、ラノベ市場は減ってるにせよ出版全体で見ればかなり健闘してる事になるわけじゃん。

https://x.com/V7NnRqa0uZbvFqZ/status/1710419567405842615?s=20

どうも小説界隈では芥川賞系の純文学や、妥協しても直木賞系列の作品が至高であり、ライトノベルを軽視したり馬鹿にする傾向が顕著ですね。ついでに漫画も馬鹿にしていますが。でもそうやって読者の入り口となるライトノベルを軽視し、活字を読む短所になる漫画を馬鹿にしたからといって、純文学などが売れるわけもなく。むしろ、偏狭さや思い上がった増上慢が見透かされ、敬遠されることに。お互いの存在や立場を、上下優劣ではなく尊重しええれば良いのですが……。

どっとはらい( ´ ▽ ` )ノ


売文業者に投げ銭をしてみたい方は、ぜひどうぞ( ´ ▽ ` )ノ