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映画感想:スパイの妻 劇場版

◉2020年に鑑賞した映画の感想を、まだだいぶ消化できていないのですが。うちのnoteは速報性重視ではないので、備忘録を兼ねてボチボチと。黒沢清監督は、アメリカ留学してた友人に言わせると、ミシシッピ州でも映画好きには名前が知られていて、評価が高い1人だそうで。自分も、『CURE』や『回路』を最初観たときは、これぞ自分が観たかったホラー作品だと思ったモノです。

スパイの妻 劇場版

2020年6月にNHK BS8Kで放送された黒沢清監督、蒼井優主演の同名ドラマをスクリーンサイズや色調を新たにした劇場版として劇場公開。1940年の満州。恐ろしい国家機密を偶然知ってしまった優作は、正義のためにその顛末を世に知らしめようとする。夫が反逆者と疑われる中、妻の聡子はスパイの妻と罵られようとも、愛する夫を信じて、ともに生きることを心に誓う。そんな2人の運命を太平洋戦争開戦間近の日本という時代の大きな荒波が飲み込んでいく。蒼井と高橋一生が「ロマンスドール」に続いて夫婦役を演じたほか、東出昌大、笹野高史らが顔をそろえる。「ハッピーアワー」の濱口竜介と野原位が黒沢とともに脚本を担当。「ペトロールズ」「東京事変」で活躍するミュージシャンの長岡亮介が音楽を担当。第77回ベネチア国際映画祭コンペティション部門で銀獅子賞(最優秀監督賞)を受賞。

2020年製作/115分/G/日本
配給:ビターズ・エンド

NHK版の方は、テレビが十数年以上前に壊れて、自宅では観ないんですよね。NHKオンデマンドの方でやってなかったせいか、観ていないんですよね。でも、評判は高い作品で、楽しみにはしていたのですが。近所の映画館でやっていなかったので、観るのが遅くなりました。個人的には好きなタイプの作品でしたし、ラストの漠寂感というか、真意の解釈の幅が良かったです。

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思えば、『トウキョウソナタ』以降の黒沢清監督は、ホラーに囚われず作品を発表していますが。人間の心の裏の裏をえぐるという点で、そこはホラー時代から変わっていないですね。ある意味で、隠している裏の人格と表で見せる人格の差という点は、常に黒沢清監督作品に顕著な特徴のような。高橋一生という役者は、そういう二面性のある役がとても多く、そういう意味ではややパターン化してる面も。

「蒼井優は雰囲気美人」ってネタを書いたのは誰だったか。確かに彼女は『フラガール』や『FLOWERS』や『るろうに剣心』など、ちょっと古い時代の女性を演じると、ハマりますね。目がパッチリし過ぎない古風なタイプなので。『百万円と苦虫女』も、美人過ぎないのが武器。なので、本作の戦前の感じとか、合いますね。本作では、どこか作り物感というか、現実を生きていないフワフワした感じが、ラストに生きる構成になっていて。

同監督のホラー作品から入った人間としては、そのテイストは失われておらず、面白かったのですが。でも、トップクラスの作品かと言われると、そこは微妙な感じですかね。レベルは高いんですが、無難にまとまっている感じで。元は尺が長いNHKのドラマ版と比較してみたくなりました。そちらの方が本来の形というか、監督が表現したかった部分でしょうから。

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