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大塚康夫氏が死去

◉アニメーターの大塚康夫氏が、亡くなったそうです。89歳、大往生でしょう。昭和の時代の傑作アニメには、必ずと言って良いほど、この人の名前が出てきました。『ガンバの冒険』に『元祖天才バカボン』に『じゃりン子チエ』などなど。自分も大好きな作品の数々。世間的には『ルパン三世』が有名ですが、大塚氏の絵のタッチがもっとも明確に出ていたのが『侍ジャイアンツ』で、宮崎駿監督の『未来少年コナン』も、その流れでしょう。教育係として宮崎駿監督に与えた影響は大きかったかと。

【鈴木敏夫プロデューサー、大塚康生が今朝逝去と明かす…TAAF2021授賞式で哀悼の意捧げる】ムービーウォーカープレス

3月12日~15日まで池袋で開催されてきたTAAFこと東京アニメアワードフェスティバル2021の授賞式が、15日にとしま区民センターで開催。アニメ功労賞やコンペティション部門の各賞が発表されたなか、アニメ功労部門顕彰者である鈴木敏夫プロデューサーや富野由悠季監督ら多くの受賞者が登壇した。鈴木プロデューサーは、本日逝去したという「ルパン三世」シリーズなど、数多くの作品で一緒に仕事をしてきたアニメーターでキャラクターデザイナーの大塚康生への哀悼の意を示した。

とはいえ、絶賛は他の方がいくらでもやるでしょうから、自分は別の面から。

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■友達にはなるが師にはならない■

これは、岡田斗司夫氏が自身の公開動画ゼミで語っておられましたが、大塚康夫氏は年下とも対等に付き合う、実に気さくな方だったそうです。アニメ界のレジェンドなのに、偉ぶらない。だから、多くの人に慕われる。しかし同時にそれは、誰かの師匠の立場にならない立場でもあったようです。親分肌とかリーダーシップというのは、天性のモノなのか、後天的なモノかは、自分にはわかりませんが。

特に明確なビジョンがなくても、人柄から慕われ、回りが自然に神輿に担ぐタイプの人もいます。さようそうせい公とか呼ばれるタイプがそれです。大相撲の元栃錦の、春日野理事長とか。しかし大塚康夫氏は神輿に担がれるタイプでもなかったようです。アニメ界はこのままでは滅ぶという警句は発しても、先達があまり動かなかった結果、アニメ界の貧乏体質が、長らく改まらなかった部分も、あったでしょうね。

■大塚康夫氏の手塚治虫批判■

しかし大塚康夫氏の場合、アニメーターの歩合制を主張し、結果的に速くて上手いベテランが儲かり、新人の貧乏体質が生まれた、という意見も見た記憶があります。もっとも、この主張があったTogetterはなぜか削除されており、真偽のほどはわかりません。憶測で物を言ってもしょうがないですので、あくまでもそういう指摘があった事実だけ、書いておきます。アニメーション史研究者の、今後の成果に期待しましょう。

ただ、ソースがある記事として、大塚康夫氏が手塚治虫批判を朝日新聞した事実は、指摘しておきます。東映動画は日本のアニメの草分けで、手塚治虫のリミテッドアニメに批判的だったのは事実。電気紙芝居と呼んで、馬鹿にしていた人もいたようです。東映動画の社員を引き抜いてもいたので、東映動画の本道にいた人からすれば、敵愾心を持ったり、見下して当然でしょう。それが以下の批判になったのは、必然かと。

【「東映の良心が十万馬力で破壊された気分」(小原篤のアニマゲ丼)】朝日新聞

 「いまアニメは斜陽でしょ? アニメーターは、細切れの発注を受けてチョコチョコあの作品をやり別のをやり、それもみな1クールで終わって。団結してものを作り上げることができないんじゃないか」
 「『アトム』で手塚さんはパンドラの箱を開けちゃった。手塚さんがやらなくても誰かが開けたでしょうけど。ちゃちな動きで話にならないと思った『アトム』に世間は拍手喝采。東映の良心が十万馬力で破壊された気分でしたね」

■経営感覚とレジェンド達■

この大塚康夫氏の手塚批判の延長線上に、宮崎駿監督の手塚批判があるのでしょう。師弟関係という意味では、紛れもなく大塚康夫氏の影響はあったでしょうし。でも、その手塚治虫先生が切り開いた地平のおかげで、『太陽の王子ホルスの大冒険』で記録的な大赤字を出し、現場からの制作決定権を奪われた高畑勲監督や大塚康夫氏が、大活躍できるテレビアニメの土台が創られたのは、皮肉ですね。

庶民の生活を描こうとする高畑勲監督の嗜好では、100分前後の劇場版アニメでは、とても尺が足りず。30分で1年間、20時間以上の余裕のある表現の場を得て、高畑勲監督は名作傑作を世に送り出せた。しかし大塚康夫氏が理想とするやり方で、『かぐや姫の物語』で湯水に如くカネを使い、ジブリの制作部門を解散に追いやった高畑勲監督を見るに、なるほどアニメ界の悪しき体質はこの人達が創ったのかもと、思わざるを得ません。

労働争議が激しかった東映動画は、経営者を批判し、手塚治虫と虫プロを批判し、平等を掲げる共産主義思想にシンパシーを持ちながら、現実の労働環境改善とか、あまり益しなかった。むしろ、虫プロの方が給料が良かった、という証言はいくらもあります。それどころか、東映動画は学歴差別があったという証言さえあります。けっきょく、高畑勲監督や大塚康夫氏らの世代は、自民党に文句をいうだけの社会党と同じ。

高畑勲監督はけっきょく、ジブリの社員化を提案して、宮崎駿監督らが稼いだカネを湯水のように使って、制作部門の解散に追い込んだ。連立政権の村山富市内閣や、民主党政権のように、昭和の左派の限界がそこだったのでしょう。大きな目標を掲げるクセに、具体的な行動をしない。これは、倉田真由美先生のだめんず・うぉ〜か〜での、ヒモからDV夫になるタイプの話なんですが。このタイミングで庵野秀明監督の不動産運用の話が出るのも、象徴的。

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