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漫画家のマネタイズ

◉コミティアなどに持ち込んだ投稿者や漫画家が、編集者からけんもほろろな扱いを受けたとい話題が、かなり出ています。自分が出版社の編集者だった頃は、コミティアや出張編集部は、なかったわけではないですが、それほど盛んでもなく。自分が小学生の頃からファンだったあろひろし先生にしても、同じように酷い扱いを受けたようで。自分が上司や先輩だったら、さすがに注意していたでしょうね。勘違いした編集者は、一定数いますから。自分も、人によっては傲慢と思われていたでしょうし。フリー編集者となった今となっては、作家の出版社に頼らないマネタイズという点に、関心強いです。

ヘッダーはMANZEMIのフォトギャラリーより、平田弘史先生揮毫のタイトルロゴです。

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■そこに市場はあるか?■

さてさて、思い上がったアホ編集者の話は、言ってもしょうがないので。重要なのはコチラ、あろ嫁さんのこちらのツイートですね。

(補足) とはいえ、わたしがハッタリぶちかますのも躊躇わないと断言できるのは、一重にCF「島喰い」があれだけの達成率を叩き出したという理由が大きいです。
ご支援者の方にはとても感謝しております。
あろさんも「まだ自分は描ける」と自信を持ちました。
本当にありがとうございました❗❗

https://x.com/aroyome/status/1715867998794420456?s=20

あろひろし先生の『島喰い』のクラファンは、自分も一口、申し込ませていただきましたが。目標金額は180万円で、それを大きく上回る701万8722円を、達成されているんですよね。でも出版社的には「あろひろしに市場はない」という判断だったのでしょう。確かに、薄利多売の商業誌ベースでは、ベテラン漫画家は原稿料との兼ね合いもあり、難しい面はあるかもしれません。ですがベテラン作家には、厚利少売の可能性が、現代ではあります。

■薄利多売と厚利少売■

ある漫画家さんに以前言われたのが、「毎月100円払ってくれるファンが3000人いれば、自分たちは漫画家を諦めなくてもいい」と言われたことがあります。 これは同時に、1000円を払ってくれる300人でも、1万円を払ってくれる30人でも、得られる金額は同じなんですよね。 あろひろし先生のクラファンには、なんと3万円コースに76人も応募されてます。

少なくとも2年弱はなんとか漫画だけを描いて食えるぐらいのお金を、出してくれるファンが、あろ先生にはいたわけです。他にも『変幻退魔夜行 カルラ舞う!』ドラマCD&特製ファンブック制作のクラファンにも、目標金額は180万円に対して707万1000円が集まっています。薄利多売の商業誌とは別の市場が、確実に存在しているわけです。この市場は、出版社が拾えない市場だ、とも言えそうです。

■他業種の生き残り戦略■

広く薄く安く、は確かに商売の基本ですが、多くの企業や業種で、ある時期から狭く厚く高くへシフトしますね。例えば日本酒などがそうですね。戦後の物がない時代は、三倍増醸酒でも飛ぶように売れましたが。多様なお酒が消費されるようになると、大手メーカーの下請けとして特徴のない酒を作ってきた小さな酒造メーカーは次々と倒産し。純米酒や吟醸酒に活路を見出した日本酒の蔵元や、長期熟成に取り組んだ焼酎メーカーなどが生き残り。

これは自動車メーカーなども同じで。最初は大衆車のメーカーとして始まった自動車メーカーも、市場が成熟していけば、より安い人件費で生産できる地域に、シフトしていきます。ヨーロッパもアメリカも、日本車に市場を奪われたわけですが。ヨーロッパのメーカーは、早めに高級車志向にシフトしましたね。日本の自動車メーカーも、ホンダはアキュラの別ブランド高級車を発売し。HondaJetの新規分野の開拓に舵を切りました。

Apple社のMacがパソコンの世界シェア 3%と言われた時に、自動車好きでも 知られたスティーブ・ジョブズCEOは、ポルシェやフェラーリのシェアはもっと低いが誰も気にしない……と切り返しました。実際にMacは、いくら高いと評論家やアナリストに叩かれても、健全な利益を得るためには この値段が適正だと、値下げに応じませんでした。値下げ合戦に巻き込まれて消えて行ったメーカーも多いのに。

■流通とマネタイズと■

これは演芸の世界でも同じで、江戸時代は大衆娯楽の王様であった歌舞伎は、新劇の登場や映画の登場で、大衆の客を奪われ。でも、能がそうであったように、伝統文化として権威を高めることで、かつてよりは少ないが、濃い好事家のファンを育て、生き残り。 これは、野球やサッカーなど新たな 人気スポーツが出現して、王者の座から滑り落ちた大相撲も、似ていますね。

翻って出版社でデビューし、原稿料をもらい、単行本印税を稼ぐという旧来のマネタイズから、方法論が多様化しています。 雑誌を経ず、ネットで注目を集め、逆に出版社から声をかけられる人や、出版社ではなくAmazonから直接収入を得るマンガかも出てきています。時代は変わりつつあります。濃いファンが居る作家が、有利になりつつあります。ここを踏まえた上での生き残り戦略が大事。

pixivのファンボックスでの会費や、Amazonの個人出版、BOOTHでのグッズ製作と販売、自費出版本の虎の穴やメロンブックスなどを利用した限定的な流通……いろんな方法が試され、それぞれ一定の成果を上げています。MANZEMI講座の出版部門である春由舎からは、プリント・オン・デマンド(POD)版に対応した電子書籍が続々と発売されています。

■作家が描き売る時代へ■

MANZEMI講座の、出版部門である春由舎から、臼井俊介先生の画集が発売されます。こちらはPOD版も10月31日から購入可能です。フルカラー印刷でA4サイズの本が、データをAmazonのサイトに上げるだけで、世界中で購入できる時代に、驚きます。昔はフルカラー画集を出せるのは本当に売れっ子のごく一部の人間だけでしたから。それが今は、こんなに簡単に。

もちろんそのためには、DTPの基本的なことを学ばないといけませんが。でも、それは帆風のInDesignとPhotoshopのセミナーを受ける程度で、十分に身につくものですから。場合によっては編集プロダクションがそういう実務作業を請け負う 日も来るでしょう。そうなった時に、大手や中堅の出版社は作家に何をしてあげられるかが、問われるでしょうね。使ってやってる・書かせてやってるの、江戸時代からの殿様商売の終焉が、近づいています。

出版社は、海外へ翻訳や売り込みとか、アニメ化やドラマ化や映画化や、あるいはグッズの企画や販売とか、やれることは多いでしょう。以前書きましたが、大手出版社ならアニメ制作スタジオを子会社として傘下に収め、アニメーターの生活の安定と、作品のアニメ化による展開とか、そっちの方に今のうちに幅を広げておくべきでしょうし。中堅どころが、一番苦しくなるでしょうけれども。編集部の独立採算制で、なんとかなるところも出てきそうですけれど。それは、また別の機会に。

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