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め
2016年3月25日 08:37
「もし、お嬢さん」 空から降ってきたのは、どこか聞き覚えのある声だった。か細い糸をたぐり寄せるように、私は自分の記憶をたどる。けれどその声が誰のものだったのかなかなか思い出せない。 「もし、お嬢さん。泣いているのですか?」 答えにたどり着く前に、また声が降ってきた。綿菓子のようにふわりとしているけれど触れれば溶けてしまいそうなほど繊細な声。 しゃがみ込んでうずくまっていた私は