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映画「JOKER」感想

・2400字弱。


・いわずもがな、ネタバレ注意。


・いつの間にかアマプラで見れるようになっていた。こういうシリアスな実写作品って嫌なので基本見ないんだけど、まあ、知り合いがみんな唖然としてたような感想を垂れ流してたし、タダだから観るか。と。



主人公について


・あーいるわいるわ。皆のクラスにもいなかっただろうか?こういう静かな狂い方をしている奴…

・家庭環境が悪すぎて、別に名前のついた精神疾患を持っているわけではないけど、倫理観がなくて、独特のユーモアがあって、思考回路の配線がおかしくて、行動力がある奴。

・わかりすぎて嫌になるな。

・シナリオを描くのが下手な人間が雑に描写したステレオタイプ的な狂人というのは全く理解とか共感ができないし、作者もその狂人に感情移入せずに描いていると思う。しかしJOKERの狂いはそうではなく、確実に「わかる」狂いだ。私の脳内にもJOKERの一面が存在しているという事実が嫌になってしまう。誰でもJOKERになりうる。

・京アニ放火事件を想起したな。


・JOKERってただの人間なんだよな。JOKERの作中でも数えるほどしか殺人をしていない。思い返したらJOKERってやべ~奴なのに作中で7人?くらいしか人殺してないんだな。やべ~~~


演出について


・衝撃的な出来事が起こると、すごい感傷的で冗長的な、BGMのデカい、言語の出てこない演出が入る(たぶんそういう映像表現には名前がついているのだろうな)。エモさの演出だ。

・類似した作品で言うと、スイスアーミーマンとか銀河鉄道999あたりがそうだ。

・これらの作品に共通するのは、作品が演出ベースで作られていて、エモを大切にしているということだ。演出のためにストーリーやキャラを作っている。

・演出第一の映画って、ファスト映画化しても全く面白くないと思うんだよね。(なので根絶されてくれな)

・もし、漫画「ルックバック」がアニメ化されることがあれば、演出ベースになると思う。アレも無言のコマによる演出が多かった印象。



カタルシスについて


・この映画の見どころはカタルシスだ。主人公の受けてきた鬱積を発散することで、視聴者のカタルシスを開放する物語だ。長編スカッとジャパン。

・カタルシス開放系のお話って、観終わったあとの解放感がすごいから他人にもオススメしたくなるだろうけど、私はちょっと個人的にカタルシス開放系のお話は気に入らない。

・スカッとしたお話って、物語前半で受けたストレスを開放しているだけなので、そもそもその作品を視聴しなければそのストレスを受けることもなかったわけで…

・もしJOKERという作品の二週目を観るなら、オチの所だけ見てもさほど面白くはないと思う。オチのスカッとを楽しみたかったらまた序盤から見てストレスを溜める必要がある。これはカタルシス開放系の映画全般がそう。



ネット上の考察について

・ネット上の考察では、みんな「壮大な夢オチだったんじゃない?」という考察が議論の根っこにあったのだけど、それはないと思うな…

・監督は辛いだろうな。こういう「考察が本番みたいな作品」って本当に難しくて、映画内の隅々が考察対象になるから、些細な描写がミスリードを生む。特に深く考えずに主人公の髪の色を黒にしただけで「夢オチだったんだ!」と考察されたらたまったもんじゃない。トトロを死後の世界扱いされた宮崎さんも辛かっただろうな…

・ラストシーンだけ髪の色が違う点から推測した「ラストシーン以外は妄想だったんだ!」という意見は多々見かけるが、「ラストシーンだけは妄想だったんだ」という意見は見かけない。なにゆえ?


ちなみに監督は、こうしたファンの仮説について「自分では調べないようにしています、答えを言いたくなってしまうから」と言いつつ、「あらゆる見方ができるのが良いところなんです」と話している
いずれ、僕たちが何を考えていて、執筆時に何を意図していたのかをお話しすることにします。それは大切なことだと思っていますが、ただし今じゃない。

・作者の脳内では答えは一つらしい。

・個人的には、考察が割れるということは、即ち作者の表現力不足だと思っている。それは全ての作品においてそう。作者が脳内でどんなに理路整然としたシナリオを考えていたとしても、紛らわしい表現をしたら考察は割れる。

・特にJOKERは「主人公=語り手」というか、主人公目線で物語が進むので、ちょくちょく主人公の妄想が入る。しかも妄想癖だ。どれが事実でどれが妄想なのか?と考察の余地ができすぎてしまう。

・「JOKERは銃弾を8発撃ったのはおかしい。そのシーンは妄想だ」という意見も散見されるが、作者はJOKERのことを「大体の銃は6発か7発しか入らないという事実を知らない奴」だと思っているのだろうか?本当に?

・あの映画がほぼ全部主人公の妄想だと仮定した場合、途中でソフィーからの好感度がガタ落ちするシーンがおかしい。あれは「ソフィーに好かれていた妄想から醒めたから、急にソフィーが冷たくなったように描写されている」と解釈しているのだけど、もしそれも妄想のうちなら、「妄想から醒めたという妄想」をしていることになるが…妄想内で妄想をするだろうか…?


・なんか釈然としないなぁ…

・途中、主人公が冷蔵庫に入るシーンがあって、ファンは「本当はあそこで自殺したんだ」とか「妄想なので本当は入ってない」「そういうジョーク」「冷蔵庫に死体を隠せるかサイズを調べていた」とか言われてるけど

・単に「主演のホアキンさんが、自分がもし不眠症に悩まされていたら冷蔵庫に入っちゃうかもなと思ったからアドリブでやった」というだけの話らしい。

・考えすぎなんだよね


・おわり

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