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【経営者&人事向け】CHROの仕事Q&A

最近「人事に力を入れた方が良い」とか、HRという言葉を耳にする機会が増えてきました。

僕は埼玉県にある創業9年目の会社で、COO兼CHROをしています。メンバーは400名弱(正社69名、パート321名 20年3月時点)の規模です。100名規模の時に入社して、拡大期を中から支えてきました。

最近「戦略人事」「経営人事」「CHRO」など、 "これまでよりも人事・HRを戦略的に考えていくべきだ" という風潮がでてきています。僕も経営に携わる中で、3年ぐらい前から取り組んできました。おかげさまで"働きがいのある会社"ランキングGPTWに2017年・2018年と2年連続入賞もできました。

HR系は関心が高まってきた一方で、まだ実際に行動に移している企業は少ないように思います。というのも、web上に情報も少ないし、取り組んでいる企業の内情ってなかなか出てこなくて、参考事例もあまりないから、トレースしようがないですよね。

関心がある方のために、僕の考え方や普段やっていることを、Q&Aでまとめてみました。

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自己紹介・会社紹介・インタビューなど
 プロフィール
 旅する温泉道場社長になった宮本さんに色々聞いてみた
 温泉道場グループの人材育成について
 独自のシステムと明確な評価制度がオーナーシップを育てる


Q. なぜ、いつ、CHROを導入しましたか?

4年ぐらい前、今後の中期計画とタスクを書き出してみて、「あ、これ以上事業成長するには、HRに力入れないとまずいかも。」と思ったことが、きっかけです。

僕たちの事業ドメインは、赤字経営の温浴施設を引き継ぎ、事業再生していく直営事業です。自分たちで積極的に立地を選んで展開するのではなく、もともと運営していた会社さんから相談を頂いて、異なる立地や環境でスタートしていきます。

チェーンやフランチャイズ店舗の拡大の仕組みとは異なり、1店舗ごとにマーケティングやコンセプトを変えていることから、一律のマニュアルにしづらいです。また、相談を受けてから検討をするスタンスのため、出店時期もコントロールがしづらいです。

店舗規模が大きめなので、1店舗オープンするには正社員・パート含めて20〜60人ぐらいのメンバーが必要になるんですね。また業種的に、採用率や定着率に難があると言われています。かつ僕たちはローカルでやっている会社なので、そもそも母数が少ないという問題もあります。

なので、僕たちの会社が事業展開をしていこうと思うと、採用力や従業員満足度も大事ですし、「出店しよう」と思った時にちょうど良いメンバーが揃っている状態を作らないといけなかったり、事業展開をするタイミングでHRがボトルネックになる可能性が高いなと思うようになり、導入することにしました。


Q. 現在の役員構成は?

常勤取締役2名、非常勤取締役2名、監査役1名、執行役員6名(2020年3月時点)

主な経営での役割分担だと

 代表取締役社長が、CEO・CFO・CMOを兼任
 取締役副社長が、COO・CHROを兼任(僕)

という構成です。

自分でリスクを負って資金調達し、世界観を語り、新規出店を牽引する創業社長と、内部を整えながら中長期組織開発をして追いつかせる副社長、という組み合わせなので、創業期〜拡大期はいい感じで役割分担できて、スケールしてこれたのかなと思っています。

今後は、この2名兼任体制から、権限委譲しつつ経営チームを増やしていくフェイズだと思ってます。新卒の経営チームメンバー入りや、グループ子会社社長を増やす、多様な性別の経営メンバーの増員などを目標にしています。

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Q. どういうキャリアでCHROになりましたか?

大学卒業後、都内ベンチャーで営業・営業企画など 3年間
 ↓(温泉道場に転職)
店長・スーパーバイザー 2年間
新店舗開発・マーケティング 1〜2年間
執行役員・経営企画・コンサルティングなど 1〜2年間
 ↓
子会社社長・COO・CHRO など今に至る。

という流れなので、人事や総務など関節部門専属になったことはありません。むしろあまりやったことがなく、どちらかというと総務は苦手で、営業・事業の方が得意でした。

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Q. 普段から気にしているKPIや、成果を判断するアウトプットは?

いろいろと試してみて、感度が高いもの、そうでないものを分けるとこんな感じです。

<感度が高いと思う、数値目標やアウトプット>
 ・5年間の中期経営計画と、それに紐づく人員計画の作成と運用
 ・人時生産性を高める、テクノロジー投資を率先して行う
 ・採用チームを組織し、運営指針を決める
 ・メンバーが夢を叶える機会の設計と、定期的な1on1の設計
 ・離職の早期把握と伴走、転職支援

CHROの一番コアな仕事は、中期経営計画を達成するための、人の採用・モチベーション・組織開発を、計画にして達成していくことです。例えば弊社では、5年間の中長期事業計画を作成する時に、各役職の人数・新卒採用数・中途採用数・離職率を全て計画値にし、それ通りに都度コアな業務を決めて取り組んでいます。

僕の場合、中期経営計画をもとに今年度取り組むことを3つに絞っています。例えば2020年度は、「採用webページの改善」「新卒社員の導入期教育」「副支配人の強化」です。

一般的に人事部は、「やること」と「やらないこと」を決めることはないと思います。人事部=総務・経理・社内イベント・雑務・折衝・社長秘書・・・となって、ミッションがあまり定められていません。

僕は「今年は新卒社員の成長を高める制度設計に注力します」とか「60才以上のパートスタッフの安心感を高める施策に注力します」とか、毎年取り組むべきことを絞って取り組んでいます。

<感度が低いと感じる、数値目標やアウトプット>
 ・平均年齢や平均勤続年数など「平均」数値の管理と把握
 ・1人あたり採用経費
 ・福利厚生費の管理
 ・離職率管理と退職引き止め

もっとも感度が低くて難しいと思ったのは、予算を決めることです。

「福利厚生費」「教育費」について、営業利益の何パーセントぐらいかけるべきか。

これ、すごく質問されるのですが、すごく難しいです。

単純にパーセントを決めてしまうと、事業の業績が順調な時には、多額の福利厚生や教育費をたくさん使うこともできるのですが、順調じゃない時にはとことん絞るってなるわけです。

でも、事業が順調じゃ無いときこそ、モチベーションをあげるために厚生費をつかったり、教育にコストをかけなければいけない時もあると思うんですよね。

あと「離職率を下げる」というのも、あまり有効に機能しません。業界水準より高いのが続くのは不健全だと思いますが、低すぎるのは、新しいメンバーの加入や価値観の衝突が起きていないとも捉えられます。

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Q. HRチームのメンバー、体制は?

「HR&C(カルチャー)」という部門を作っていて所属は3名います。上にかいた、部門のやるべきことを達成していくためにそれぞれ業務をやるので、あまり業務分担を決め切ってはいないです。業務初心者なことも多い。

中央の松本さんは、未経験ですが、動画編集をがんばってくれています!

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Q. どうやってHR分野の知識を学んでいますか?

①本を読む
②人事に力を入れている会社を研究する、セミナーに行く、話を聞く
③「日本の人事部」など、HR系メディア

あまり他の人やサービスに頼らず、経営に携わっているメンバーが主体で知識をつけていくことで、自社に合った内容を少しずつ取り入れて具現化していけている気がします。

他社のサービスやコンサルティングを検討するときは注意が必要です。

僕はその会社のサービス導入実績ではなく、会社のスタンスやその会社の実情をベースに判断するようにしています。

例えば「採用のサポートします」というサービスであれば、その会社自体の採用がうまくいっているのか。「評価制度を作ります」というサービスであれば、その会社の社員がすごく成長したり満足度が高い状態なのか。

笑い話みたいですが、「採用のサポートします」と言う営業の方に「御社の採用は今年どうですか?」と聞いたら「全然ダメなんです。この不況だと厳しいですよね。」という返答だったり。。。

「満足度を高めます」という営業の方に「御社の満足度はどうですか?」と聞いたら苦笑いだったり。。。

それだったら、結果を出している会社の経営者やHRの方にアポイントをお願いしたり、海外の企業や社風を勉強することにお金を使った方が、遠回りなようで近道です。

これも最近CHROが必要とされている理由だと思います。昔よりも働いている人の価値観が多様化しているので、一律の外部サービスに頼っても成果があまり得られなくなってきているように感じます。

僕たちも、海外視察に力入れてます!

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Q. CHROになるにはどうしたらいいですか?

まず、事業部門できちんと売上や利益の成果を出すことが大事だと思います。その上で、自分が現場で培った経験やノウハウをもとに、全社的な採用や研修を担当するのがオススメです。

日本の企業は、人事・総務などの間接部門は「売上・事業部門であまり成果が出せない人」が行く場所、みたいなイメージがあります。

でも、成果を出した人が、自分の後輩を採用したり研修したりという進め方の方が、うまくいくと思うんですよね。

なので、人事系でキャリアを積んだ先に、CHROがあるわけではなく、事業で成果を出した人のキャリアの一つにCHROがあるのだと思います。


Q. 会社の雰囲気をよくしたい、HR系の取り組みを始めたい、最初に何をしたらいいと思いますか?

これもよく質問いただきます。

一番最初にやることは"宣言"です。

僕は「お店を増やしたいと思っている、利益もあげたいと思っている、そしてみんなの人生を幸せにしたい、もっと満足度をあげたいと思ってる」と、宣言することから始めました。

経営をしていると、従業員の幸せを願うのは当たり前だと思ってはいるのですが、普段からメッセージとして発していなかったりするんですよね。

あと、しばしば「利益を増やすか、従業員満足度をあげたいのか、どっちですか?」というように、AorBで、相反する概念として満足度って扱われます。「利益も従業員満足度もあげるんだ。」とAandBで考えることを宣言する、これが大事です。AorBだと思ってストレスを貯めているケースがよくあります。


ローカルは、経営と人事を繋げて考える人が必要

ローカル企業やサービス業の方と、経営について話すことがよくあるのですが、CHRO目線で学んで実践することが増えると、ほとんどの悩みは、本質的には人事の課題だなと考えるようになりました。

例えば「売上が悪い」という悩みがあるとします。

よくよく話を聞くと「売上をあげる施策はあるが、実行するリーダーがいない」とか「サービス力をあげたいけど、マニュアルを作れる人がいない」など。

本質的には「人がいない」か「スキルが足りない」ことが課題だったりするわけです。

ローカルでよくある「跡継ぎがいない」というのも、「人を採用する」か「自社内で育成する」かをしないといけないということを感じながらも、うまく手を打てていないということです。

なので、これからの時代は、CHROの必要性がめっちゃ増えていくと思ってます。

これを見て、少しでも経営の役に立てれば幸いです。ローカルでCHROを目指す人が増えると嬉しいです!

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フィンランドの、サウナと幸福度の関係を調査しに言った時です。サウナも働きがいにつながりますね!


サポートいただけると嬉しいです! これからも地方創生・温泉・サウナ・人事などをコツコツ書いていきますので、書籍の購入費用に充てさせていただきます。