《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第51話
第一部の振り返りと第二部のあらすじ
戊辰鳥 後を濁さず
―つちのえたつとり あとをにごさず―
第二部「煙柱」
四月十九日(金)
朱色の炭は初めて磨るが。おもしろい。おもしろい。
なんだか先生になった気分だ。
どれどれ濃さはこのぐらいで試し書きしてみるか。
いやまさかロッドの連結時に、ロッドが落ちていくとは思わなかった。
うん。このぐらいの濃さでいいだろう。
あれは俺が楽な現場だと思い、調子に乗ったのが悪い。
「朱 鷺 の 湯 っと。」
こんなことは起こしたことないが。
「温 泉 っと。」
普通のことを怠った。
だから、なんとかしようとやってきた。
まぁるくおさまった。
それが大事だ。
人間だってなんだって、まるくなきゃいけない。
今はまだ荒削りだが、モグラは真面目で頑張り屋だ。
あいつはほとんど、どうしようもなくて、まぁるく磨いたら少しも残らないかもしれない。
けど、あいつは一生懸命だ。
だから、俺たちも一生懸命磨いてやらなきゃいけない。
何が残るかわからない。
けれど、俺はそれに賭けたいんだ。
そうだ。朱鷺の湯温泉の周りには丸を描こう。
お客さんが来なければ、会社一同トキさんのところにお世話になればいい。
「まぁるっと。」
そうすれば、トキさんも儲かるし、何より温泉に浸かれるってのは、社員にとってもいい。
そうすれば、二重丸だ。
「立つ鳥 跡を濁さず。」
跡には、露天風呂ができちまったが、それはそれでおもしろい。
「まぁるくおさまった。」
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