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《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第51話

第一部の振り返りと第二部のあらすじ

舞台は、そろそろ草木が芽吹き出す広大な田園地帯
神奈川県カピバラ市イグアナ地区にある民泊宿<朱鷺の湯温泉>

気分屋な友人のモグラ
昔気質の土木親方ジンベエザメ
農家の跡取り娘トキの三人は
新婚さんに外人さんと、お客様をもてなしながら、
そこで起きる事件を持ち前の機転と知恵で乗り切っていく!

ただ、モグラが冗談で口走った
「事件なんだからいっそのこと焚き付けて温泉にでもしちまえや。
 それから小説でも書くといい。殺しもありのサスペンス劇場だ!」
という発言は、あろうことか現実となり、トキは土地を追われることに!

「私が、私でなんとかします。」
「それが、私たちの責任だよ。」

これから始まるのは、後に残され一人となったトキによる
独立独歩、土地再生物語。

戊辰鳥 後を濁さず
―つちのえたつとり あとをにごさず―
第二部「煙柱」

四月十九日(金)

 朱色の炭は初めてるが。おもしろい。おもしろい。
 なんだか先生になった気分だ。 
 どれどれ濃さはこのぐらいで試し書きしてみるか。
 いやまさかロッドの連結時に、ロッドが落ちていくとは思わなかった。
 うん。このぐらいの濃さでいいだろう。
 あれは俺が楽な現場だと思い、調子に乗ったのが悪い。

「朱 鷺 の 湯 っと。」

 こんなことは起こしたことないが。

「温 泉 っと。」

 普通のことを怠った。
 だから、なんとかしようとやってきた。

 まぁるくおさまった。

 それが大事だ。
 人間だってなんだって、まるくなきゃいけない。
 今はまだ荒削りだが、モグラは真面目で頑張り屋だ。
 あいつはほとんど、どうしようもなくて、まぁるく磨いたら少しも残らないかもしれない。
 けど、あいつは一生懸命だ。
 だから、俺たちも一生懸命磨いてやらなきゃいけない。
 何が残るかわからない。
 けれど、俺はそれに賭けたいんだ。

 そうだ。朱鷺の湯温泉の周りには丸を描こう。
 お客さんが来なければ、会社一同トキさんのところにお世話になればいい。

「まぁるっと。」

 そうすれば、トキさんも儲かるし、何より温泉にかれるってのは、社員にとってもいい。
 そうすれば、二重丸だ。  

「立つ鳥 跡を濁さず。」

 跡には、露天風呂ができちまったが、それはそれでおもしろい。

「まぁるくおさまった。」

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