まーわるーまーわるーよ

連休に合わせて父と交わした約束を果たすため、一緒にチェーン店の回転寿司に行った。

15時頃に行ったが、席は8割ほど埋まっていた。

連休の凄まじさを思い知り、お客のひとりひとりが発するエネルギーにあてられ気分が悪くなる。
父の運転にも少し酔っていた。

父はこの約束のために、お昼ごはんを抜いて寿司に挑んだらしく、席に着くなり立て続けに注文し、汁物は腹が膨れるからといつもは避ける赤だしも注文していた。

わたしは喧騒疲れと車酔いのため、もはや食欲はなく、何ならそのままもう帰りたかった。

「人と車にちょっと酔っちゃった…」と父にやんわり伝えつつ、寿司を食べに来たのに寿司を食べずに帰るのは父に咎められるような気がして、漬け鯛の握りを注文した。

広告やテレビCMの半分くらいしかなさそうな大きさの寿司が2貫やってきた。

口に入れ咀嚼を始めるなり、胃が拒絶を始める。
それでも少しずつ丁寧に咀嚼し、ゆっくりゆっくり飲み下す。
その間にも、父は次々と寿司を平らげていく。
わたしは2貫を食べ終えた時点で、もう限界だった。
すぐにでも帰りたかった。
どうして寿司を食べに来ようなどと、あの日約束をしてしまったのだろうと、後悔に揺れながらわたしは目を閉じ、なるべく視界に何も入らないようにして、酔いを宥める。

茶碗蒸しを楽しみにやってきたのに、メニューで写真を眺めても、胃は全く動かない。

父が注文していたタコの唐揚げを、なんとか3つ食べる。
「寿司はもう食べないのか?」と聞かれる。
「気分が悪くてもうムリかも…」と答えると、「寿司食いにきたのに一皿?あと一皿くらい食べろよ」と笑いながら促されるが、食べられそうにない。
「勘弁してくれよ~」と、これまた笑いながら父。

「車に酔って気分悪いって言ってるし、わたしは一皿食べて満足だし、ゆっくりしとけとか言ってそっとしといてよ。思いやりがないな」と言うと、「はんっ」と鼻で笑われた。

今まで出会い、分析してきた人間のタイプに、父をそっと当てはめてみる。

ふむ……。

父とわたしは性格が似ていると、幼い頃から20代前半くらいまで、呪文のように繰り返し思い込んでいたけれど、実はあまり気の合わない人間なのかもしれないなあ、とぼんやり思った。

今度はテイクアウトでお寿司を買って、ひとり家でゆっくり食べようと心に誓う。

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