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無責任でいられること

随分と昔から鈴木敏夫のジブリ汗まみれというラジオのpodcast版を聞いている。もうだいたい全部聞いてしまって、ラジオ音源なのになぜかDVDになっているやつも購入し、今は昔聞いた話を適当に選んでたまに聞く。

面白いのはいつ自分が聞いたかで同じ話なのに印象が違うこと。そういう時に、話を聞くと言うのは、だから多分に自分の状態を反映するものなのだと実感したりする。

鈴木さんはスタジオジブリのプロデューサーで宮崎駿と高畑勲の2人とずっと昔から映画を作っている。でもだからといってこのラジオ内でジブリについて延々と語られるのかと言えば全然そうじゃない。

あるときはワンピースの作者である尾田栄一郎さんと任侠映画について熱く語ったかと思えば、あるときは坂本龍一と子供のころに映画の効果音をどうやって再現したかで盛り上がる。豪華なゲストが続いたと思えば、鈴木さんの行きつけの床屋の店主がゲストの回もあったり、リスナーとしては次に何が聞けるのかワクワクせずにはいられない。

でも著名人であろうとなかろうと、1人の人間としてのゲストのフラットな話が聞けるから、なんだか不思議な番組でもある。鈴木さんの前では誰もが本当の自分に少しの間だけ戻ってしまうのかもしれない。

最近、鈴木さんの話で一番印象に残ったのは「無責任でいること」という話。スタジオジブリで映画を作るときも、もっと前にアニメージュという雑誌の編集長をやっていたときも、鈴木さんは一度も自分の責任でやっている、なんて思ったことはないらしい。

だって、自分の責任だなんて思ったら50億円も集めて映画なんて作れないでしょう

この言葉を聞いた時になんだか救われた気がした。何をするにも責任がついて回る今の世の中は、少しだけ窮屈でたまになんだかとても辛くなってしまうことがある。

自分が頑張る源泉が責任ではなくて、もっと自分がこうしたいとか、単純に面白いからとか、そういうところにあると強いのかもしれないと思う。それこそスタジオジブリが作れてしまうぐらいに。

そんな鈴木さんに憧れながら、でもやっぱり仕事の中で責任に押しつぶされそうなこともあって、そういう時にこのラジオを1人静かに聞くと、スッと不安な気持ちが溶けていく。

いつか自分も鈴木さんのように責任ではないところで仕事ができるようになれるだろうか。そんな日が来ることを楽しみに明日も頑張ろうと思う。

今回は少し軽めなお話でした。


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