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森見登美彦 著「きつねのはなし」考察その6 物語後半

前回で物語4話について書こうと思っていたのですが、思いのほか長くなってしまったので前後半に分けました。文量が多いのは文章力がない証拠と言われそうです。スミマセン

注意:これより下には小説「きつねのはなし」のネタバレがあります。

3.魔

こちらについては歴史の時間で全体の流れは書きましたが、疑問点がいくつかあります。

1.ケモノはどこから来たのか
2.最後どうなった?

1.については、樋口家から来た、と考えます。剥製になっているケモノが樋口家にはありますが、あれは直次郎が狐・龍との会合に際して作ったものをそのまま家で育てて剥製にしたのでは、と考えます。家族の話を聞いていると、曾祖父が真似して行った大宴会がうまくいかなかったようで、この時にケモノが逃げ出したのでは、と考えています。

仮説6:「魔」のケモノは曾祖父の大宴会の副産物

最後の勝負がどうなったかを考えるときに、この物語の最初ページに非常に気になる一言があります。”最後に彼女と会ったのも雨の中である”。さらにこれを語っている”私”はまだケモノに憑かれているようです。

夏尾さんが飛び跳ねた時、秋月は手を砕かれ、西田兄は頭に木刀を撃ち込まれ動かなくなっています。憑かれた先生は相当強くなっています。さらには”もう夏尾は私に会えない”と言っていることからすると、ケモノが勝ったということになります。

考察2:先生は夏尾を殺害。秋月と西田兄は少なくとも重傷を負う

秋月と西田兄は重傷を負っていて死んでしまう可能性もあります。ただ、生還した秋月と西田兄弟が、先生を追っていることも考えられます。

4.水神

樋口家の人については歴史の時間で時系列をまとめました。そのうえで考えたいのがまずは茂雄の母、花江さんの死。

私が考えるには、これは呪い殺されたというようなことではなく、事故があったのでは、と考えます。茂雄の夢や記憶から考えると

考察3:花江が祖父の妻となった翌年、茂雄が事故(風呂で溺れる?)あるいは水神の怒りで死にそうになる。それを救うため、花江は自らを水神に捧げた
背景にあるのは沈んだ神社の話です。これを沈めたのが屋敷にいた水神で、その怒りを鎮めるため、あるいは茂雄を救うため、自らを犠牲にする。結果花江は人魚のようになって茂雄の記憶に残る。祖父は自らの力をはるかに超える水神の力を知り、それについては語らなくなる。

つぎに、だれが芳蓮堂に電話をしたのか。話では祖父が電話をしたとしか考えられません。今回の仮説に基づくと、適当な理由をつけて芳蓮堂が水を持ってくればよかったと思います。おそらくは祖父が大宴会をした時点で龍が勝利をしており、そこで祖父の死後の調整をしたのではないでしょうか。そのため大宴会は孤独なものになったと。あとは祖父が生きるだけ生きた後、龍の化身である芳蓮堂が水神の封印を解く手はずになっていたのではないでしょうか。

仮説7:祖父の大宴会は龍の勝利報告

どうして祖父がいろいろな水を集め、曾祖父が龍アイテムを収集するようになったか、今回の仮説ではあまり強い理由を考えることができませんでした。それらが龍への対抗措置だったのか、あるいは何かを見つけることを龍サイドに求められたのか、読んだ限りではわかりませんでした。

まとめ

私の仮定に基づいて、どのように物語を解釈したかについて紹介しました。各物語が独立していてそれぞれがヒンヤリとした読後感で心地よい、というのももちろんよいと思います。私の場合はその読後感が、あれはどうしたらそうなる?とかいう考えがぐるぐるといつまでたっても収まらなかったので、いったん書いてまとめようと思いました。

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