なんでもない日の魔法
突然、義理のお母さんから電話が掛かってきた。
「はい、もしもし…」
「・・・・・・・・」
電話に出ると無言で、だけど、かすかに鼻をすする音が聞こえる。
「ありがどねえ、本当に嬉しくってさあ」
「???」 なんのことだろう。
そうか、母の日の贈り物が届いたのかな。
「こちらこそ、いつもありがとうございます」
うまく言葉にできず、ひたすらその言葉を繰り返す。
「ありがどねえ、本当に嬉しくってさあ」
泣きながら話すお義母さん。
時におちゃめで真っ直ぐで、とってもチャーミングな人だ。
そんなやり取りをひとしきりして、お互いの近況やらを話して、電話を切った。
一方で、自分の母の涙を一度も見たことがない。絶対に泣くであろう娘の結婚式の両親への手紙でも泣かなかった人だ。でも多分、世の中で一番優しくて強い人だと思う。
そんな冷静な母だけれど、母の日に送ったクッキー缶を、「こんなにおいしいクッキー初めて食べた!」と、いつもおおげさに喜んでくれるのであった。
母の日には毎年何かしらを贈っていて、そのたびに、素直に喜んでくれる2人のお母さんの純粋さは、こんな時だからこそ、余計にわたしの胸の奥にぽっと温かい何かを残していくのだった。
そうして母の日が過ぎてまだ間もないけれど、わたしはまた、大好きな2人のおかあさんへあげたいものができてしまったのである。(褒められると、調子に乗りやすい)
じゃじゃん!亀屋良長さんの「スライスようかん」である。
にこさんから「おもしろいものをみつけました~」と連絡を貰ったのがきっかけで購入。(あんこを好き、と言いだしてからいろんな人が情報をくれて嬉しい)
薄くスライスされた粒あんようかんの上にバターようかん、ケシの実。
ようかんを食パンにのせて焼くだけで、簡単に小倉バタートーストができるという、素晴らしい発明。「めんどくさい」から始まったアイデアなんだそう。
熱々になって溶けたバターようかんが、とんでもなくやみつきになる。
職人さんがひとつひとつ手作業でスライスしている愛が詰まった「スライスようかん」。
この即席小倉バタートーストを食べていたら、しばらく会えていない2人の母の顔が浮かんだ。
5月中は4000円以上買うと送料無料キャンペーンをしていて、いろんなお菓子を買っていたので、一緒に詰め合わせて送ることにした。
亀屋良長さんは江戸時代から続く老舗。しかし時代に合わせて柔軟に新しい和菓子を作っている所が、とっても素敵だ。
久しぶりに手紙も書きたくなって、最近手に入れたかわいいポストカードをひっぱりだしてきた。
頻繁にLINEでやり取りはするものの、やはり直筆の手紙は違う。最近こんなことがあったよ、とか、LINEではわざわざ言わないであろう日常のなんでもないことを、気付けばつらつらと書いてしまう。
本当は直接会って話したいし一緒に行きたい所もたくさんある。けれど、これはこれで、後から振り返った時には、眩しい思い出になるかもしれないなあ、なんてことを呑気に考えたりしている。早く届くといいな。
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