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『グルメ漫画50年史』 グルメ漫画に詳しくなってしまう 原田泰稔

 この本の筆者はグルメ漫画がいったいどのように生まれ、いかなる発展をしてきたかを解き明す。グルメ漫画は1970年に誕生した。そして、誕生から今日こんにちまでの半世紀を通して、本書ではその見取り図を鮮明にしていく。

 グルメ漫画が生まれてからのこの50年のうちに約700作品発表された。しかし、2010年代に新たに始まった作品は400作品以上もあり、2020年代に入ったいまもその数は増え続けている。ここでは数に含まれないような短編や同人を含めると、グルメ漫画はこの10年で発表されたものがほとんどだ。

 本書の内容は、発刊された時代とも密接な関係にあるグルメ漫画を、それぞれのあらすじ、登場人物、掲載雑誌から紐解くといったもの。ひとつひとつの漫画の解説しかり、グルメ漫画の連載期間をまとめた10ページにも及ぶグルメ漫画年表はその内容も充実している。

 タイトルからも分かる通り、時系列を追うように、歴史をなぞりながらグルメ漫画を紹介していく。例えば『おいしんぼ』とバブル期の外食ブーム、『孤独のグルメ』とカルト的な人気を誇った漫画雑誌『月刊漫画ガロ』の関わりについてなど、それぞれの話はどれも知らないことばかりだった。

 本書の後半、2010年代のグルメ漫画のあたりで書かれている近年のグルメ漫画とメディアミックスの発展については事実、漫画を超えたより広い範囲で影響を及ぼしつづけている。グルメ漫画の50年は当然、日本文化の50年でもある。

 グルメ漫画は、美容院や飲食店で目にすることも多いことからも分かる通り、なんとなく待ち時間に読むようなかたちで消費されている。話の筋を追うように1巻から読み進めることも少ない。

 つまり熱心な読者か、よほどストーリー性が高いグルメ漫画でない限り毎巻読んだりしないし、ましてやグルメ漫画同士を照らし合わせたりはしない。“料理を食べたり作ったりしているだけの漫画”を照らし合わせることには意味を感じない。

 しかし、ほんとうにそうだろうか。たしかにグルメ漫画についてはあまり多くは語られてこなかった。
 だが、この本では今まで語られてこなかったグルメ漫画の歴史的な整頓がなされている。グルメ漫画の特異点がここには詰まっており、本書を手がかりにして話せることも多いだろう。
 グルメ漫画を照らし合わせることに意味はないのか、あるのか。本書はそんな疑問を払しょくするようなかたちでぼくたちに答えてくれる。


―hontoのほうが安いです


著者ブログ―グルメ漫画年表の一部


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