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大学時代の旧友から連絡が来た

先日、大学時代の旧友から連絡が来た。名前は梨花。偶然にもついこの間、彼女のことを考えていたので、LINEのトーク画面に名前が現れた時は非常に驚いた。

梨花と私は、進学を機に一人暮らしを始めたもの同士。互いの家から徒歩5分の距離に住んでいて、同じサークルに入っていたこともあり、すぐに仲良くなった。

梨花はどちらかというとクールな性格で口数も多い方ではなく、自分から誘うようなことはしないタイプ。私は彼女のそんなところに惹かれた。一緒にいて居心地が良かったこともあり、暇さえあれば家に行ってゲームをしたり、近所の喫茶店を巡ったりしてよく遊んでいた。

そんな彼女は、現在小学校教員として働いている。教育学部に進学したものの、教職に就くつもりはなかったらしい。「私にはしんどくて無理だね」と涼しい顔で受け流していたことを未だに覚えている。同級生の大多数が教員採用試験の対策に勤しむ中、彼女は一人スーツに身を包んで、就職説明会に参加していたようだった。

教壇に立つ夢を持った学生が集まる場所で、あっさり民間企業を選ぶ梨花はかっこよかった。なかなか進路を決められず、周りに流されて試験勉強をしていた私とは大違い。彼女は無事に地方銀行の内定を手に入れ、その後はバイトを掛け持ちしながら、人生最後の夏休みを謳歌していたようだった。


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しかし、大学4年の12月。とんでもないことが起きた。梨花が突然「内定辞退するわ」と言い出したのである。理由は単純。夏に教育実習を経験し、やはり教員になりたいと考え直したからだそうだ。

彼女はいつも、突然重大発表をしてくる。それも「明日晴れだって」くらいの気軽さで伝えてくるから、こっちは毎回驚かされて心臓が持たない。

「一度民間企業に勤めてからでも遅くないんじゃない?内定式も出たんでしょ?きっと勉強になるよ」と諭す私の言葉も聞かず、次の日には企業に辞退の連絡。「先生やりたくなっちゃったから、仕方ないよね」と話す姿を見て、「まあ人生経験だよね」と返すことしかできなかった。

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卒業後、互いに別々の地で教員になったものの、私は1年で退職。彼女は初年度に学級崩壊のクラスを持たされ、モンスターペアレント相手に苦しんだり、体調を崩したりしながらも、今も子どもたちに「先生」と呼ばれ続けている。

正直、梨花から内定辞退の話を聞いたときは《もったいない!》いう気持ちが強かった。それと同時に《そんな気持ちで先生を続けられるのかな?》と心配になった。

最終的に、私の方が梨花よりも中途半端だったことに気付かされただけなのだが、彼女は自分が苦しいときでも「つむぎもその状況で、大変な仕事頑張ってるよ」と言ってくれた。あの一言がなかったら、もっと早く辞めていたかもしれない。

今年の秋、友人の結婚式で街に行く機会があるので、梨花とも2年ぶりに会う予定だ。「学級でクラスター出ないようにしなきゃね」なんて呑気に笑っていたが、現場はイレギュラーな状況で戸惑っているに違いない。それでも、梨花なら持ち前のタフさで乗り切ってくれるような気がしてならない。

次に顔を合わせたときは、どんな話をしてくれるだろうか。「出会ったばかりの人と結婚することにした」くらいの爆弾を投下されても、可笑しくはないだろう。



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