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商業誌の著者には同人誌執筆をオススメしておりマス。

僕らモウフカブールは、技術書の商業誌(一般的な書店で売っている本)を執筆しています。
しかし、同時に技術書の同人誌も出しています。「商業で書いてるなら、同人誌で出す必要ある?」と思われるかもしれません。また、技術同人誌に詳しいのなら「同人のが儲かるんでしょ?」と考える方も居るかもしれないですね。
ということで、商業誌の著者に同人誌執筆をオススメする話です。

技術同人誌・商業執筆 Advent Calendar 2021 に参加しております。
https://adventar.org/calendars/6410

そもそも同人誌って何?

そもそも論として、同人誌って何?えっちなやつ?とよくわからない方もいらっしゃると思うので、簡単に説明しておきます。
皆さん、コミケはご存じでしょうか。夏と冬にお台場でやってるアレですね。すごい人が集まります。ニュースでもやるらしいので、ご存じの方もいらっしゃるでしょう。
要はあそこで売っているものは同人誌です。
「普通の本(商業誌)と違うの?」と聞かれると、違うとも同じとも言いがたいです。なぜなら、同人誌と商業誌との違いは、出版元と流通の違いでしかないからです。
普通の本(商業誌)は、ご存じのとおり、本屋さんで購入できます。ちょっと詳しく言うと、ISBNコードというものがついており、多くは出版社が出版しています。
一方、同人誌は「商業じゃなく、同好の士が作ったモノ」程度の意味なので、一般書店で買えるケースも稀にありますが、基本的にはイベントや、同人誌専門店で購入するものです。
「同好の士が作ったモノ」なので、大概はアマチュアが執筆・出版しています。ただし、アマチュアが執筆しているからといって、クオリティが低いわけではなく、商業誌顔負けの本もあります。

同人誌は自分で作って自分で売る

一般的な商業誌であれば、デザインはデザイナさんがやりますし、組版はDTPさんが、編集は編集さんが、営業は営業さん、売るのは本屋さん……など、多くのプロが分担して作業します。
しかし、同人誌は、同好の士が作りますから、本にするのも、売るのも自分達でやります。
同人誌を知らない方からすると、「それって大変でしょ?!」と吃驚されそうですが、そうでもありません。
皆さん、学校で文集や修学旅行のしおりを作ったことはありませんか?要はアレと同じです。
そもそも、商業誌であれば、ちゃんとした製本、売れる表紙が必要ですが、同人誌の場合は、体裁も売れ行きも自由なのですから、自分でやれる範囲でいいのです。
例えば、「コピー本」と呼ばれる体裁がありますが、これは家庭用プリンタやコンビニのプリンタなど、普通のプリンタで印刷したものをホチキスで留めただけです。それでも立派な本です。
ちょっと上等にしたい場合は、印刷所に印刷してもらいますが、それも簡単です。Wordを「名前を付けて保存」する時に「ファイル形式」で「PDF」を選び、それを送るだけです。簡単でしょう?
「格好の良い素敵な版面」にしたい場合は、色々と必要な作業もありますが、ただ印刷したいだけなら、これで可能です。
じゃあ、売るのはどうしたらいいかというと、イベントに申し込んで、売ります。

技書博と技術書典

同人誌を頒布するイベントといえば、コミケが有名ですが、他に技術書に特化したイベントとして、「技書博」と「技術書典」があります。
同人誌を出す主体(グループ)を「サークル」と言うのですが、技書博は100サークル、技術書典は650くらいのサークルが集まります。
(※コロナ以前の話)
可能なら、それぞれのサイトを見てみましょう。開催中なら「サークル一覧」などから、開催中でない場合は前回開催時のページの「サークル一覧」などからどんなサークルが参加したかわかります。
技術に関する、ありとあらゆるジャンルが集まっているのが見えてくるはずです。

■技書博
https://gishohaku.dev
■技術書典
https://techbookfest.org

こうしたイベントにサークル参加(本を頒布する側の参加をそう呼ぶ)すると、大概は長机(の半分)が用意されており、そこに本を並べて頒布します。

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エンジニアの皆さんの場合、「ちょっとコミュニケーションが苦手だし、お店屋さんとか無理だよ!」と思われるかもしれませんが、購入してもらった時に「ありがとうございます」程度が言えれば十分です。
呼び込みをする必要はないですし、無理に売り込む必要もありません。売り込みたかったら、売り込めばいいですが、そうでないならしなくたっていいのです。だって、「売れ行きは自由」なんですから。
特に、技術書の場合は、「その技術を知りたい人」が手に取る傾向があるので、必要なら買われるし、必要でないなら買われません。なので、瞑想してても売れる時は売れるし、呼び込みをしても売れない時は売れません。
好きに売れば良いのです。

商業誌の著者に、同人誌執筆を勧めるワケ

さて、漸く本題です。
我々は、商業誌の著者に同人誌執筆をお勧めしております。
なぜなら、メリットが大きいなと感じているので、同士が増えないかなとお企んでいるのです。
楽しいものは皆に勧めたくなりますからね!
ということで、メリットをあげていきましょう。

1.楽しい
好きなように書ける。好きな企画で書ける。編集さんが困るような原稿でもいい!(ページの半分が脚注で、その脚注が本文と関係ない雑談でもカットされない!)
どんなジャンルの本でも、どんな読者ターゲットでも、同人誌は自由です。
出版社では、絶対に通らないような企画の本が作れる。ただし、売れるかどうかは別ですが。

2.気楽に書ける
売れなくても、編集さんや出版社に迷惑をかけない。
まあ、自分のお金でやってることですしね。
また、一般的に同人誌は、「薄い本」であることが多く、技術同人誌であれば、50頁から100頁程度が主流です。たとえば、同じ我々の書いたDockerの本であっても、商業誌なら350頁~400頁、同人誌なら50ページです。
それに応じて価格も安く、同人誌は500~1000円、商業誌は3000円前後のものが多いです。
400頁はしっかり構成を練って書かねばなりませんが、50頁ならそこまでではありません。気楽です。

3.読者に会える
もうね、同人始めるまでは、読者って僕の妄想かと思ってました。読者とはもしや「ピンクの象」なのではないかと……!
ところが、同人イベントでは読者と会えます。同人誌を買っていくところを目の前で見られますし、前回購入してくれた人が感想を言ってくれたり、商業誌を「読みました!」とか言ってくれることもあります。嬉しい。読者は実在した。
Amazonレビューだけが読者じゃないんですよ。
この点に関しては、編集さん達にも、ぜひイベントに参加して読者と会って、話して欲しいなと思っているので、もし参加の暁には、誘ってあげてください。
それから、イベントによっては、商業誌も売ることができるので、同人誌作らずに、商業誌売るのもアリです。
(※技書博も技術書典も商業誌売れる。コミケは駄目)

4.自分の周り以外のニーズを知る
サークル参加する前は意識してなかったのですが、参加後に気づいた部分です。サークルの立場で参加すると、どんなニーズがあるのか見えるようになってきました。意外なジャンルの本が売れていたり、一見は何が魅力的なのかよくわからない本が売れていたり。
それは、ジャンルに要因があることもあれば、見せ方が上手かったり、固定ファンが付いていたり、様々です。そういうことを考えるきっかけになります。
また、サークルに買いに来てくれた人と話すことで、自分の周り以外の状況を知ることができます。例えば、「Dockerを仕事で使ってますか?」とか「AWS使ってますか?」みたいな雑談から、世間の様子を知ることができます。これは、毎回大きな収穫で、どうしても自分の会社や、周囲の状況が「当たり前」だと思い込みがちですが、そうした勘違いの抑止力になります。

君も同人誌を書かないか!!

まあ、こんな感じなので、ちょっと面白そうだなと思ったら本を作ってサークル参加してみるのは如何でしょうか。
2021年12月現在、技術書典(1月)も、技書博(2月)も参加サークルを募集しています。
(※ただし、技術書典はオンライン開催しか告知されていない。技書博はイベント会場での開催が決定している)
サークル参加しないまでも、一度イベントに遊びに来てください。きっとあなたの想像してなかった楽しい世界が広がっていますよ!

※2021年12月7日追記
そういえば、前振りで「同人誌って儲かるんでしょ?」と書いておきながら、その話をしてなかった。
儲かるかどうかは、売れ行き次第かなあ。
そもそもうちの同人誌は、価格が安い(300円~500円)ので、もともと利幅が薄いし、サークル内に大赤字部門(CD・写真集)を抱えてるので、利益はそこに吸われているのである。
ジャンジャン儲けてるサークルもあるようなので、やり方次第というところでしょうか。

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