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ロンドン芸術大学(UAL)グラフィックデザインコース修了しました!1年留学してみての感想とか。

ロンドン芸術大学(UAL)グラフィックデザインGraduate Diplomaコースが全て終わり、無事卒業することができました!
刺激と学びの多い濃密な9ヶ月間でした。

今年に入ってからプロジェクトプロジェクトプロジェクト、体調不良、MAコース受験、IELTS受験、旅行と目まぐるしい日々で更新をサボっていましたが、忘れないように記録をしておきたいと思います。

またこの間、受験時お世話になっていた美術予備校で留学体験をシェアしたのですが、案外このnoteを読んでくれている人が多く、とても嬉しかったです:)

後期のプロジェクトについて

(前期のレポート等は前回の記事で書いています)

後期は2月から6月までの5ヶ月をかけて行われました。
5ヶ月中に4つのプロジェクトが走りました。
以下がプロジェクトとなります。


①タイポグラフィ制作(Biotype Project)

期間は2ヶ月間。ペアワークで行われました。

Bio-Inspired Textilesという研究プロジェクトとのコラボレーションプロジェクトです。UALではサステナブルデザインなどのテーマをカリキュラムに入れることが促進されており、本コースでは、この研究プロジェクトとコラボレーションを行われました。

バイオインスパイアード・テキスタイル(BIT)は、生物学、材料科学、テキスタイルデザインの分野を融合させた学際的な研究プロジェクトです。
さまざまな生物学的デザイン構造をテキスタイルデザインの実践に応用する可能性を探っています。学生、実務家、産業界と協力し、バイオインフォースド・テキスタイルが現在の持続可能なデザイン実践をどのように強化できるかを探っています。

繊維状、らせん状、重なり、層状、グラデーション、細胞状、縫合、質感という自然界の8つの構造を使って、より持続可能なテキスタイルデザインを作るために、いかに自然から情報を得られるかを探ります。また、「効率」「耐久性」「回復」という3つの柱を掲げています。

https://www.bioinspiredtextiles.com/

正直、サステナブルに対する関心は高くなかったのですが、プロジェクトとして新たな概念やアイディアをビジュアルを通して伝えることができる面白いブリーフでした。

プロジェクトでは各自好きなコースメイトとペアを組んで、ペアごとに各構造を割り当てられ、自然界の8つの構造のうちの1つのコンセプトに沿ってタイプフェイスを作成します。

私のチームは「レイヤー」構造が割り当てられました。

まずは構造理解のためのリサーチを行い(理系の文献を漁ったり、テキスタイルの子たちの考えをリサーチしたり)自然界からの構造の理解を行います。

そして、そこから「レイヤー」構造が伝わるためのタイプフェイスのコンセプトを考案・作成しました。

またタイポグラフィの基本を学ぶために授業ではワークショップを通して学びました。

タイプフェイスワークショップ1
タイプフェイスワークショップ2



また、毎週課題図書が取り上げられ、それに対して、自分の考えをプロセスブックに反映させる必要があります。
環境哲学者が執筆した"After the Anthropocene"の中で「今後の人類のためには新しいMemeが必要だ」といった主張に対してどう考えるか?を問いかけられたり、‘Loanwords to live with”という論文では、ある気候変動の文化的側面から見る思考と言語というテーマをがあるのですが、それに対して、デザイナーとして何ができるか、社会に対してのデザイナーの意義を考える機会が多く得られました。

進めていく中で、「複雑なアイディアや、未来のための新たなアイディア(価値観)をどのように効果的にタイポグラフィを通して伝える」かを考えさせるようなプロジェクトになっており、カリキュラムが上手くでているな、と感心しました。

最終成果プレゼンテーションの1部

とても楽しいプロジェクトだったのですが、一方でこの時期事故を起こしてしまい動けず、あまり満足いく成果が出なかったのが心残りでした。

②アイコン制作(Framework)


こちらもBITとの共同のプロジェクト。
3週間ほどの単発の個人プロジェクトで、前述した8つの構造と3つの柱を伝えるためのアイコンを開発しました。

ランドリータブに載せられるイメージのタブのデザインをイメージしてくれ。とのことだったので、各構造の複雑なコンセプトが理解できるように、そしてできるだけシンプルにデザインを行いました。

最終プレゼンテーションの1部

このプロジェクトはコースのコンペティションで最後に選ばれた生徒はBITのSNSなどに公式で採用されます。
私はとにかく選ばれたい!と思い休日を潰して、フラットメイトにテストを頼み、作り込んで、ありがたいことにファイナリストに選ばれました。残念ながら最後の1人には選ばれませんでしたが、クライアントがどのような視点で作品を選ぶのかを知ることができ、いい経験ができました。


③Exhibition Identity

Graduate ShowのBrand Identityを開発するプロジェクト。
グループの人数・人選は生徒の任意のプロジェクト。これは評価対象にはならないので、気楽にやれました。
このプロジェクトもコンペ形式で1つのチームが選ばれるのですが、最後の2組には残ったのですが、最終で選ばれないという悔しい結果になりました。


④個人プロジェクト(プロポーザル&制作)

卒業プロジェクトのプロポーザルを2ヶ月掛けて書き上げます。
私は前回の個人のリサーチプロジェクトで感覚のデザインについてフォーカスをおいたので、それを深掘りしつつ「触覚」に注目しました。

春休み前に書いたプロポーザルをもとに4月後半から6月初めまで制作していきます。このプロジェクトが最終評価の大部分を占めるものであり、制作物+エッセイ(1000word)+プロセスブックを提出する必要があります。

オーディエンスリサーチ・プロトタイピング・テスト・評価のワークショップの授業が週ごとにあり、それを元に各自制作を進めていきました。

私はリサーチクエスチョンを「グラフィックデザインを学ぶ学生に、コミュニケーションデザインに関連する触覚の重要性をどのように認識させるか」と設定し、知覚に基づく学習理論を応用したインタラクティブな展示を通して、観客が自分の触覚と他人の触覚を比較することで、自分自身の触覚知覚を再考することを促す展示デザインを制作しました。

手法としてはユーザーセンターデザインのみの予定だったのですが、参加型デザインの手法を取り入れて、生徒たちの知覚認知情報を集め、インフォグラフィックに落とし込み、展示のテストを何回も行うことを通して、デザイン作品を発展させていきました。

卒制


総括

とにかくしんどかった2学期目

帰国後、しんどかった時はありましたか?と聞かれた時パッと思い出せなかったのですが、ふりかえってみると、特に2学期目はメンタル・体調的がとてもしんどかったように思えます。

実は2月に事故を起こしてしまい、その後数ヶ月脳震盪の後遺症がひどく、日常生活に支障をきたしました(エマージェンシーホスピタルに3回くらいお世話になったけどもう思い出したくない)
当時はコースエクステンションするか日本に帰るかコースリーダーに相談していたのですが、4月あたりになんとか持ち直すことができました。

6月の最終締め切り1週間前にコロナに罹ってダブルパンチを喰らいましたが……。

また、有難いことに1学期の成績がオールAだったこともあり、自分に対する期待とプレッシャーがぐんと高まっていました。また、もともと30歳で会社を辞めてある程度大きなお金を使っているので、後戻りはできない、できるだけいい成績を取らねば、と思っていたのでプレッシャーがさらに加速していきました。

気持ちが沈んだ時は、コースメイトと気晴らしをするか、チューターを捕まえて相談するか、公園を散歩をするか、フラットメイトと飲みに行くかでメンタルを保っていました。

結果は苦労の甲斐があって、最終プロジェクトはA+、通年を通してdistinction(最高評価)を取ることができましたが、それまではプレッシャーと闘う日々でした。課題提出の数日前に個人面談で予測される成績をコースリーダーから伝えられるのですが、評価内容を伝えられた時は、数ヶ月間張り詰めていた緊張が解け、思わず号泣してしまいました。

UALのコースについて実際どうだったのか。向いてる人はどんな人か。


UALのgraduate diploma graphic designコースでは質の高い教育を受けられたように感じます。

基本的なデザインの考え方はもちろん、アカデミックなデザイン手法を学ぶことができ、MA進学を目指している人にとってはいいコースでした。特にMAで特定のやりたい研究テーマを決めていない人は、自分のデザインややりたいことの核をじっくりとリサーチしながら進めることができるので、いい時間になるかと思います。

ただ、ソーシャルデザイン的なブリーフとアカデミックな要素が多く、プロセス第一のような学部だったので、プラティカルなものを求めている方や手をたくさん動かしてたくさん作品を作りたい!という方には向かないかもしれません。

前期・後期で各100ページ以上超えるプロセスブック

それとマイナス点なのですが、やはり1年のコースということもあって最終展示の見た目のクオリティは3年間学んだBAの学生のほうが、プロ感があり見栄えがいいなと思いました。やはり作る経験が多いし、展示の回数も多いので、差があるのを感じて悔しいなあと思ったので、時間とお金がある方はBAからきっちり学んだほうがいいなあと。(一方で内容はgradipの方がアカデミックなので各生徒が取り上げている内容が面白かったような気がしますが。)

また、基本的にUAL(特にChelsea)は自律性を重視している学校なので待ちの姿勢ではなく、積極的にコースメイトやチューターとコミュニケーションを取り相談できる人でないとしんどいかもしれません。

ちなみに、今年度で勤めていたコースリーダーが転籍をしてしまうので、今のままの教育の質を保つことは難しいかもしれません。というのも、特にイギリスの大学院だと、コースのカリキュラムはコースリーダーによってデザインをされ、コース自身の体験は毎年変化して行きます。

もしUALの進学を検討しているならば、コースリーダーの評価や関心を調べた上で、きちんと面談をして検討をした方がいいと思います。

進路について、やりたいこと


10月から、LCCのMA graphic branding and identityというコースに進学しました。受験のスケジュールはタイトでしたが、春休み中にポートフォリオの準備を行い無事オファーを受け取ることができました。受験の流れはgradipと同じでしたが、ポートフォリオの要求などは少し違ったのでこの受験についてもいつかnoteで書こうと思います。

Gradipのコースを卒業すれば、Camberwell MA Graphic Communication Designコースに自動で進学できるのですが、もともとLCCのMA Graphic Branding and Identityに興味があり、この1年の勉強を通して人の衣食住を豊かにするような新しい価値をデザインで伝えられるようなことをしたいと強く思うようになりました。

例えば、私の好きなデザインスタジオの1つにSpace10があるのですが、これらのプロジェクトのようにライフスタイルの新しい価値提案をして行きたいな、と思っています。
また、ローカルな伝統や資源を使った新たな価値のデザインに興味があり、MAでどこかとコラボレーションをおこなったりしたいな、とふんわり思っています。


(※メモ書き的な本音とか)

ここのコースを決めるまでかなり悩みました。

というのもコースを通して、デザインリサーチを重点的に行い、単純にビジュアルだけではなく「体験」をデザインすることの楽しさを知り、グラフィックもプロダクトも垣根なくデザインできるような学部に行った方がいいのでは?デザインの出力の幅を広げられる学部の方がいいのではと思うようになりました。

また私は職歴的にプロマネ的な動きが得意、リサーチが得意、チームで動くのが得意という自分の強みを持っている一方で、ビジュアル化は発展途上でまだまだ(楽しいけれど、向いているのかわからない)という自己評価なのでこの強みを生かすにはどうすれば良いのだろう?と考えるようになりました。

実際チューターは私の興味を把握しており、もう少し広義のデザインができるUALのMA Global Collaborative Design Practice、RCAのGrobal Innovation Designを薦められ、そちらの出願も検討していました。

ですが、他コースの年数が2年と長いこと、UALは内部進学をすると次年度の学費が20%減額されること、今後のキャリア的にフリーにも転向しやすいグラフィックを強みにしたデザイナーとしてファーストキャリアを積んだほうがいいのではないか?と考えていました。

Brandingはストーリーテリング的な戦略を体系的に学ぶことができ、アウトプットの手法もビジュアル起点で比較的幅広く提案できそうなので、自分のやりたいことができるのではないか?と考え、MA Graphic Branding and Identityの進学を決めました。
 
今は単純に見た目を作るグラフィックデザイナーにならないためには?作りながら戦略を練れるデザイナーになるには?ここら辺のキャリア形成どうしたらいいんだろう?と悩み中です。あと大学院中ってインターンとか探した方がいいのかなぁとか。(いい成績取りたいからインターンは無理かなと思いつつ)デザイン界隈の方、誰かアドバイス・相談乗っていただけると嬉しいです……

去年から円安が続き、予算よりも留学費用が高くつき自費留学かつ、一般家庭の私にとっては貯金が削られる毎日で、胃がキリキリキリキリする日々なのですが、なんとか一年三ヶ月生き延びていければと思います。

今年度はいろいろな方に支えられ、いい出会いもたくさんあり、刺激のある一年でした。何か留学に関してご質問がありましたら、以下の連絡先でご連絡していただけますと幸いです:)

Twitter:@moesunday
insta:@moonmoonsunday


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