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【めっちゃビビりの君へ】勇気の正体

最近C級の若いプロボクサーの選手ストレッチを受けに来てくれる事がある。

そんな中でストレッチしながら、僕も現役の頃物凄くボクシングが怖かったという話。

ボクシングにおいてこの恐怖心の克服はかなり大事だと思っていて。

「今のカウンターはパンチは勇気ありましたね!」
とか
「今の想いっきりの踏み込みが凄い!!」
みたいな解説ってよく聞くと思うし、普通にボクシングの試合を見ていてもこの状況でよく手が出るな、、、って思う事もあると思う。

自分の身体を動かし、行動させるには勇気が必要。


僕は本当に臆病だった。
いや、きっと今もそうだと思う。
競うものではないけど「いやいや、俺もビビりだよ」と思っているあなたの100倍は僕はビビりだと自負している。
本当に恐怖と勇気に何年もずっと向き合ってきた。

恐怖で声が出なかったことがある、膝が震えすぎて座ってられなくなった事がある、漫画の様に顎が震え、歯が当たって「ガチガチ」言わせていたこともある。
本当に怖くて怖くて涙が止まらなかったことがある。

そのぐらいビビりだった。
だからこそ勇気っていう魔法が欲しかった。
どうやって手に入るんだろう?と真剣に考えた。

後楽園ホールというワードだけで震えるボクサー

ボクシングを始めたC級の時。
試合が決まっただけで恐怖で夜が眠れななった。
「1か月後には試合なんだ、、一か月後には勝っているか負けているか結果分かるんだ、、、」そう思うだけで心臓がバクバクして、眠れなかった。

計量日、試合前日。
夜ご飯を食べた後、全く眠れなかった。
寝ようと思っても暗闇に押しつぶされそうで、布団の上で体育座りして朝まで震えていた。

試合当日、会場では若干の過呼吸と呼吸困難になっていた。
「おい!大丈夫か?」と聞かれ「大丈夫です」と答えたつもりが、大声を出して喉をつぶした次の日の様なカスカスの声で大丈夫です。と答えていた。
全く大丈夫ではない。震えが止まらない。

「一回でかい声を出してみろ!」と言われ「あっー」とフルで出したつもりが近くにいる人に大きな声で話すような「あっー」だった。腹の底からの声ではない。

B級になってもこの恐怖は払拭できず。
お風呂場で鏡を見ながら「俺は強い」と毎日200回言うというおまじないみたいなことをしていた。
るろうに剣心という漫画で自己暗示で強くなるキャラクターの刃衛を見てマネをしていた。完全に中二病。
そのぐらい勇気にすがりたかった。

僕の知り合いでドグマというAVの会社で働いている人がいました、その人には「会場でシコったらどうですか?」と冗談で言われたのですが、本当に恐怖が消えるのならそれでもいいと思ったので、後楽園ホールのトイレでちんちんを弄った事もあります、全く興奮もしないし、一ミリもそんな気分にもなりませんでした。

全部ハリボテだった、本当の恐怖の前ではすべて吹き飛んでしまう。

そして、とうとうA級になっても恐怖は未だ拭えず。
多分A級でビビりのボクサーって今までもこれからも僕だけです。
本当に怖くて、恐怖心をどうやったら消せるんだろうと?
今度は行動に出てみます。

道場破り

道場破りに行きました
「たのもー」っていう奴ですね。

たのもー


漫画ですよ、完全に。

当時、大山倍達にはまっていたので、極真関連の人なら喧嘩してくれるはずと思い、最初に方南町の黒澤道場に行きました。(今見たら名前変わったみたいですね)

ここまで読んでくれた人は分かっていると思いますが、本当にビビりなんです。
すぐ戦わない理由を見つけます。
氷結レモンを1リットル以上飲んで、まあまあ酔っ払った状態で道場を見学に。
どのタイミングで喧嘩をふっかけようか?と思ってみているのですが、高校生か大学生の若い子達がサンドバックをバシバシ叩いているのですが、当時28歳のA級プロボクサーの僕は「この人達に喧嘩を挑むのは弱い者いじめではないのか?」と思ってしまい辞めました。

これでは意味がないと思い、今度は池袋にある極真空手の総本部道場に行きました。
この時はお酒は飲んでいませんでした、今考えると凄い進歩ですね。
お酒に頼らずとも乗り込んでいけるわけですから。
しかし、ここでも臆病風に吹かれます。

めちゃくちゃ優しいんです、案内してくれる青年が!
「あっ!どうぞどうぞ!こちらに、空手は初めてですか?分からない事あったら何でも聞いてくださいね!!」ってもう満面の笑みで言われて「今から俺と喧嘩しろよ」って言えますか?いや、僕は言えませんでした。
全く言えない

そのまま肩を落として帰る事に。

帰る途中で総合格闘技のジムにより見学をしました。
その時に、総合格闘技のジムには道場破りをしようという気持ちが一切ない自分に気が付きました。
結論、空手家なら自分は勝てると、しかし、総合格闘家には勝てないと思っている自分が本当に嫌でした。
相手の強さによって出したり引っ込めたりするのは本当の勇気じゃない!とダイの大冒険に書いてありました。

間そっぷ

ならず者たちの挽歌

だけどまだあきらめる事が出来ないです、自分の勇気の探求心が強く。
どこかに絶対あるはず!!と思い今度は、クランチだったかな?

当時はやっていたアウトサイダーの傘下だったと思いますが、本当に超素人集団の喧嘩をショーとしてやるみたいなイベントがあって。
飛び入り参加が出来ると、事前に聞いていました。

予想通り「おい!試合を見ている奴で俺の方がつえーと思ってるやついあるだろ!?リング上がってこい!!」みたいなアナウンスが流れて、急いでリングインしました。

まぁ、怖いです。
完全に武闘派のドチンピラです。モンモン入っているヤクザ屋さんにしか見えない人たちがぞろぞろリングインして「今すぐここで全員殺し合いのサバイバルマッチはじめるか!?」と一触即発です。
その中に普通の人よりも超ビビりのビビり代表みたいな僕が一人だけ。
そして、人数が多すぎるのでジャンケンで試合権を公平に分ける事に。
(じゃんけんで負けちゃったならしょうがない)と思ういいわけと(いやいや、せっかくここまで来たら試合やろうぜ)と思う二つの想いが心のなかで拮抗しすぎて、僕は、もうほとんど無心でジャンケンをしていました。

そのジャンケン、なんと勝ちました!!
更に2対2のタッグ戦となりました、相方のチンピラの人はもちろん知りません。
4人中3人ドチンピラの中に一人だけ一般人が紛れ込んでしまいました。
普通に深夜にドライブしていたら、みんな信号無視しまくっていて、実はいつの間にか暴走族の群れの中に入ってしまっていた、みたいなのと同じ奴ですね。

とにもかくにも僕も試合をする事に。
ジャンケン勝ってから本当の恐怖でした。
全身の震えが止まらず、恐怖がピークでした。

今は無きディファ有明でやっていたのですが、あのトイレまでの廊下を何往復したか分かりません。
とにかくジッとしていられなかったのです。
しかし、その廊下、なんと!!対戦相手もうろうろしていました!!

ただトイレに行っているだけじゃないです、何度も行ったり来たりしているのを見ました、そして僕自身がおびえているので同じようにおびえている人の行動心理が何となく読めるのです。
「間違いなくこの人ビビっている!」と確信しました。

そしていよいよ、試合に。
2対2なのですが、普通に向かい合った奴同士で戦うのかな?と思いつつ。
僕の目の前にはさっきおびえていた相手、しかしよく見ると、、、

デカい、、、

ちょっと待って、、体重15キロぐらい違うんじゃないか?と思いつつも、もうやるしかないです。

大丈夫、相手はヤクザとはいえ素人。
ストレートパンチなんかしてくる素人はいない、ワンツーで瞬殺してやる!とビビりながらも思いっきり踏み込んでワンツー

しかし、このワンツー。
ダッキングでもブロッキングでもなく、距離をとって回避されました。
「え?何この人?素人じゃないの?こんなデカい身体して?」
と心の中で思いました。

それでも大丈夫、俺はこれでも現役のプロ、攻撃も防御も体力もすべてが上のはずだ!!と必死に自分に言い聞かせていました。
その刹那、相手が距離をつぶして一気に近寄ってきました。

「死ね!おらー!!」

と、これ以上ないぐらいベストのタイミングで右フックが炸裂。
しかし、倒れません。あれ?
それどころか、首相撲で確り僕の頭をロック(今思えば効いたから倒れないように掴んだのかも)
そして、膝蹴りをくらわしてきました。

見事な膝蹴りで切れたのが分かりました。
顔を血が滴っているのがめちゃくちゃ伝わってきますが、顔から血が出るのは僕にとっては日常茶飯事だったので「やば、またやっちゃった」ぐらいでした。
その後もいくつか被弾していたのですが、あからさまに相手が疲れだしていました。

「やっと疲れたか、そりゃ疲れるよな、一発決めても戦意喪失しない奴と喧嘩するのはじめてだろ?こっから俺の番だぜ!!」と反撃に出ようとしたら、レフェリーが割って入ってきました。

「ストップストップ終わり!!」

僕「なんでだよ、なんで止めるんだよ」
レフ「いや、血がやばい、凄い血です!」
俺「喧嘩なのに血が出たら止めるのかよ?」
レフ「鏡見てくださいよ!!」

という事でレフェリーストップTKO負けです。

しかし、試合は引き続き、2対1で再開して。
片方が馬乗りになって抑え付けて、もう一人の僕をKOした方が本当に、申し訳なさそうにパウンドをコンコンってして即レフェリーストップ。
試合は敗北しました。

後楽園ホールのドクターとは似ても似つかないような、現役医大生の方ですか?というよな人が「こ、このホッチキスで、め、目頭を止めます、、、」と震える手で僕の目頭をホッチキスで止めました。
麻酔は無かったのですが、もう試合の敗北と興奮しているので痛みはなかったです。

目頭が縦に切れているので、そこから血の涙を流しながら病院に行きました。
病院に行ったら先生に「なんでこんな所ホッチキスで止めたんですか!?これ自分でやったんですか?眼球に刺さったらどうするんですか!!?僕だったら絶対にこんなことはしない!!」とめっちゃ怒られました。
そりゃそうだわ、って僕も思いました。

勇気の正体

ここまで恐怖に飲み込まれながら探求し続けてきました。
その結果僕の中で答えがあります。
あの怯えていた僕より体の大きな武闘派のチンピラ。
彼を見て気づいたんです
「ああ、みんな怖いんだな」って
怖いのは僕だけじゃなかったんです、そんな喧嘩慣れして、僕よりも大きな身体でも僕と闘うのが怖いんです。
後楽園ホール控室って、結構普通に入れるので社会見学としてちらっ、と覗いてみてください。

葬式会場感ありますよw
みんな恐怖と闘っています。
ある人は音楽を聴いてたり、ある人はジムメイトと雑談で盛り上がったり、ある人は目をつむっていたり。

色々な恐怖との戦い方があると思いますが、全員が全員平常心ではないです。

だから、まず自分は怯えているという事を認めて上げました。
怖がっている?いいじゃん?全員怖がっているよ、大丈夫、自分だけじゃないと。
まず怖がっているという自分を認めてから「じゃあ、どうする?」という問いにしました。
震えていたいならそれでもいいし、人と雑談しててもいいし、音楽を聴いていてもいい。どうありたいのか?という姿を自分に聞くだけ。

そしたら「怖いけど強くありたいな」と思うのが僕の答えでした。
これが、これこそが勇気の正体だと知りました。

強い人間なんていない、強くあろうとする姿そのものが勇気の正体

これが、僕の何年も勇気と恐怖に向き合ってきた答えです。


その後にバカボンドで似たようなセリフが書いてあって、うわ俺の勇気理論パクられた!!と思いました。

バガボンド

井上先生に思考を完全にトレースされました。
時系列で考えてもバガボンドの、このシーンより、僕がチンピラと地下格闘技で戦った方が先です。

まぁ、そんなのはどっちでもいっか。

みんな怖いし、みんな怖くていいし、その上でどんな振る舞いや行動をするか?は自分次第ですね。

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