東京砂漠

あなたがいれば～♪
辛くはないさ～♪
歩いて行ける～♪
この東京砂漠～♪

とかいう、ビルの屋上だかでバレーボールをやっているCMを知っている人は漏れなくおじさんおばさん。

初めて上京したのは18歳。
高校卒業してすぐだ。

プロボクサーになる為に上京して、ボクシングジムが通いやすく、安い家賃のボロアパートを探していた。

笹塚という土地を紹介された。
どうしてもシャワーもしくは風呂はつけて欲しかったのでそこだけ拘って他はどうでもよかった。

路面の一階、1ルームのボロアパートだった。
シャワールームがついているのだが、完全に後からはめ込んだタイプ。
薄ーい字で書いてあるが『道』というスナックだったのだろう、確かに読める。室内にはボトルキープの棚が残っている。
業務用の大きな冷蔵庫があり、以前住んでいた人はそれを押し入れ代わりに使っていたのだろうか？

そこに決めた、とにかく東京で風呂orシャワー付きだったらどんなに劣悪でも5万は超えるのだ。その部屋は50000円だったから安いとすら思っていた。

住んでみると色々な不都合が出てくる。

・虫が大量に発生する
・ネズミが大量に発生する
・実はほぼ外
・エアコンは壊れている
・夏は暑さで死ねる

虫が大量に発生するのもネズミが大量に出るのも、すべては実は家の中ではなく外だから。

この一文にすべて含まれているのだがきっと意味は分からない。
詳しく説明すると、入り口（元々スナックなので、けして玄関ではない）から床まで15センチほど高くあがるのだが。
この15センチの隙間、よく見るとベニヤ板が申し訳ない程度に貼ってあるだけで隙間だらけで、土がよく見える。
ようは高台のテントみたいなものだ、建物の縁の下にはしっかりと一面の土。隙間風とかそういう生ぬるい問題ではない、ここは外なのだ。
「あ～、なるほど、東京はシャワー付きテントでも5万はかかるんだな」と思った。

そして、当然ながら東京には様々生き物が存在している。

済んでから1週間後、人生初めてゴキブリをみた。
スナックからアパートに改装した際に白いペンキでリフォームしたのだろう。真っ白い壁に黒い大きな昆虫。

それを見た瞬間に完全に行動が停止した。

僕の田舎は長野でゴキブリというのはゲンゴロウサイズの小さいのしかそだたず、見たことが無いから。

これをきっかけに普通にゴキブリがうろつくようになった。
さらにネズミが出歩くようになった、部屋の中にネズミの糞が落ちている。

疲れて寝ているのに夜中に『カリカリカリカリ』何かをかじっている音がうるさすぎて「うるせーんだよ！！」ってネズミがカリカリしているであろう壁を『ガンガンガンガン』蹴っていたら上からネズミが『ポトッ』と、降ってきたことがあった。

ネズミというのはダニを持ち歩く。

ワキや、靴下の締め付け、ベルトラインがめちゃくちゃ虫刺され、ができていて。体中痒くなった。
ネズミのせいだと分かっていたのでバルサンを何度も炊いた。特に意味はなかった。

夏になって死ぬほど熱くなったしかし、エアコンは壊れている。
はじめての一人暮らしなので上記のような不都合を大家に言えばいいという事理解していない。

シャワールームで水を出しっぱなしにして全裸で寝ていた。
とても布団の上で寝れる状態ではない、入り口をあげっぱなしにしても、窓が無いので風の通しは無く全く意味はなかった。

帰ってきたらまず全裸になってシャワールームでドアを開けたままテレビを見たり夕飯を食べたりしていた。

バイトがシフトカットの為に給料がめちゃくちゃ減りだした。
実家からコメを送ってもらって、たまーに自炊していたのだが、面倒だが生きていくには本格的にこれに頼らなくては。。と思っていた。

最近やたら小さい蛾が飛んでいるなと思っていた。
殺虫剤で殺しても殺してもいる気がする。
一度壁に張り付いて部屋全体を客観視してみた。
そこら中にいる事に気づいた「なんだこれは、、、」と殺虫剤で殲滅した。
金が底をつき、いよいよ、面倒だが自炊しなくてはと、久々にコメの入っていた缶の蓋を開けた。
そこに入っていたのは普通のコメだったはずなのだが真っ赤な米、何かの卵の様に見える、そして動いている、、、、、通称コメ虫という奴だ、ウジみたいな奴がコメの中に大量にうごめいている。。。
そして缶の持っている蓋の裏側には、先日殲滅した、蛾が大量に張り付いていた。
僕は静かに蓋を締め直した。。。。

しかし、背に腹は変えられない。と思い、缶の蓋をシャワールームに持っていって蛾を水攻めで殲滅。
米はそのまま洗って食べていた、米虫というのは軽いので洗うと普通に浮いてくる。
何回も洗うと、ほとんど浮いてこなくなるが実際炊いてみると虫が紛れ込んでいる。
数回その米で自炊したが、そんな生活に耐えられなくなって、親戚の家に引っ越そうと思ったが無理で親に金を借りて引っ越す事になった。

それが僕の初めての一人暮らし