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お気に入りの本について語る

今日は、お気に入りの本について語ってみる。好きな本について語りたいと思いつつ、なかなか周りにそういう話をできる人がいないのよね。そして、好きな本を紹介して人に勧められるような文章は書けないから、あくまで自己満足に語ることにする。

本を選ぶ中で、好きな要素がいくつかある。ひとつは「閉じた世界」、それから「少女」。広い社会の中でどんどん登場人物が出てくるよりも、限られた世界、限られた人達の中で繰り広げられる物語が好き。それから、明るく活発な主人公より、内気な少女に心惹かれる。わたし自身は、なるべく明るく活発に見られたいと頑張りつつ、実際は内気で引っ込み思案だから、そういう女の子に共感しやすいんだろうな。

そんなわたしの好きな要素が詰まっていて、初めて読んだ時から愛してやまない本がある。

恩田陸さんの「麦の海に沈む果実」(講談社文庫)

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北国の湿原の中にある、全寮制の学園。3月に始まる、不思議な「三月の国」。3月以外の転入者は破滅をもたらすと言われる学園に、2月最後の日に転入してきた、主人公の水野理瀬。湿原に囲まれた石造りの学園で、行方のわからなくなった生徒、校長先生の交霊会、失われた本、そして新たに起こる事件。様々な事情を抱えた生徒たちの集まる学園、全寮制で外からも閉ざされた世界の中で、理瀬は悩み、揺らいでいく。

主人公である水野理瀬は、これまで小説の中で出会ってきた中で、かなり好きな女の子。理瀬が出てくる小説は他にもあるんだけど、わたしはこの頃の理瀬が一番好き。内気で自分の世界に閉じこもりがちで、見えない恐怖、周りの視線に怯え、疑心暗鬼になっていく。

こういう、ちょっと暗い感じの女の子が好き。それから、本を読むのが好きなところに共感できる。学園に転入するにあたり、持っていく本の数が制限されていて、どの本を持って行こうか悩んでいる場面があって、「わたしだったらどうしよう?」って一緒になって考えた。女の子が赤毛のアンと若草物語の、どちらを好きかという考察も面白い。

物語主人公の考え方や目線って、必ず作者自身の世界の見え方、捉え方が反映されていると思う。だから小説を読む時、物語の面白さだけじゃなく、登場人物の目線を通して、作者が周りの世界をどう捉えてるかを感じるのが好き。もちろん想像でしかないけれど、自分に近い感覚に共感したり、自分にはない目線に新鮮な気持ちになったりする。一つ好きな小説を見つけると、その作者の、他の作品も何冊か読む。物語は違っても、その人の世界の捉え方は、共通して芯になっていて、それが「この作家さんが好き」って思う部分なんだろうな。

主人公だけじゃなく、物語の舞台となる学園も、この小説の好きなところ。石造りで迷路のような学園。ハリーポッターのホグワーツ城を思わせる、ファンタジックで素敵な世界観。その中でも心惹かれる場所がいくつかある。立派な図書館の中で、理瀬がお気に入りの場所にする、柱を背にした書見台。理瀬たちのファミリー(学年を縦割りにしたグループ)が集まる、人目につきにくいトンネルをくぐった先の、使われなくなった温室。黎二の特等席である、図書館の隅の階段の張出し窓。常に多くの目のある学校という環境の中で、人目を避けて落ち着ける場所や、安心できる場所がある。自分自身が部屋の隅っことか、人目につかない隠れ家的な場所を好み、安心感を感じるから、そういった場所を好む登場人物たちに共感しているのかも。

そんな学園という閉じた世界の中で、様々な思いを持つ生徒たちと関わっていく中で、自分自身について悩む理瀬の物語。この独特の不思議な世界観が癖になっていて、時々この世界に浸りたくなってまた本を開く。同じ本でも読む時によって感じ方も変わってくるもので、登場人物たちの年齢と自分の年齢がどんどん離れていくことで、自分の少女時代への懐かしさなんかも感じるようになってきて、何度読んでも面白い。

もっとうまく言葉にできればいいのに、自分の語彙力や文章力の足りなさがもどかしい。そんなわけで、ここまででおしまい。読んでくださって、ありがとうございました。

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